2015.11.12 鉄道

2020年オリンピックのホストとなる東京都の「都営地下鉄」鉄道輸送の安全を守れるか?!

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東京都交通局が運営する「都営地下鉄」

国が2020年の東京五輪開催までの設置拡大を求めていることも追い風になり、首都圏の鉄道各社でホームドアを設置する動きが広がっています。

なかでも、開催都市となる東京都の交通局は積極的にホームドア設置駅を増やす計画を立ています。

今後、オリンピックの開催によって国内外からの多くの旅行客が訪れ、さらなる混雑が見込まれる東京の鉄道において、ホームドアは利用客の転落事故防止に大きな効果を発揮します。

今回は、その東京都交通局が運営する「都営地下鉄」について、その歴史や特長、さらには安全対策などを見てみたいと思います。

 

東京の地下鉄の歴史

東京都は現在、東京都交通局と東京メトロの2つの地下鉄事業者によって地下鉄が運行されています。

東京で暮らしていると当たり前のように感じますが、一つの都市に2つの事業者というのは世界的にも珍しいことです。

同じ地下鉄ですが、両地下鉄の乗り継ぎでは隣り合っている駅でも改札を通る必要がありますし、もちろん、新たに運賃もかかります。

その東京メトロと都営地下鉄は、将来的に統合する見通しで協議に入ったとのニュースで話題になりましたが、そもそも、どうして2つに分かれているのでしょう?

東京の最初の地下鉄は、まず1934年に「東京地下鉄道」によって浅草~新橋間が開業、次に1939年に「東京高速鉄道」によって渋谷~新橋間が開業しました。

その後、両社は1939年に直通運転を開始しました、これが現在の「銀座線」です。

この時点では東京の地下鉄は民間企業2社の運営となっていました。

 

「東京メトロ」と「都営地下鉄」

東京メトロが10年ほど前までは「営団地下鉄」と呼ばれていたのは、東京にお住いの方には記憶に新しいことと思います。

その正式名称は「帝都高速度交通営団」という難しい名称でしたが、2004年に民営化されて、現在の東京メトロ(正式名称は「東京地下鉄株式会社」)という呼称になりました

一方、「都営地下鉄」はモノレールやバス事業等とともに東京都交通局が事務を行っています。

 

戦時施策としての「帝都高速度交通営団」

「帝都高速度交通営団」は戦時下の1941年、それまでは上記の民間会社(「東京地下鉄道」・「東京高速鉄道」)によって行われていた東京の地下鉄事業を戦時統合し、一元的に東京の地下鉄を建設・経営する公共の事業体として国策で発足しました。

ここでいう「高速」とは高速鉄道の意味ではなく、当時の東京市内の交通の主役であった路面電車に対して「高速」という意味です。

「営団」というのは、戦時中に国が主導して行う事業のために作られた組織で、戦時中はいろいろな営団が存在していました。

国は首都の交通事業は国策であるとして、国と東京市と私鉄各社の出資で帝都高速度交通営団を結成しました。

戦後はGHQによりほとんどの営団が解散しましたが、帝都高速度交通営団だけは戦後も東京の地下鉄網を担うこととして残されました。

結成の際に東京市も資本参加していたため、自治体の意見も反映されるという理由がその背景にはあったようです。

 

東京都も地下鉄事業に参入

戦後も東京の地下鉄の運営と建設は営団が一手にになっていました。

しかし、東京の復興と景気回復はめざましく、それに対応するため路線の拡張を行っていましたが、営団だけでは新たな路線の建設が追いつかなくなってしまいました。

そこで、1957年、東京都議会は独自に路線建設を決定します。これが都営地下鉄の始まりです。

東京都はまず、1958年に営団が建設予定だった1号線(浅草線)の免許を譲り受けました。

その後、6号線(三田線)・10号線(新宿線)・12号線(大江戸線)も東京都が建設・運営することになり、各線の延長・拡充を図ってきました。(「東京の地下鉄」: Wikipedia

1960年には浅草線が開業、1968年に三田線、1978年に新宿線、さらに2000年には大江戸線が全線開業しました。

このように複数の事業者によって地下鉄網を建設することによって、東京都全体の地下鉄網の整備を迅速にすることができたのです。

 

都営地下鉄のホームドア設置状況

都営地下鉄は、東京都特別区及びその周辺に「浅草線」「三田線」「新宿線」「大江戸線」の4つの路線を運行しています。

すべての路線をあわせて1日当たり約270万人以上が利用しています。総延長は109km、総駅数は106駅の地下鉄路線です。

都営地下鉄を運行する都交通局では、東京五輪開催をにらみバリアフリーを含めた積極的な安全対策を行っていくとしています。

その4つの路線のホームドア設置状況を見てみましょう。

 

◎都営浅草線【乗降客数・約65万人/1日】

都営浅草線は、東京都大田区の西馬込駅から墨田区の押上駅までを結ぶ地下鉄路線で、開業当初は「都営1号線」と称していました。

直通先の京急線・京成線がそれぞれ羽田空港と成田空港へのアクセスを担っているため、浅草線自体も空港アクセス路線としての役割を有し、羽田空港国内線ターミナル駅と成田空港駅を結ぶ列車も設定されています。

また、北総線経由の成田スカイアクセスとの直通運転も行っており、都心部から成田空港へのアクセス路線としての役割の強さを増しています。

現在、浅草線内でホームドア設置駅はありません。

その理由として、浅草線には京成電鉄・京急電鉄など4社が乗り入れており、その各社の車両でドアの位置が微妙に異なっているため設置が困難な状況となっているからです。

今後、各社協議してホームドア整備に向けた検討をするとのことです。

 

◎都営三田線【乗降客数・約59万人/1日】

三田線は東京都品川区の目黒駅から板橋区の西高島平駅までを結ぶ路線で、開業当初は「都営6号線」と称していました。

志村坂上駅より北西側の西高島平駅までの区間は、地下鉄路線でありながら地上区間となっています

また、目黒駅で東急目黒線と相互直通運転を行っています。

すべての駅で日立製作所製のホームドアが設置済みで、ワンマン運転を実施しています。

 

◎都営新宿線【乗降客数・約69万人/1日】

都営新宿線は、東京都新宿区の新宿駅から千葉県市川市の本八幡駅までを結ぶ東京都交通局の運営する路線です。

新宿駅で京王線との相互直通運転を行っています。

東京都交通局の鉄道路線(都電荒川線、日暮里・舎人ライナーも含む)では唯一、都の外側まで路線が延びています。

現在、新宿線内でホームドアが設置された駅はありませんが、東京都交通局は相互直通運転をしている京王電鉄と協議し、都営新宿線の全21駅にホームドアを設置すると発表しました。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック前の2019年度までに工事を完了させる予定です。

 

◎都営大江戸線【乗降客数・約85万人/1日】

都営大江戸線は、東京都練馬区の光が丘駅と新宿駅を結ぶ直線路線と新宿駅から反時計回りに都庁前駅に至る環状線から構成されています。

環状の路線ですが、山手線などのような、ぐるぐると環状に循環しているわけではなく、「6」の字のように運転されています。起点が都庁前駅で終点は光が丘駅です。

建設費を削減するため、リニアモーターミニ地下鉄が採用されています。

後発で建設された地下鉄路線のため、既存の路線より深い位置を走っており、全般的に駅ホームがかなり深いところに設置されています。

日本の地下鉄では最深部を走行していることから、耐震性が高く災害時には救助作業用の路線として利用されることになっています。

ホームドアは、すでに全駅で利用が開始されています。

都営地下鉄では三田線に次いで2路線目の導入となります。

 

都営地下鉄のホームドア設置率は81%に! 残るは「浅草線」のみ

都営新宿線の全21駅にホームドアが設置されれば、都営地下鉄の全4路線でのホームドア設置率は81%になります。

そうなると残るは、浅草線のみということになります。

浅草線沿線の住民は都交通局に駅・ホームの安全確保のために速やかにホームドアを設置するよう再三求めているようですが、相互乗り入れ他社とドア位置を合わせた車両を使うことの協議が必要なので、いまだ「検討中」という回答のようです。

安全対策に不可欠なホームドアを早急に設置させるためには、東京都のイニシアチブが重要になってきます。

東京都から、相互乗り入れする他の鉄道事業者に積極的な提案を行ってほしいところです。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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