2015.08.25 教科書

意外と知らない教科書のコト 〜「検定」「採択」っていったいどんな制度?〜

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そもそも「教科書」っていったいなに?

日本では義務教育制度により、子どもたちが小・中学校に入学すると学校を通じて教科書が無料で支給されています(※高校の教科書は有償)。それぞれの教科・分野ごとに毎年1種類の教科書が児童・生徒に無償で配布され、それに基づいて授業がおこなわれています。

教室

このように、私たちが何気なく手にとって使っている教科書ですが、そもそも「教科書」とは何なのでしょうか?

わが国では、国が教育の基準として「学習指導要領」を定めています。

この学習指導要領に基づいて教育が学校で正しく行われるように、教科用の図書として制作・使用されるものが「教科書」なのです。

学校教育法には、小学校においては教科書を使用しなければならないと定められています。この規定は、中学校・高等学校にも準用されています。

したがって、全ての児童・生徒は教科書を使って学習する必要があるのです。そのため、現在、学校の授業の場では、実際にほとんどの授業において教科書に沿って教育が行われています。

そうすることで、国内どこに行っても検定を受けた教科書によって均質な教育を受けられるのです。教科書のない授業というのは考えられません

 

教科書が届くまでの流れ

では日頃から目にしている教科書がどのように作られ、児童・生徒に届けられ使用されるのでしょう。大まかな流れを以下にまとめてみました。

 

① 著作・編集

現在、日本の教科書を作っているのはほぼ民間の教科書会社です。それらの民間の教科書会社は、あらかじめ文部科学省が公表している検定基準に基づいて著作・編集をし、それぞれの会社で独自の創意工夫を加えて教科書を作成し、文部科学省に検定を申請します。

 

② 検定

図書は、文部科学大臣の検定を経てはじめて、学校で教科書として使用される資格を与えられます。

発行元から検定申請された申請図書は、教科書として適切であるかどうかを文部科学大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会に諮問されるとともに、文部科学省の教科書調査官による調査が行われます。

審議会での専門的・学術的な審議を経て答申が行われると、文部科学大臣は、この答申に基づき検定を行います。教科書として適切か否かの審査は、教科用図書検定基準に基づいて行われます。

 

③ 採択

小中学校の教科書として認められている教科書は教科ごとに複数存在します。そのため、この中から教科ごとに学校で使用する1種類の教科書を決定(採択)する必要があります。

検定を通過した教科書は、いずれも学習指導要領に基づいて執筆されていますが、教科によってその重点や表現の方法、資料や学習素材の示し方などにそれぞれ特徴がでてきます。そこで、実際に教科書を使う各市町村の教育委員会は、これらの中から各教科ごとに良いと思う教科書を選択することになります。

採択の権限は公立学校については所管の教育委員会に、国・私立学校については校長にあります。採択された教科書の必要数は、文部科学大臣に報告されます。

 

④ 発行(製造・供給)

文部科学大臣は、報告された教科書の必要数の集計結果に基づいて、各発行者に発行すべき教科書の種類及び部数を指示します。

この指示を受けた発行者は、教科書を製造し業者に依頼して各学校に供給します。そして、供給された教科書は児童生徒に渡され授業で使用されることになります。

義務教育過程において国・公・私立の学校で使用される教科書については、全ての児童・生徒に国の負担によって無償で給与されています。

 

まとめると、国が学習指導要領という形で「あるべき教育の指針」を示した上で、教科書はある程度の自由度を持って民間会社が制作し、教育の現場が複数のバリエーションの中から子どもたちに一番良い指導・教育ができると思える教科書を選択するというのが、現在の日本の教科書制度となっています。

 

教科書は完成までに4年かかる!

教科書は書いた物がすぐに発行される訳ではなく、教科書検定を通って生徒に渡るまではかなり時間がかかるのです。では、教科書は製作に取り掛かってから、実際に使用されるまでどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

実は、大まかに言うと教科書の製作開始から児童、生徒の手に渡るまでには約4年かかります

まず、教科書のの著作・編集作業に1年~1年半ほどを要します。2年目には文部科学大臣に検定申請をして、その合否が決定するまでに10カ月ほどかかります。

3年目には、その教科書が採用されるかどうかの「採択」が行われ、その採択を受けてから初めて教科書が製造されることになるのです。その翌年(4年目)の4月以降に新しい教科書として生徒の手物に届くことになります。

このように、教科書というのはとても長い年月をかけて作られているものなのです。

 

「教科書検定」っていったいどんな制度?

「教科書検定」とは、民間で著作・編集された図書について文部科学大臣が教科書として適切か否かを審査しこれに合格したものを教科書として使用することを認めることです。

1947年に制定された学校教育法によって、小学校・中学校・高校に対し文部省の実施する検定に合格した教科書を使うように義務付けています。そのため、教科書は一般に向けて発行される前に国(文部科学大臣)による検定を通る必要があります。

これは、国が教科書として適正かどうかを審査するもので、書かれている内容に間違いがあってはいけないということがその主な目的です。

一部のものを除き、編集・制作は民間の教科書会社が行い、国の検定に合格して初めて「教科書」となるのです。(※小・中学校の教科書は通常4年に一度改訂されます)

 

教科書検定とはいったいどんな方法で行われているのか?

次に「教科書検定」はいったいどんな方法で行われているのか、それをみてみます。

発行元から検定申請された図書は、教科書として適切であるかどうかを、文部科学大臣の諮問機関で、大学教授など専門の学識経験者の集まりである教科書検定調査審議会において、その記述の内容が学会状況等に照らし欠陥があるか否かを慎重に審議されます。

そこでは、教科書調査官が基準などをチェックし、必要な修正を行った後に再度、審査を行うことが適当である場合には、合否の決定は保留となり検定意見を通知することになります。

検定意見の通知を受けた者は、検定意見に従って修正したものを再提出し、これについて再度審議会で審査が行われ、最終的な合否が決定されます。

検定意見があまりに多い場合や、内容の不足など重大な欠陥がある場合は不合格となり、修正ではなく再申請が求められ再度審査が行われます。

検定合格となった時点で、教科書の見本を作成しそれを文部科学省へ提出します。

実は、平成26年度に発行された教科書の数は、発行点数としては1000以上にのぼります。そんな膨大な数の教科書が「教科書検定」という厳正な審査にかけられて入念にその内容をチェックされています。そのため、合否が決定されるまでにとても長い時間と労力がかかっているのです。

 

「教科書採択」とは

検定を通過した教科書は教科ごとに複数存在することになります。いずれの教科書も学習指導要領に基づいて執筆されていますが、教科によってその重点や表現方法、資料の示し方などにそれぞれの会社の特色がでてきます。

そこで、実際に教科書を使う各市町村の教育委員会は、これらの中から各教科ごとに良いと思う教科書を1つ選択することになります。それが「教科書採択」です。

市町村の小・中学校で使用される教科書の採択の権限は基本的に市町村教育委員会にありますが、実際の採択に当たっては全国を1市2郡程度の規模の500ほどの地区に分け、その地区内では同じ教科書を使用するという「共同採択」制度がとられています。

共同採択地区内に二つ以上の市町村がある場合は、採択地区に採択協議会を置いてその地区内の市町村教育委員会が協議して採択を行うことになります。ただし、国立・私立の学校及び高校では校長が採択を行う学校採択制度となっています。

 

「教科書採択」ではいったい何が行われているのか?

採択の手順は主に3段階に分かれます。

① 文部科学省による教科書目録の作成

発行者は、検定を経た教科書で次年度に発行しようとする教科書の内容や数などを文部科学省に届け出ます。文部科学省はこの届出のあったものを一覧表にまとめて教科書目録を作成します。

この教科書目録は都道府県教育委員会を通じ各学校や市町村教育委員会に送付されます。教科書はこの目録にのせられなければ採択されることはありません。

 

② 都道府県教育委員会の採択への指導・助言・援助

都道府県の教育委員会の役割は、採択基準や選定に必要な資料を作成し、市町村の教育委員会へ採択の指導・助言・援助を行うことです。主に市町村教育委員会への「指導」として採択の参考用に各種の文書を配布することにあります。

そこで、都道府県教育委員会では「教科用図書選定審議会」を設けて「指導」のための文書作成を諮問し、その回答をもとに「選定資料」などを作成し採択地区に配布することになります。

「選定資料」というのは「指導」の中心となる文書で、選定審議会が調査員を任命して教科書1種類ごとに特徴などを記して作った調査員報告書を基にしています。

その他に、教科書用図書の展示会なども開催しています。

 

③ 市町村教育委員会による決定

採択地区の市町村教育委員会は、都道府県教委の指導を参考にして、地区独自の採択方式で各教科1種類の教科書を選びます。採択地区に複数の市町村がある場合は、合同の地区採択協議会に採択を委ねて、その選定にしたがって同じ種類を決定をします。

決定の際には、以下のような方式がそれぞれの地区ごとに取られています。

○調査員方式

採択に関わる採択協議会委員や調査員など一部の有識者・関係者によって使用する教科書を決定するものです。現場の教員はその決定に触れられないので「与えられた」教科書となってしまうという弊害もあります。また、調査員の名簿も調査に使った資料も非公開のため、行政の意向が強く反映したり、営業の不当な働きかけなどの例もみられます。

○学校票方式

各学校からその教科で使いたい教科書の「希望票」を提出し、その集計を参考にしながら採択協議会が選定する方式です。都市部を中心に全国の過半数でこの方式が取られているようです。現場の教員の声は反映しやすいのですが、実際、教員同士が十分話し合ったか、票がどの程度反映されたかはそれぞれの採択地区で差があります。

○独自方式

その他、各学校から教科の代表者を送り教科書を研究し、その結果を学校に持ち帰って意見を聞く方式や、採択に関わる委員に市民や現場の教員を入れて、人選や審議の過程を公開して行うなど、地域の実状にあわせた工夫をしている地区もあります。

 

教科書採択のメリットや課題

現在の共同採択方式においては、比較的小規模な市町村でも教科書の調査研究を十分に行う体制を整えられること、近隣市町村内での転出入の際の児童生徒の負担が少ないこと、教師が近隣他校と共同で授業研究を行い授業の質を高めるのに役立つこと、などの利点があげられています。

その反面、共同採択方式では、地区内で意見の相違があった場合の課題も指摘されています。そのため、採択地区の構成を決める際に、より柔軟に地区割りを見直すことができるようにしようとしています。

そもそも、日本において採択制をとっているのは、それぞれの地域の子どもたちが自分たちの地元に愛着や誇りを持って勉強できるように、自然環境・歴史的な経緯・文化や産業など、それぞれの地域の持つ特性とよりマッチした教科書を選ぶためにあると言っていいのではないでしょうか。

 

最後に

日本を今後も豊かな国にしていくためにも、次世代を担う子どもたちの教育はとても大切なことです。国の教育制度は、わが国が将来どうなっていきたいかを端的に表しているものとも言えます。だからこそ、子どもたちの自我の形成に大きな影響を与える小・中学校教育期に、どのような教育を受けさせるか、どのような教科書・教材を使うのかということに、私たち国民一人一人がもっと関心を持っていくべきであると思われます。

毎年6月~7月にかけて、全国各地の教科書センターや学校、公立図書館で教科書展示会が開かれています。ここでは誰でも、前年の検定に合格した教科書の見本を見ることができます。

地域により様々な展示するコーナーを設けているそうです。また、意見箱を設置する等、みなさんの希望・意見を集めています。ぜひ機会があれば、お近くの展示会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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