2015.11.14 憲法改正

安保法決定直後、いまだからこそ知りたい9条改正などの理由5つのポイント

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安保法が決定した今だからこそ9条改正などの意味を知る必要があります!

反対デモが続き、メディアで大きく取り上げられた安保法が1カ月ほど前に成立しました。

安保法は、憲法を改正せず、今の憲法の枠内(解釈)で法案化し、成立しました。

2016年夏には参議院選挙がありますが、安倍首相はその後に憲法改正に取り組む考え方を示しています。

それでは、そもそも憲法とは何で、メディアに良く取り上げられる9条(戦争の放棄)改正のような憲法改正がなぜ必要なのでしょうか?

憲法見直しを検討している自民党の憲法改正推進本部という組織は、大きく4つの項目を挙げています。

・緊急事態条項
・環境権
・財政規律条項
・9条改正

どれも難しい言葉なので一つひとつわかりやすく説明します。

この記事では、9条改正や新たに憲法に加えようという動きのある4つの項目の中身、憲法とは何なのか、憲法改正の必要は本当にあるのかについて

①そもそも憲法とは何か?
②緊急事態条項とは何か?
③環境権とは何か?
④財政規律条項とは何か?
⑤9条改正は必要なのか?

5つのポイントに分け、わかりやすく記していきたいと思います。

 

①9条改正などの前に、そもそも憲法とは、何なのでしょうか?

9条改正などの理由を見る前に一体、憲法とは何なのでしょうか、知っておきたいと思います。

ジャーナリストの池上彰氏は

日本の「国のかたち」を規定するのが日本国憲法であり、憲法の下に数々の法律が存在し、私たちは、法律を守りながら生活しています(守っていない人もいますが)。

その一方で、私たちは、権力者に対して、「権力者にも守るべきルールがあるのだ」と憲法を押しつけています。

権力者が守らなければならないのが、憲法なのです。

と説明しています。

憲法は権力者から押しつけられるものではなく、国民が、権力者が権力を乱用しないように枠をはめるもので、これこそが国民に主権がある国の、民主主義のルールだと、いうのです。

では、権力者というのは?

今は政権与党、すなわち自民党です。

国民が枠をはめるものだからこそ、9条改正を含め、なぜ憲法改正をしなければならないか、理解し、判断したうえで、しっかり議論をしていかなければならないのではないでしょうか。

もっとも憲法は同時に国民の義務も示すもの、と主張する人もいます。

今の日本国憲法では、教育、労働、納税を国民の3大義務としています。

 

中国、北朝鮮の憲法とは!?

ところであなたは北朝鮮と中国に憲法があることをご存知でしょうか?

北朝鮮憲法は主権を「勤労人民」にあるとしています。

中国憲法は第1条で「人民民主主義(中国共産党)独裁の社会主義国家」としています。

北朝鮮は朝鮮労働党が憲法より上位にあります。

中国はそのものずばり中国共産党による独裁です。

両国ともに権力を保有している政党が憲法より上に位置している、ということなのです。

その結果、本来、憲法で保障されているはずの「国民の権利」が、党の判断で守られないことが起こってしまうわけです。

憲法とは、国民が、権力者に枠をはめる(国民の義務も示す)存在。

しかし憲法をつくっただけで、終わりではないようですね。

国民が見守り、チェックし続けなければならないものなのです。

天安門

 

②9条改正などのひとつ、緊急事態条項ってなんですか?

さて。いよいよ安保法の決定後、安倍首相や、その政権を担う自民党が憲法改正をしたいとしている、その中身を見たいと思います。

そして、9条改正などの意味に迫ります。

憲法改正を研究している自民党の憲法改正推進本部が「一丁目一番地」としている緊急事態条項からです。

自民党憲法改正推進本部の船田元本部長(衆議院議員)は、憲法改正について、共産・社民党以外の各党の賛同を得やすい緊急事態条項、環境権、財政規律条項の創設を、まず進める。

第2段階で自衛権を明記すべく9条の改正に踏み込みたいと述べています。

ちなみに共産・社民党は、改憲絶対反対で、護憲を方針としている政党です。

さてこのうち緊急事態条項とは何なのか?

その必要性とは何か?

見てみたいと思います。

緊急事態条項とは、大規模な自然災害や外国からの武力攻撃に対処するため政府の権限を平時より強化しよう、というものです。

駒澤大学名誉教授の西修さんは、1990年から2012年までに憲法を制定、改正した世界100カ国の憲法すべてに緊急事態条項があった、と指摘しています。

世界各国の憲法と比べ、日本国憲法の最大の不備が、緊急事態条項がないことだ、というのです。

緊急事態条項は、政府へ権限を集めることで、危機を乗り切ることが必要、という考え方です。

緊急時には、平時に当然、認められている国民の権利や自由を一時的に制限する。

そうしなければ大規模災害や戦争のような緊急事態は乗り切れず、救える命も救えず、復興に支障が起こる、というのです。

なるほど、そういう考え方があるのですね。

国際的に決められている人権についての条約・国際人権規約というものがありますが、そこでは、非常事態宣言下で一時的に自由・権利を制限することを認めています。

こうした規約もあり日本以外のほとんどの国の憲法に緊急事態条項がある、というのです。

 

9条改正などのひとつ緊急事態条項、迫りくる大災害の存在が

特に日本は大きな自然災害が迫っている、といわれます。

9世紀に、東日本大震災と同じクラスの大地震(貞観地震)が東北エリアを襲いました。

・864年、富士山が大噴火
・869年、貞観地震(じょうがんじしん、東北)
・878年、相模・武蔵地震(関東南部)
・887年、仁和地震(にんなじしん、南海・東南海)

現代は、大地震や噴火が多発した9世紀と非常に似ている、これからも大災害が起こり得るというのです。

東日本大震災では、民主党の菅直人政権は失態を重ね、特に、災害対策基本法にある緊急事態の布告をしなかった、とされています。

このため医療品やガソリンなどの必需品が速やかに被害者に渡らなかった、と批判を受けているのです。

こうしたことから緊急事態条項を憲法に新たに加える必要がある、というのです。

憲法に加えることで、いざというとき、政府は緊急事態を宣言、様々な対応ができるようにしようというものです。

救助活動

 

③9条改正などのひとつ、環境権って何?

9条改正など4項目のひとつ、環境権の意味はあるのでしょうか?

そして本当に必要なのでしょうか?

そもそも環境権とは、新しい人権の一つで、良好な環境の中で生活を営む権利、などといわれます。

例えばドイツは1994年の憲法改正で国家の環境権保護義務を規定しています。

イタリア、スイス、スペインなどにも憲法に環境権保護規定がある、といわれます。

日本では例えば伊丹空港の「大阪空港訴訟」は周辺住民が騒音問題で環境権を主張しました。

しかし、「憲法の番人」といわれる最高裁は環境権を認めませんでした(判断を避けた?1981年)。

結局、最高裁より下に位置する大阪高裁は、今の憲法13条にある「幸福追求権」(国民の権利)を根拠に夜間飛行機の発着などをストップさせることにとどめたのです。

一般的に考えても、環境とは、どこまでを指すのか、わかりにくいですよね。

人?動物?水?空気?

環境権の権利者をどこまで認めるべきかなど、漠然とした部分が多いのです。

権利を認めた結果、必要な公共事業などへの制約が起こってしまう。例えば騒音被害では住民側、それとも地域に必要な空港の、どちらを選択するか、といった問題が起こりそうです。

 

9条改正などのひとつ、環境権は国家の目標を定めること!?

しかし高度成長期の深刻な公害問題からはじまり、世界的に見ても温暖化、オゾン層破壊、動植物の絶滅の危機など、いろいろな環境問題が生じていることも事実です。

そこで個人の権利に触れるのではなく、ドイツのような環境保護の国家目標を規定する形などが検討されているようです。

今よりも国が環境問題に積極的に取り組む、その中には街の景観も含まれれば、日本のまちづくりなども対象となり得るかもしれません。

それにしてもこの環境権は、本当に必要なのかどうか、も含め、議論が分かれる部分が多そうですね。

伊丹空港

 

④9条改正などのひとつ、財政規律条項って何ですか?

9条改正など4項目のひとつ、財政規律条項の意味はというと、次世代に借金を残さないように、政府の国家予算づくりに制限を設ける考え方です。

必要性の背景は今の日本の借金体質にあります。

いまの国の借金は1000兆円。

2014年度末(2015年3月末)の国と地方(自治体)の借金、これを長期債務残高といっていますが、それは1009兆円(国809兆円・地方201兆円)にもなります。

日本国民が一年間働いた経済力を示す数値を国内総生産(約500兆円・GDP)といいますが、これとの対比で約200%にもなり、財政悪化は進行するばかりです。

そしてこの借金は毎年増え続けています。

2016年度の国の予算要求額は102兆円、実にその約3割が借金です。

予算要求額の中身の最大は社会保障費で32兆円。

高齢化の進む日本ならではで、高齢化のため社会保障費は毎年1兆円ずつも増えているのです。

 

財政規律の意味はギリシャよりひどい借金体質にあり!?

長期債務、つまり借金がGDP比で200%というのは、ユーロ危機で財政破綻寸前に陥ったギリシャよりもひどい数値です。

ちなみにギリシャは2012年にGDP比170%です。

なるほど。

こうしたことを背景に借金をするにも限度がある、憲法で規定しよう、という議論が起きたわけです。

ちなみに海外でも憲法上で財政規律を設けている国があります。

ドイツは憲法改正により財政健全化目標を規定しているそうです。

しかし財政規律を憲法に設けると国の経済対策がやりにくくなる、といった意見などもあり、このポイントもまだ議論の余地がありそうです。

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⑤憲法で定める9条改正は本当に必要なの

さて自民党の憲法改正推進本部が「本丸」に位置付ける憲法の9条改正です。

その改正の意味は本当にあるのでしょうか?

ちょっと難しいと思いますが、いまの憲法9条を改めて見てみたいと思います。

第九条

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

やはり難しいですね。

本当に簡単に言うと、日本国憲法第9条は「戦争の放棄」をうたっています。

しかし放棄した戦争とはすべてを指すのか、それとも侵略戦争だけで、自衛のための戦争は放棄していないのか?

すべての戦争を放棄したとしたら、自衛隊は憲法違反になります。

しかし自衛戦争を放棄していなければ、自衛隊は違憲ではない。

こうした議論が日本国憲法制定以来、ずーっと続けられてきました。

自衛隊の前身である警察予備隊は、GHQのマッカーサーが創設を認めた、とされています。

1950年に朝鮮戦争が勃発、日本駐留米軍は朝鮮半島に派遣され、日本ががら空きになることをマッカーサーが恐れたため、ともいわれます。

警察予備隊はやがて自衛隊に。

自衛隊は憲法違反だという住民の訴えに対し、「憲法の番人」といわれる最高裁は、(政治的な問題などとして)判断を示さず、住民の訴えを退けたという過去の経緯もあります。

こうした不透明な判断に終止符を打つべく「自衛のための戦争」を認め、そのために必要な軍隊を憲法できちんと明示しよう、というのが政権与党・自民党の考え方なのです。

 

9条改正の意味は?世論調査には改正推進派が多いものも!

戦争を望んでいる人はいないと思います。

「戦争放棄」をうたっているから他国から攻められない、それは、あまりに軽々な考え方ではないでしょうか?

すくなくとも国を守る自衛の体制、リスクへの備えが必要であることは、当然だと考えられます。

要はそのための備えを、国民がしっかり議論をしたうえで決めていくことだと思いますが、いかがでしょうか?

ちなみに世論は様々のようです。

2013年の朝日新聞の世論調査では「変える方がよい」39%、「変えない方がよい」52%。2015年の調査ではさらに広がり「変える方がよい」29%、「変えない方がよい」63%となっています。

一方、毎日新聞が2013年に実施した世論調査では、「憲法9条を改正すべきだと思う」が46%、「憲法9条を改正すべきだと思わない」は37%。

世論調査の中には改正推進派が多いものもあるのです。

自衛隊

 

9条改正など、今後の流れはどうなるの?

これまで憲法とは何か、9条改正などの理由について見てきました。

ここからは政権与党の自民党が、具体的に考えている憲法改正内容全体(項目)と、考えている改正への流れを見てみたいと思います。

1番最初に見たように、自民党の船田元議員(憲法改正推進本部長)は、自衛権を明記する9条の改正は「(ハードルが高いので)第二段階以降(の発議)が順当だ」と述べ、各党の賛同を得られやすい環境権の創設や緊急事態条項の創設などから協議を進める考えを示しています。

その自民党は、2012年(平成24年)4月に憲法改正草案をつくっています。

ここではこれまで見てきた、緊急事態条項、環境権、財政規律条項、9条改正も含め、

①前文 ②天皇が元首であることの明確化 ③国旗(日章旗)、国歌(君が代)の尊重義務 ④元号に関する規定 ⑤天皇の国事行為と公的行為
⑥自衛権の発動 ⑦国防軍の保持 ⑧領土の保全 ⑨公益と公の秩序 ⑩選挙権の国籍要件
⑪宗教的活動から「社会的儀礼」と「習俗的行為」を除外 ⑫家族の尊重 ⑬国の環境保全の責務 ⑭衆参両院の選挙区は人口を基本とする規定 ⑮臨時国会の召集を要求から20日以内とする規定
⑯政党の位置づけと活動 ⑰首相が欠けた場合の臨時代理 ⑱首相の行政各部への指揮監督権と国防軍への最高指揮権 ⑲裁判官の報酬 ⑳財政規律
㉑宗教団体への公金の支出制限と私学助成 ㉒「基礎地方自治体」と「広域地方自治体」の規定 ㉓地方選挙権の国籍要件 ㉔緊急事態 ㉕憲法改正要件の緩和

実に25項目を「特に重要な項目」と位置付け、見直しを図る方針を示しています。

 

憲法改正には大きなハードルあり

そして具体的な憲法改正には、まずは大きなハードルがあります。

憲法改正のためには憲法96条で定められている

・衆議院・参議院それぞれ3分の2の賛成
・国民投票での過半数の賛成

が必要となるのです。

普通の法律は衆議院・参議院それぞれで過半数の賛成があれば成立します。

しかし憲法はそれより上位にあるので第96条での手続きが必要なのです。

安倍首相は「まだ国会で(改憲発議に必要な衆参)それぞれの3分の2を構成できる状況には全くない」と現状を分析。

さらに、国民投票で投票総数の2分の1より多い賛成がないと、憲法改正ができないことに触れ、憲法改正については国民的な理解が得られなければできないとの認識を示し、「たとえ衆議院、参議院のそれぞれ3分の2の国会議員の賛成を得たところで、憲法改正はできません」

とメディアで述べています。

そして安倍首相は2016年夏の参院選後に憲法改正に取り組む、という考え方も示しています。

以上が憲法とは何か?憲法改正ポイントの理由、今後の流れ、です。

いかがだったでしょうか?

憲法は本来、私たちが権力者に押しつけるもの。

そのためには、まずは憲法とは何かを知り、学ぶ必要がありそうですね。

そして改正するか、しないか、といったさまざまな議論への参加が求められているのではないでしょうか?

※参照:池上彰「超訳 日本国憲法」

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※「ACTIONなう!」実行委員会

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