2015.11.20 鉄道

エスカレーターのマナーは変わるか?

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エスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーン開始!

全国のJR・私鉄などが2015年7月21日から、駅でのエスカレーターの安全利用を呼び掛ける「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンを一斉に開始しました。

エスカレーターで片側を空ける習慣は、隣をすり抜ける際にバランスを崩して転倒したり、駆け上がったり下りたりする際にほかの利用客と衝突し、転倒させるケースなどが起きやすく、実際、東京都内で2011~13年にエスカレーターで転んだり落ちたりして搬送されたり、ケガをした人が3865人にも上っているようです。

そこで、エスカレーターでは急ぐ人のために片側を空ける習慣がありますが、「事故につながる危険もある」として立ち止まって手すりにつかって利用するよう、ポスターなど呼び掛けてい区ことになります。

キャンペーンに賛同する日本エレベーター協会でもエスカレーターの安全基準は立ち止まって利用することを前提にしているとして、「歩行禁止」を呼び掛けています。

 

エスカレーターでの本来のルールは「片側空け?」「歩行禁止?」

駅に限らず、エスカレーターの「片側空け」は全国各地でよく見かけます。「急いでいる人のために片側を空けるのがマナー」と思っている人も多いのではないでしょうか。

「ラッシュ時には急ぎたい人も多いから」とか「後ろから片側を空けろと注意されるから」などなど、「片側空け」をしている理由はいろいろあるでしょう。

では、本来の「正しい乗り方」はどうなっているのでしょう?

 

エスカレーターの本来のルールは「歩行禁止」

実はエスカレーターの正しい乗り方は、本来は「歩行禁止」なのです。

そもそも、エスカレーターは歩くために設計されておらず、立ち止まってベルトをつかんで乗ることを前提も安全基準が設けられているそうです。

建築基準法の規定でステップの横幅を1.1m以内にする定めになっているため、人間2人が歩くにはやや狭く、また、その横幅が多くても2人まで乗れるような幅にしているため、利用者が必ず手すりにつかまれる構造になっているのです。

これらのことからも、エスカレーターでのすり抜けや追い越しを想定して作られていないことがわかります。

さらに、エスカレーターの標準的な勾配は公共の階段よりも急なものが多いため、ステップの高さや奥行きも大きいのでつまずきやすく、歩く人と止まって乗る人との接触事故の危険回避もその理由だそうです。

狭く密集したエスカレーターでは、転倒すれば周囲の人を巻き込んでしまい、ひとつの事故が周囲を巻き込み大事故につながりかねません。

 

なぜエスカレーターの「片側空け」が普及?

それでは、なぜエスカレーターの「片側を空け」マナーが広がったのでしょう?

そのルーツとしてはイギリスのロンドンで、混雑解消のために考えられたものとされています。

日本では阪急電鉄の梅田駅が移転した際、エスカレーターが長くなったので、急ぐ人のために「片側空け」を呼び掛けたのが最初で、その後各駅に長いエスカレーターができ始めた70年代に広まったとみられています。

1970年に開かれた大阪万博会場に設置された「動く歩道」でも、海外からの旅行客のために「左空け」を推奨したそうです。

つまり、大阪が日本における「発祥の地」だったのです。

やがて、「片側空け」が全国に本格的に普及し、特に東京では深い地下鉄駅が相次いで建設されて長距離のエスカレーターが増えたため、「片側空け」が徐々に普及するようになりました。

ちなみに、有名な話ですが「片側空け」には不思議な地域差があります。

なぜか、大阪(神戸)では「左空け」、東京、名古屋、札幌、福岡などそれ以外の地域では「右空け」に分かれています。

それでは、大阪以外の地域ではどうして逆の「右空け」が広まったのでしょう?

これについては、明確な回答はありませんが、自動車の左側通行という規則に沿って普及したからではないかといわれています。

ですから、世界では「左空け」が主流なのにもかかわらず、「片側空け」を最初に取り入れた大阪以外、日本では「右空け」が主流という逆転現象が起きているようです

 

「マナー」と「ルール」

こうしたキャンペーンにも関わらず、実際に大都市の主要駅などで「歩行禁止」を守っている場面はあまり見当たりません。

エスカレーターの「片側空け」という習慣が、すでに全国で定着している今、いったん世の中に根付いてしまった習慣をあらためるのはなかなか簡単ではないようです。

ですので、「歩行禁止」ルールをめぐっては「直ちに徹底するべきだ」という賛成論よりも、「なぜ改める必要があるのか」という反対論のほうが多いというのも実情のようです。

そもそも、路線によって混雑状況は異なりますし、全面的に「歩行禁止」にすればホームでの混雑が解消することができず、状況によっては逆に線路への転落事故も招きかねません。

「マナー」というのは周囲の人と同じ行動を取る習性でもあり、慣れ親しんだマナーを変えるには相当なエネルギーと時間が必要となります。

 

今回のキャンペーンのような啓発活動だけでなく、混雑緩和のための整備なども含め、社会全体で安全対策として取り組まなければ、問題は簡単には解決しないと思われます。

「マナー」としては「片側空け」だが、正しい「ルール」としては「歩行禁止」というズレがある以上、状況に応じてどちらの空気を読んで行動するか決めなくてはなりません。

いずれにしても、事故を起こさないようエスカレーターは気をつけて利用しましょう。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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