2015.11.30 領土問題

東シナ海・尖閣諸島問題だけじゃない!アジア太平洋の平和を乱す中国の南シナ海進出

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止まらない中国の「南シナ海強奪」!

2015年10月27日、アメリカ政府は南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島にイージス駆逐艦「ラッセン」を派遣し、中国の人工島の12カイリ内での巡視活動に踏み切りました。

近年、中国が岩礁を埋め立てて建設している人工島を領海の起点とは認めず、南シナ海の「航行の自由」を実力で示す目的です。

さらには、中国がここ数年、国際法を軽視し強引に南シナ海での石油採掘や、岩礁を埋め立てての軍事拠点建設をしていることへのけん制のためと言われています。

この南シナ海においては、中国が海域全域に独自の領有権(九段線)を持ち出して、その海域の全ての島々の領有権を含む独占的な権利を主張し、周辺国との紛争も頻発しています。

中国の独善的な活動は東シナ海だけでなく、南シナ海でもおこなわれているのです。

中国による南シナ海の支配と軍事拠点化は、日本や近隣諸国の安全保障だけでなく経済活動のさまざまな分野に影響を及ぼします。

そこで、中国の南シナ海進出、周辺諸国との領有権問題の歴史的経緯や現状などを詳しく見ていきたいと思います。

 

豊富な資源を誇る南シナ海は古くから重要な交易路

南シナ海は、中国、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムなどに囲まれた海域です。

大きな島はなく、中小の島々から成る群島が散在し、石油や天然ガスなどの資源が豊富に埋蔵されています。

しかし、それらは面積が狭く水資源に乏しいため生活には適さない小島が多く、それらについての領土的な関心は低いものでした。

また、南シナ海は古くから、東南アジア諸国や中東・アフリカからの海上交通・交易の道(シーレーン)として知られていました。

近年になって、これらの石油・海洋資源やシーレーンの確保をめぐって周辺各国の利害が対立し、領有権を主張するなどの混乱が深まっています。

中でも、それらの独占を狙う中国は、南シナ海への海洋権益拡大への動きを非常に活発化し、フィリピンの資源探査船に対する中国艦艇の妨害や、南シナ海・スプラトリー諸島の環礁7カ所で埋め立てを行い軍事基地化を進めているところです。

最初に埋め立ての事実を公表したフィリピン政府の資料によると、遅くとも2013年後期から埋め立てが開始されたと推測されています。

中国はその後も約2年間、環礁を埋め立て、軍事基地化をひそかに進めてきているようです。

 

中国の南シナ海・海洋覇権の野望

中国は1970年以降、アメリカ軍の撤退による「軍事力の空白」を埋めるかように、南シナ海で実効支配の範囲を拡大しフィリピンやベトナムなどの周辺諸国と衝突を繰り返してきました。

 

パラセル諸島(西沙諸島)をめぐる領海紛争

パラセル諸島は、南シナ海に浮かぶ多数のサンゴ礁の小島です。

1956年、南ベトナムが西半分を占領するのとほぼ同時に、中国はパラセル諸島の東半分を占領し、以後、南ベトナムと中国はパラセル諸島のそれぞれ西半分と東半分を占領した状態で18年間にわたって対峙を続けていました。

ベトナム戦争末期の1974年1月、中国政府は、西沙諸島が自国領土であることを改めて主張する声明を発表。

島嶼そのものだけでなく周辺海域の支配権をも主張し、大陸棚資源を確保しようという戦略的な狙いが明らかでした。

その後、中国軍はパラセル諸島の西半分に軍事侵攻して、中国軍は航空機による爆撃も加え、南ベトナム軍を完全に排除しました。

これ以後、パラセル諸島の全域は中国によって実効支配されています。

 

スプラトリー諸島(南沙諸島)をめぐる領海紛争

スプラトリー諸島は、南シナ海南部に浮かぶ数多くの島・岩礁から成る島嶼群です。

岩礁を含む約18の小島(およそ島と言えるものは11)があり、これらの多くは環礁の一部を形成しています。

中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシアが諸島全部または一部の領有権を主張し実効支配中です。

1988年、南沙諸島における領有権をめぐり中国・ベトナム両海軍がジョンソン南礁で衝突(スプラトリー諸島海戦)、勝利をおさめた中国が、いくつかの岩礁または珊瑚礁を手に入れました。

また、1995年にはフィリピンが実効支配していたスプラトリー諸島の岩礁で軍事施設を建設していたことが判明しています。

フィリピンでは冷戦終結以降、反戦世論が高まり、1992年にはアメリカ軍がフィリピンの基地から撤収していました、そのスキをねらったものです。

 

中国の主張する境界線「九段線」の正当性は?

南シナ海では現在、パラセル諸島で中国、ベトナム、台湾が、スプラトリー諸島では中国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、台湾の6か国・地域が領有権を主張しています。

南シナ海において、中国は海域の内側に九つの線による破線をU字型に描いた「九段線」と呼ばれる境界線を一方的に設定し、それに基づいて海域の支配を進めようとしています。

九段線

緑色の線が九段線(Wikipedia

九段線は1947年に中華民国が作成し、翌年に発表した「十一段線」をもとにしています。

1949年に建国した中華人民共和国(中国)も十一段線を継承し、1953年、トンキン湾にある島の領有権が中国からベトナムに移転したのを機に九段線に変わったとされています。

十一段線

十一段線(Wikipedia

それでは、中国の言う「九段線」には正当性があるのでしょうか。

中国政府は九段線を「国連海洋法条約」の適用が及ばない”歴史的な権利”と位置付けています。

「九段線は1947年に作成されたもので、1994年発効の国連海洋法条約の効果は訴求しない」という半ば強引な理屈です。

ですが、そうした主張を認めれば、国際ルールを定めた国連海洋法条約の存在意義が無くなってしまいます。

国連海洋法条約は「排他的経済水域(EEZ)」や「大陸棚」の制度をルールとして明確に定めています。

それに対して、中国は九段線の正確な緯度・経度を明示しておらず、その法的効力に関して特に公式的な見解を出していません。

中国が主張するような、「広範な」海域や島の領有を正当化するような境界線は認められないというのが国際社会における一般的な見解でしょう。

 

国際法を軽視し強引に進出する中国に、いよいよアメリカが対抗手段を

周辺国の反対もよそに、中国は南シナ海での強引な南下を続け、軍事衝突も懸念される一触即発の状態が続いています。

2014年には、中国がパラセル諸島周辺で石油採掘を行い、掘削を阻止するために派遣されたベトナム艦船と中国艦船が衝突する事態となりました。

また、前述のように、中国はフィリピンが領有権を主張するスプラトリー諸島で岩礁の大規模な埋め立てを進めています。

その中のファイアリー・クロス礁では、3000メートル級の滑走路を建設、大がかりな軍事港湾施設があることも判明しました。

その一方で、アメリカは南シナ海の紛争に対しては、長らく第三者的な立場をとってきました。

しかし、2010年に中国が南シナ海を、台湾やチベットと並ぶ「核心的利益」と表明したことによってその問題を重視するようになりました。

2010年7月、クリントン国務長官(当時)は「南シナ海の領有権問題は国際法で解決すべき」と表明、中国をけん制しました。

これをきっかに、ASEANなどの国際会議の場で、南シナ海の領有権問題が議論され始めることとなりました。

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さらに、オバマ大統領は2014年4月、東シナ海の尖閣諸島について「日米安全保障条約5条の適用対象」と明言し、中国の進出に対しては日本と共同で対抗する姿勢を強調しました。

今回のアメリカによる南シナ海の巡視活動は、「南シナ海でも東シナ海と同様にアメリカの関与を強める姿勢を明確に示すこと」にその目的があると思われます。

 

国際社会で孤立する中国

今回のアメリカの巡視行動の対象となる岩礁は、中国が埋め立てをする前は満潮時に海面下に沈む暗礁でした。

それらは、国連海洋法条約121条では島と認められていないもので、人工島の海域を「領海である」とする中国の主張には無理があると言わざるを得ません。

第121条 島の制度

  1. 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう。
  2. 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
  3. 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。

このように、中国の南シナ海での主張や行動は独善的で一方的なものであり、国際社会共通の懸念事項となっています。

国際社会はルールの中で生きていかなければなりません。

そのために国際法が定められ、戦争をしないために国連があるのです。

しかも、中国は常任理事国なのですから、率先して国際ルールを守り、あるいは、守らせる地位にあるのです。

満潮時に水没するような岩礁を埋め立てて、その領有権をもとに軍事拠点化する行為は周辺諸国への脅威そのものです。

世界中のどこの国が見ても、間違った行動をしているのは中国であると理解されるでしょう。

 

※ 希望日本研究所 第8研究室

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