2015.10.28 憲法改正

安保法も本当は改正したかった!戦後59回改正しているドイツ憲法から、日本憲法が学ぶべき3つのポイント

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改正ゼロの日本憲法が、ドイツ憲法から学ぶべき意味をまとめてみた

いまだ反対派のデモが続いている安保法が成立しました。

安保法は、日本憲法を改正したわけではなく、今の日本憲法の枠内(解釈)で法案化したものでした。

しかし安倍首相は、本当は日本憲法を改正し、集団的自衛権(今回の安保法のキモ、国際的に認められている自衛の権利)を導入したかったのです。

そうしなかったのは、改正など、とんでもないという日本人の意識、日本の空気が背景にあります。

その証拠に今の日本憲法は一度も改正をしていません。

目を世界へ広げると、まったく違った姿が見えてきます。

先進国では改正はあたりまえなのです。

その中でも59回も改正しているドイツ憲法の事例を見ることで憲法問題について学んでみたいと思います。

ドイツ憲法から学ぶべき3つのポイントとは

・歴史から学ぶ
・権力者の権力の乱用をゆるさない
・そのため国民自らが現実的に憲法を改正して細かく定める

です。

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世界の改正は常識だった!

世界の常識、日本の非常識は憲法改正問題です。

世界の先進国の戦後の改正回数は

・アメリカは6回。
・ドイツは59回。
・フランスは27回。
・カナダは19回。
・イタリアは16回。
・オーストラリアは3回。

となります。

たしかに日本憲法の改正を、いざやるとなると、憲法96条がそびえています。

・衆議院・参議院それぞれ3分の2の賛成
・国民投票での過半数の賛成

以上が改正には必要となるのです。

普通の法律は衆議院・参議院それぞれで過半数の賛成があれば成立します。
しかし日本憲法はそれより上位にあるので96条の手続きが必要なのです。

しかしこれら先進諸国においても憲法の改正には、もちろん高いハードルがあります。
オーストラリアは国のトップの提案とともに過半数の国民投票の賛成を求めるという高いハードルを設けています。

それにもかかわらず激動する国内外の社会情勢に合わせて自国の憲法を改正してきている。

なぜ日本憲法の改正がゼロで、他国では何度も行われたのか?

先の大戦で同じ立場・敗戦国だったドイツ憲法の改正を見てみたいと思います。

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ドイツ憲法は戦後59回も改正している!

ドイツ憲法は戦後、改正を59回もしています。

ドイツ憲法は1949年5月、「ドイツ連邦共和国基本法」という名前で誕生しました。

第二次世界大戦で敗北したドイツは、連合国の占領下で国内の各州ごとに憲法がつくられます。
ナチスの無条件降伏後、ドイツは米英仏ソ4国により分割占領されてしまったのです。

その後、アメリカとソ連の冷戦が勃発、1949年西側3国の占領地を合体させ西ドイツとしてスタート、その西ドイツ政府が独立後、各州の憲法を廃棄して新たな憲法をつくりました。
それが「ドイツ連邦共和国基本法」です。

西ドイツは、共産圏であった東ドイツの崩壊後、東西を一体化させても、同法を改正する形で継続させ、今に至っています。

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ドイツ憲法、主な改正は「再軍備」など

ドイツ憲法の改正内容を見てみましょう。

代表的なものは

・「再軍備のための改正」:1956年3月19日
・「緊急事態条項の追加のための改正」:1968年6月24日
・「予算・財政改革のための改正」:1969年5月12日

です。

どれも難しい言葉がならんでいますが、まず簡単に解説してみます。

「再軍備のための改正」は、第二次世界大戦で敗北したドイツがアメリカとソ連の冷戦を受け東西に分割され、その独立した西ドイツが、共産圏だった東ドイツに対峙するために、ドイツ連邦軍をつくらなければならない。
そのため、ドイツ憲法を改正しました。

「緊急事態条項の追加のための改正」は、共産圏との戦争など平常時では対応できない国家を脅かす緊急事態に際し、政府が、人権を制限するといった非常措置をとり、秩序の回復を図ることが必要と考え、ドイツ憲法を改正しました。

「予算・財政改革のための改正」は、国が景気浮揚策(公共事業など)のため起債、つまり借金をできるようにしたものです。
ところがその後、借金がふくらみ、財政赤字が拡大、これを受け起債を制限する財政規律を定めようと、2009年に再度、ドイツ憲法を改正しています。

こうした主な改正を含め、戦後、59回も改正をしているのです。

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ヒトラーの憲法骨抜きがドイツ憲法改正の原動力

59回ものドイツ憲法の改正の理由は何だったのでしょうか?

最大の理由は、一度も変えなかった以前のドイツ憲法である、ワイマール憲法がヒトラーのナチス政権により踏みにじられた苦い歴史体験があり、その歴史的教訓を受けて改正をした、といわれています。

ワイマール憲法は、第一次世界大戦敗北後の1919年にドイツがつくったもので、第一条に国民主権を定めるなど、当時世界で最も民主的な憲法とされたものです。

ところが、独裁をもくろむヒトラーは1933年、「全権委任法」という法律を制定し、事実上、このドイツ憲法を崩壊させました。

これもなにやら難しい言葉ですが「全権委任法」とは、ヒトラーのナチ党政府が、憲法に拘束されず無制限で行動できることを認めさせた法律です。

非常事態を理由にして、為政者の権力濫用を拘束し国民の人権を保証する憲法を骨抜きにし、ナチスに逆らう者に「公益を害する者」というレッテルを貼り、人権を剥奪して弾圧するようなナチ立法を(憲法に反していても)有効とし、選挙を経ていないナチ行政府公務員に立法権まで与える法律案であった。

(ウィキペディアから)

そしてできた「全権委任法」は第一条から、法律をつくる権限である立法権を国会に代わってヒトラー内閣に与えています。

国民が常にドイツ憲法をチェックすることを忘れ、ナチスに権力をゆだねてしまったため、独裁を許し、あの戦争を起こしてしまった。
その痛烈な反省から、59回もの改正につながったのです。

ドイツ憲法は過去の痛い歴史の教訓から、政治・社会の現実と憲法が定めることが乖離、離れることがないように国民が徹底して監視をしてきた。

もちろん憲法は、権力者から押しつけられるものではなく、国民が、権力者が権力を乱用しないように枠をはめるものである、という考え方に基づいています。

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ドイツ憲法の緊急時への改正は防衛と災害へのリアルな対応をあらわしている

代表的なものの中で具体的に、どうドイツ憲法を改正したか、さらに見てみましょう。

1968年に改正した「緊急事態条項」です。

前にも簡単に説明しましたが、緊急事態条項とは、大規模な自然災害や外国からの武力攻撃に対処するため政府の権限を平時より強化、人権を制限するといった非常措置をとる、というものです。

ドイツ憲法の緊急事態は大きく

・外的緊急事態=防衛
・内的緊急事態=災害

に分け、基本法に明記しました。

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ドイツ憲法を改正、緊急時の人権抑制を示す

改正のうち外的な事態、すなわち他国との戦争となった場合に、基本的人権を一時的に抑制し、連邦軍を出動させる。

この基本的人権の抑制内容は具体的に

・基本的権利の侵害の可能性は最初に決める。これとこれはできるということを決める。例えば、男子の徴兵(軍隊に徴集されること、ドイツは2011年まで徴兵制があった。今は志願兵制)
・決められたこと以上のことはできない
・異議がある場合には、憲法裁判所の判断を仰げる

と大きく3つを挙げています。

本当にいざ戦争になれば戦う人間が必要なわけですから、国民自らが、戦争時の徴兵についてまできっちり示しながら、一方で人権保障も明示しているのです。

こうした究極的な人権抑制を決めることのできるのは、国権の最高機関である議会であることも示しています。

緊急事態が発生したと認めた後も、法律などをつくる権限・立法権は議会にあり、議会活動が難しい時は代わりの組織(合同委員会という言い方をしている)をつくる。

議会は立法だけではなく事態の監視も行う。

事態、すなわち戦争を終了させるのも議会(あるいは合同委員会)としています。

リスクに対する具体的な対処の仕方が細かく示されているのです。

ドイツ憲法改正、緊急時の権力乱用に抵抗する権利まで明示する

一方の内的事態、つまり大災害が発生してしまった場合、州単位で規定されている警察権などを越境できる。
警察が州を超えて活動できると定めています。

この自然災害は議会の関与が必要ないとしている。
自然災害では権力の乱用を心配する必要がない、そもそも立法府・議会を召集している暇がないという判断からです。

このようにいざという時の対応を憲法に明記するだけでなく、そこで権力が逸脱する可能性を想定して、国民の抵抗する権利(憲法裁判所の判断など)までを示しているのです。

ヒトラーの独裁政権に憲法を蹂躙(じゅうりん)された歴史の悲劇を繰り返さない、権力を乱用させない、そのため、国民が主体となって戦争といった緊急時対応を憲法に細かく規定したのです。

いざ権力が乱用されたときには、国民が抵抗できる権利までをちゃんと書いています。

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日本憲法、改正して緊急時対応入れるべきという主張

日本でもこうした「緊急事態条項」を日本憲法に必要である、という主張があります。

東日本大震災では、民主党の菅直人政権は失態を重ね、特に、災害対策基本法にある緊急事態の布告をしなかった、といわれます。

このため医療品やガソリンなどの必需品が速やかに被害者に渡らなかった、と批判を受けているのです。

日本には

・災害対策基本法
・大規模地震対策特別措置法
・原子力災害対策特別措置法
・首都直下地震対策特別措置法
・南海トラフ地震対策特別措置法

といった、いかにもいかめしい言葉からなる災害対策の法律があります。

どれも災害時の対策・対応を細かく示しているものです。

このうち災害対策基本法では
「非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合」
には、災害緊急事態を布告できることになっています。

緊急事態の布告で、国民の権利などを一時、制限できるのです。

大震災で日本憲法に緊急時対応がないから助からなかった命あり!?

ところが菅直人政権は「災害緊急事態」を布告しなかった。

国会での質疑応答で、その理由を「国民の権利義務を大きく規制する非常に強い措置であり、適切な判断が必要であった」からとしています。

要は憲法にないため、軽々には判断できなかった、などというわけです。

しかしこのため必要であった「物資の統制(制限)」を行えず、震災直後に、ガソリンが不足し、被災者や生活必需物資を輸送できず、助かる命も助からなかった、といわれています。

とんでもないことです。

こうした失敗を繰り返さないためにも憲法上できちんと規定すべきだ、というわけです。

ワイマール憲法を崩壊させたヒトラーによる「全権委任法」に象徴される権力の乱用。
国家権力は緊急時に超法規的行為を行う可能性が高い、それを適切なものにするためにも、日本憲法を改正して、「緊急事態条項」を設ける必要がある、ということでもあります。

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ドイツ憲法は歴史の教訓に学び改正をしてきている

以上ドイツ憲法の改正を

・歴史から学ぶ
・権力者の権力の乱用をゆるさない
・そのため国民自らが現実的に憲法を改正して細かく定める

3つのポイントに分けて見てきました。

「歴史から教訓を学ばぬ者は、過ちを繰り返して滅びる」

ドイツ憲法は、先の大戦で、敵国だったイギリスの名宰相チャーチルのことわざをしっかり身に着けています。

ドイツ憲法は国民が権力者をしばるため憲法があるという考え方に基づき、社会変化に合わせて常に憲法を改正してきたのです。

日本憲法、護憲さえすれば平和は続くのか!?

翻って、日本憲法は、戦後一度も改正されていない。

社会変化にはやむをえず憲法の枠内で対応してきました。
いわゆる憲法解釈といわれているものです。

自衛隊を持った時も、憲法解釈で、(憲法に)自衛権はある、憲法9条に違反しない、という判断です。
そして今回の安保法制も集団的自衛権があるという解釈です。

背景には、マスコミも憲法学者も含め「護憲=良いこと」、「改憲=タブー」という情緒的な単純な考え方があります。

そして

「憲法を変えたら戦争国家に逆戻り、徴兵制も可能になる」
「先進的で民主的な日本憲法を変えることは民主主義に逆行する」
などという「護憲」意識が社会に定着してしまっているため、と指摘する識者もいます。

国民に定着してしまった「護憲」意識、これに対して時の政府が憲法解釈で対応してきた。

いかにも取り繕ってやってきた感じがしますね。

護憲さえすれば平和が保たれる、という宗教にも似た思いが国民にあったからですが、それは国民の憲法に対する思考停止状態も意味します。

そろそろ、憲法は権力者を押さえつける存在であるという思想に基づき、いろいろなリスクを想定した上で、対策を憲法に明記していく、といった考え方もする。

リアルに現実をみすえ、そのための対策をしっかりとる。

少なくとも他国の憲法改正を知ったうえで、議論をする、そんな時に来たのではないでしょうか?

 

ドイツと日本の憲法対応
ドイツ 日本
社会変化 東ドイツなど共産圏の脅威 中国、北朝鮮の脅威
対応 憲法改正:緊急事態条項を追加・人権抑制+権力に対する抵抗権(国民が歴史の教訓を学びリアルに対応) 憲法解釈:安保法制(強い国民の護憲意識が背景)

 

日本の憲法改正ゼロに対し、ドイツの59回の改正の理由が、おわかりいただけたでしょうか?

あなたはどう考えられますか。
※参照:産経正論(西修・駒澤大学名誉教授、佐瀬昌盛・防衛大学校名誉教授)

 

ACTION なう 実行委員会

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