2015.04.12 鉄道

『ホームドア』~視覚障碍者にとって最も効果的な転落防止対策(1)~

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後手後手にまわった駅ホームでの事故対策

ずっと以前は、ホーム上に引かれていた「白線」にだけが安全対策の主体でした。

それは利用者自らの注意力や自己防衛に頼るものです。

しかし、白線だけでは視覚障碍者が自らの安全を得るための情報としては大変不十分なものです。

そこで、ホームに採用・設置されたのが黄色い点字ブロックです。

この点字ブロックの鉄道駅への導入・設置は、今から40年以上も前の当時の国鉄山手線(現JR東日本)高田馬場駅のホームで起きた転落・死亡事故がその発端にありました。

当時、この事故に対して視覚障碍者のホームからの転落を防止するための点字の誘導ブロックを設置していなかった国鉄は、事故防止の安全設備をなすべき義務を欠いたとして批難され、裁判にまで発展しました。

その後、国鉄は視覚障碍者の安全対策に努力する意向を示し、これを契機に全国の鉄道駅のホームに点字ブロックの設置が急速に進められたのです。

白線と点字ブロック

白線と点字ブロック

現在では、「交通バリアフリー法」の施行(平成12年)もあって日本のほとんどの駅に点字ブロックは普及・設置されています。

しかしながら、首都圏への人口集中やスマホの普及による「歩きスマホ」をする人が増えたことによって、ホーム上の危険性は現在も高まりつつあります。

そして、ホームからの転落による人身事故は後を絶たず、しかも増えているという状況です。

 

もうホームドアを設置するしかない!だが・・・

事態を打開するため、新たに抜本的な安全対策として大都市圏の路線を中心に導入・設置されてつつあるのがホームドアです。

国土交通省も、①視覚障碍者団や視覚障碍者の整備要望が多い駅で、②1日の利用者が10万人以上の約240駅を目安に、重点的にホームドアの設置を求めています。

国土交通省(鉄道輸送の安全にかかわる情報)によると、ホームでの人身事故は2013(平成25年)年度には189件発生しており、件数・死傷者ともに10年前からほぼ2倍に増えているといます。

人身事故の発生件数の推移

一方、全国でホームドアの設置駅も2013(平成25)年9月末で574駅(全国)と増えたものの、全国比率では7%にも満たない状況となってます。

その内、首都圏が約300駅を占めていますが、それでも設置率は18%ほどに過ぎません。

利用者が安全にホームを利用するために欠かせないホームドアですが、その設置の進捗は全国の駅の全体から見れば遅々として進んでいないのが実状です。

設置が遅々として進まない理由としては、ホームドア導入に関する様々な技術的な問題がその理由となっています。

加えて、もっとも大きいのはコストの問題で、これにはホームの構造に関わる問題も関与するために駅によって異なりますが、一駅当たり数億円から十数億円ともいわれています。

最近、ようやく補助金の適用が可能になったものの、総事業費の一部に過ぎず鉄道事業者の負担がゼロになるわけではなく、また、財政の厳しい地方自治体では腰も重い状況です。

 

課題克服に光が!ホームドア普及に前進の兆し

しかし、前向きな見通しもあります。

近年、比較的軽量で設置コストの安いホームドアの開発が進み普及の可能性が広がっています。

また、ホームドアの導入によるワンマン運転や広告媒体として活用するなど、設置のためのコストを軽減し、鉄道事業者の側に経済的な利益をもたらすことも可能性として考えられるようになりました。

乗降位置を点字ブロックで案内

乗降位置まで黄色い点字ブロックで誘導している

ホームからの飛び込み自殺により莫大な損害をこうむってきたJR中央線・総武線にとっては、ホームドアの設置によって文字通り設置コストの元がとれるかもしれません。

このように、鉄道各社もホームドアの導入を長期的な視野での課題のひとつとして認識しているようです。

視覚障碍者にとってホームドアが非常に有効な転落防止策であることが初めて国会で語られたのは1991年のことです。

長い時間を要しましたが、ようやく国土交通省や鉄道事業者がホームドアの導入に対して積極的な姿勢を見せ始めており、ホームドアの更なる整備促進を図るため、車両扉位置の相違やコスト低減等の課題に対応可能な新たなタイプのホームドアの技術開発に対して支援を行っています。

今後も引き続き、プラットホームでの悲惨な人身事故を防止するためには、ホームドアの設置が最も効果的であることを強く主張していくことが大切です。

安全対策は生命に関わる緊急課題です。

これまで行われてきてるような、安価で設置可能な新型ホームドアの開発、ホームドアの設置のための資金援助、それらの促進に加えて、さらなる強力な方策を打ち立ててほしいものです。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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