2015.12.14 選挙

参議院選挙における「合区」の問題点

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参院選での1票の格差を是正する「10増10減」案を決定

政権与党である自民党は、参議院の都道府県選挙区において「1票の格差」を解消するための選挙制度改革で、隣り合う選挙区を1つにする「合区」をいくつかの選挙区で導入することを決めました。

対象となるのは「鳥取・島根」「徳島・高知」の2つの地域です。

さらにそれ以外の選挙区での定数を6増6減させることを組み合わせ、「10増10減」とする公職選挙法改正案となります。

 

参議院選挙における「合区」とは

そもそも、合区(ごうく)とは、隣接するいくつかの選挙区を統合して1つの選挙区とすることです。

有権者数が少ない選挙区を統合することで、有権者数が増加し、他の有権者の多い選挙区との1票の格差を縮小することができます。

1票の格差をめぐる問題としては、2013年の参院選で格差が最大4.77倍だった選挙区の定数配分を、最高裁が「違憲状態」と判断しています。

最高裁は衆議院選挙における、格差が2倍未満である状態を基本とした区割り基準をもとに、次の参院選(2016年)までに「都道府県単位の選挙方法を改めるなどの改革が必要」であるとしました。

そこで、参議院の自民党執行部が国会内で総会を開いて、野党4党が主張する2選挙区の合区と定数の6増6減を組み合わせた「10増10減」案を受け入れることを決定しました。

とはいえ、この10増10減案は2010年国勢調査によれば、その格差は2.97倍でしたが、最新の住民基本台帳に基づけば3倍を超えてしまうようです。

参議院選挙においては、都道府県単位の選挙区制をとっているので、今までのように選挙区同士でやりくりして定数を変更するやり方では格差を是正するのには限界が出ていました。

そのため、抜本的な是正方法の一つとして、合区の導入が検討されていました。

地方での人口減少がさらに進めば、これ以上の抜本的な改革が求められる可能性もあります。

実際にこれが実現されれば、参議院の創設以来の選挙制度改革ということになります。

 

選挙区を「合区」することによる新たな問題

日本の国会は衆議院と参議院の二院制をとっています。

そして、わが国では衆・参両院とも国民の直接選挙で議員を選んでいます。

国民の多様な意見と利益をできるだけ広く反映することが、そもそもの二院制の制度主旨であるとするならば、制度を工夫してより多様な民意を取り入れられるようにする必要があります。

ですが、今回の改正案のように人口比例による定数配分を優先するなら衆議院との差異がなくなり、二院制の意味がなくなってしまいます。

国会

衆議院議員選挙の場合は人口が均等に配分されることをを重視して、市や町を分断するような選挙区を設定している一方で、現在の参議院議員選挙の選挙区は、人口の格差がありながらも都道府県単位での選挙区制度を維持してきました。

これは、衆議院議員が個人や政党を重視しているのに対して、参議院議員が都道府県の地域代表という性格も加味しているのです。

このように、両院議員の選出に差異を設けて多様な国民の意見を吸い上げるのが現行の衆参の選挙制度です。

しかし、両院どちらも人口比例で選挙区を設定してしまうのならば、衆参両院は同質化してしまい、二院制を採用している意義が薄れてしまいます。

それに加え、学校や警察など住民の生活にかかわる公的事務は都道府県を前提とした制度となっています。

選挙制度だけが都道府県の枠組みを考慮せずにその境界をまたぐというのは、現在の行政のあり方との整合性がとれないように思われます。

 

投票「機会」の格差こそ解消されるべき

我が国においては、憲法14条で法の下の平等を説いている以上、原則的には一票の格差は是正されるべきです。

しかし、今回のように人口比例で定数を配分するやり方では、投票「価値」の格差は解消されても、投票「機会」の格差については解決されていないと思われます。

地方では市町村合併に伴う統廃合や農村部中心とした過疎化の影響で、市街地の投票所に統合したり、いくつかの投票所をひとつに集約したりと、投票に行きたくても行けない人たちが増えている状況もあるのです。

地方と都市の投票「機会」の格差についてこそ、解決するべき課題であると思われます。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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