2015.06.06 パラオ

安倍総理 →「先の大戦」学校の先生 →「太平洋戦争」うちの爺ちゃん →「大東亜戦争」どれがホント?? 日本の戦争呼称について調べてみた

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「太平洋戦争」?「大東亜戦争」? 定まらない日本の戦争呼称

「太平洋戦争」、「大東亜戦争」、「15年戦争」、「アジア・太平洋戦争」・・・

第二次世界大戦期に、日本が戦った戦争に対する呼称はイマイチ定まっていません。

その呼称は各新聞社でも違い、教科書記述ですらも違っています。

政治家の口から出てくる呼称もそれぞれ。

正しい呼称はいったい、どれなんでしょうか?

世界的に見て、国内で戦争呼称が分かれている例は、ほとんどないようですが、今回はそのさまざまな呼称について、主張や議論などを比較してみました。

※防衛省防衛研究所の庄司潤一郎氏のレポート「日本における戦争呼称に関する問題の一考察」に基づく

 

海軍が主張した「太平洋戦争」陸軍が主張した「大東亜戦争」

いったいどれが正しいのか? とても分かりづらい戦争呼称。

まずはその歴史を振り返ってみましょう。

1937年(昭和12年)に日中戦争が始まり、1941年(昭和16年)12月8日、日本は、米英との開戦に踏み切ります。いわゆる真珠湾攻撃ですね。

この時、東條内閣は、同年12月12日の閣議で、「支那事変(日中戦争)」と「対米英戦争」を合わせた戦争呼称を「大東亜戦争」として正式に決めました。

同年12月10日の大本営政府連絡会議で

海軍側から、主敵は米英で、主戦場は太平洋であるということから「太平洋戦争」という案が出されましたが、「支那事変(日中戦争)」、そしてソ連が参戦した場合も考え、陸軍案の「大東亜戦争」が採択された、という経緯があったそうです。

作家・半藤一利氏は「昭和史」の中で

私はいま「対米英戦争」と言っていますが、これを「太平洋戦争」と呼ぶべきか、「大東亜戦争」と呼ぶべきか、しばしば議論となります。戦争が起きた時に何と名称をつけるか、陸海軍も政府も議論をしました。海軍は太平洋を舞台とする戦争だから「太平洋戦争」でいいだろう、また政府筋には「日清戦争」「日露戦争」のように相手国との戦争という意味で「対米英戦争」でいいのでは、という意見もありました。ところが陸軍は、強硬に「大東亜戦争」を主張します

と記しています。

いずれにせよ日本は「大東亜戦争」に決めたのです。

しかし防衛研究所の庄司潤一郎氏は、この呼称に問題があった、と言います。

・自存自衛一本である
・大東亜新秩序建設こそが戦争目的である
・自存自衛と大東亜新秩序建設を加えた二本建てである
・さらには「大東亜」は地域を示している呼称なのかも定まっていない

と様々な思想があった、要は考え方が統一されていなかった、というのです。

 

終戦後、GHQが「大東亜戦争」の呼称を禁止

1945年(昭和20年)8月、日本はポツダム宣言受諾により終戦を迎えます。

連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、同年12月15日、日本政府に対し軍国主義的思想の抹殺を目的とした覚書を出します。

この中で「大東亜戦争」の使用を禁止するのです。同時に新聞・雑誌などメディアに対する規制も行いました。

これを受け、現在に至るまで、日本政府は、公的には「今次戦争」「先の大戦」「第二次世界大戦」という呼称を使用することになっています。

一方メディアは、

同年12月7日、朝日新聞が初めて「太平洋戦争」を使い、その後、GHQ提供の「太平洋戦争史−真実なき軍国日本の崩壊」が新聞各紙に連載され、国民に広がっていきました。

1952年(昭和27年)サンフランシスコ講和条約が発効され日本は独立します。先のGHQ覚書は失効、「大東亜戦争」使用禁止は、やっと解放されたわけです。

Japanese_aircraft_carrier_Zuikaku_and_two_destroyers_under_attack

 

各呼称にある議論と、問題とする人の主張とは?

さて、上記のように歴史を振り返ってみると、政府の「大東亜戦争」の呼称決定→敗戦後GHQ「大東亜戦争」呼称の禁止と、「太平洋戦争」呼称の広がり→GHQ覚書の失効「大東亜戦争」使用禁止の解放…と、いう流れがありました。

それでは、現在はどのような呼称があり、その主張や議論などは、どんな状況にあるのでしょうか?

ひとつひとつ見ていきましょう。

 

太平洋戦争を良しとする人の主張

上記にもある通り「太平洋戦争」は、開戦時、海軍が提案したことがありました。

そして戦後、GHQが提示をしたものです。

60年代になって、日本国際政治学会は「太平洋戦争」を採用した理由を―

慎重に討議を重ねた結果、「支那事変」の代りに「日中戦争」を、「大東亜戦争」の代りに「太平洋戦争」という呼称を採用することを決めました。これは、日本側からの一方的呼称よりは、国家と国家との関係から把握する国際政治的呼称によるという見地に立ったもので、・・・実際にも学術上ではWar in the Pacific(太平洋戦争)の名称が国際的に行われています

(庄司潤一郎氏「日本における戦争呼称に関する問題の一考察」から)

こうしたいろいろな主張があります。

それに対し、

 

「太平洋戦争」を問題とする人の主張

①「大東亜戦争」のイデオロギーを拒否する立場から、「次善の方法」として「便宜上」やむを得ず「太平洋戦争」を使用している考え方があります。

②言葉は「真珠湾攻撃以降・終戦まで」を表現していますが、満州事変以降(1931年)、「支那事変」(1937年)以降、の戦争期間が含まれない、要は戦争期間が分裂していることを問題としています。

③世界史上では中南米で起きた別の戦争が存在しているため問題としています。

といった反論も存在しているのです。

 

「大東亜戦争」を良しとする人の主張

1941年、閣議(大本営政府連絡会議)決定がされていることは先に記しました。これを受け「合法性」がある日本の正式な呼称だ、という考え方のほか、

1963年、小説家の林房雄氏が「大東亜戦争肯定論」を主張―

ペリー来航以来の欧米列強の侵攻に対する、日本によるアジア解放のための「東亜百年戦争」であったとの歴史認識に基づき、「大東亜戦争」はその一環であり最後の集大成であると積極的に肯定した。その観点から、呼称についても、米国の理想は「白い太平洋」の実現で、一方日本のそれは「大東亜共栄圏」の建設であり、「アメリカ人が『太平洋戦争』と呼ぶのは結構だが、それを日本人が-特に学者諸君がそのまま用いるのは歴史の真実を知らぬ偽学者のやることだ。日本人は堂々と『大東亜戦争』と呼んだほうが科学的歴史的である」

(庄司潤一郎氏「日本における戦争呼称に関する問題の一考察」から)

こうした考え方などがあります。

それに対し、

 

「大東亜戦争」を問題とする人の主張

①戦争を美化し肯定する思想、それがイデオロギーということですが、そこを問題としています。

②「太平洋戦争」ほどではないですが、対象とする「支那事変」(1937年)が、1941年12月8日以降と考えられていることを問題としています。戦争期間が混乱するというのです。

考えさせられます。

 

「15年戦争」を良しとする人の主張

庄司潤一郎氏は―

第一に、日本のアジアに対する侵略が一貫した意図のもとに遂行された点、第二に、前の戦争が生み出した矛盾が新たな戦争を引き起こすというように、三つの戦争(「中国東北戦争」(満州事変)、「日中戦争」、「アジア・太平洋戦争」)が密接不可分である点、第三に、15年に及ぶ中国の抗日民族解放闘争が三つの戦争を連続させる最大の力となっていた点を強調する歴史認識が大きな特色であった

といった考え方などを示しています。

それに対し、

 

「15年戦争」を問題とする人の主張

①「15年戦争」とひとくくりにすると、長期間を連続してとらえてしまうため、戦争を回避もしくは抑止する様々な選択の可能性があったことを見落とす危険がある、という批判があります。

②東京裁判で提示された歴史認識を、「正義の裁き」、「文明の裁き」と見なし、それが正しいと、ほぼ追認した点を問題とする考え方があります。

③具体的に対象とする戦争期間は、満州事変から終戦までで、それは13年間余で、言葉が示す戦争期間とは異なっている、と批判する考え方があります。

 

「アジア・太平洋戦争」を良しとする人の主張

歴史学者の木坂順一郎氏の主張―

「太平洋戦争」、「大東亜戦争」二つの呼称を避け、

東アジアと東南アジアおよび太平洋を戦場とし、第二次世界大戦の一環としてたたかわれた戦争という意味と、日本が引き起こした無謀な侵略戦争への反省をこめて、この戦争を「アジア・太平洋戦争」と呼ぶことにしたのである

といった考え方などがあるようです。

それに対し、

 

「アジア・太平洋戦争」を問題とする人の主張

①対象とする戦争期間が、「15年戦争」と同じなのか、その一部分なのか、要は戦争期間が混乱しているという考え方です。

②「大東亜戦争」、「太平洋戦争」を否定するために、新たに作られた呼称であるため、「歴史的状況から離れた言葉になっている」「特定性に欠け、日本人の主体性が表現されていない」ことを問題とする考え方です。

簡単ではないですね。

 

「第二次世界大戦」を良しとする人の主張

 

政治学者の猪木正道氏は―

「大東亜戦争」は「偏狭で、独善的な軍国主義の臭い」があり、「太平洋戦争」は日中戦争が含まれないため、「あっさり第二次世界大戦と呼ぶのが一番よいだろう」としている。いずれも、「太平洋戦争」と「大東亜戦争」の対立を踏まえて、イデオロギー的に無価値な点と国際性が評価されている。「太平洋戦争」と「大東亜戦争」の対立を踏まえ、イデオロギーに関係なく、国際性が評価されている

(庄司潤一郎氏「日本における戦争呼称に関する問題の一考察」から)

といった考え方などがあるようです。

それに対し、

 

「第二次世界大戦」を問題とする人の主張

欧州の戦争のイメージが強く、日本が直接関係した戦争の特殊性(日本人の主体性)を論ずるには不適当であるという批判があります。

 

その他に挙がっている呼称にはどんなものがあるか?

「昭和大戦」、「昭和戦争」、「日米戦争」、「日英戦争」、「日英米戦争」、「極東戦争」、「東亜100年戦争」、「50年戦争」、「70年戦争」、「100年戦争」

などがありますが、

前述の5呼称と比べるとほとんど普及していないようです。

 

「太平洋戦争」?「大東亜戦争」?メディアなどでの使用頻度は?

庄司潤一郎氏が、新聞や雑誌などで、代表的な「太平洋戦争」、「大東亜戦争」、「15年戦争」、「アジア・太平洋戦争」4種類の呼称の使用頻度を分析しています。以下に表で示します。

ブログ1

※データベースは、『聞蔵Ⅱ』(『朝日新聞』、1985年以降の記事を収録)、『ヨミダス歴史館』(『読売新聞』、1986年以降)、『毎日Newsパック』(『毎日新聞』、1987年以降)、及び『中日新聞・東京新聞記事データベース』(『中日新聞』1987年以降、『東京新聞』1997年以降)の4種類で、2010(平成22)年3月時点

 

いずれの新聞も、圧倒的に「太平洋戦争」が多く、次いで「大東亜戦争」、「15年戦争」、「アジア・太平洋戦争」の順番になっています。

ブログ2※国会※国会図書館(NDL-OPAC)の書誌検索(2010年4月7日時点)

全体では、新聞と同様、「太平洋戦争」、「大東亜戦争」、「15年戦争」、「アジア・太平洋戦争」の順番ですが、時系列では、1969(昭和44)年までは「大東亜戦争」が「15年戦争」にまさっていましたが、1970年代から90年代半ばまではそれが逆転、近年再び「大東亜戦争」が再逆転した、という傾向が見えました。

 

定まらない戦争呼称をどう考えるか?

日本の戦争呼称は、様々なものが使用され、議論がされていますが、いまだ決着がついていません。

防衛研究所の庄司潤一郎氏は、

・戦争を正当化・肯定する人々は「大東亜戦争」
・相対的に中立的な「太平洋戦争」
・アジアに対する侵略戦争と見なす「15年戦争」及び「アジア・太平洋戦争」

と使用者の傾向を示しています。

さらには、いずれの呼称も、世界に通用する国際性がない、「太平洋戦争」でさえ、世界史的には中南米の戦争と誤解される問題点を抱えている。一方、国際性があり、かつ無価値の「第二次世界大戦」は、日本の戦争を語る場合、時間的・地域的問題点などがある

と記し、各呼称には一長一短があるとしています。

さまざまな呼称の主張や議論があるものですね。

みなさんは、いかがお考えでしょうか?

 

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