2015.04.29 選挙

もう投票を義務化するしかない?!有権者にとって本当にそれでいいのか?

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いつまでも上がらない投票率、今や半分近くまで。

2014年12月に行われた衆議院総選挙の投票率は60%を下回り、約50%と過去最低を記録しています。

年代別投票率

投票に行かない人は、自分一人が行っても意味がないとか、自分には関係ない、あるいは政治は分からないと言います。

しかし、投票率が低下すると全体の投票数が下がります、その結果として、ある程度固定された組織票が大きな力を持つことになってしまいます。

多くの国民の意思とは関係なく、組織力、集票力だけで当落が決まってしまうという結果になるのです。

それはつまり、組織票を持っている団体・組織に都合の良い政策が優先して行われてしまうのです。

このような状況において、最近、日本でも「義務投票制」を採用すべきではないか、という声がちらほらと聞かれるようになってきました。

 

「義務投票制」を導入するとどうなる?

「義務投票制」とは、簡単に言えば法律で投票に行くことを義務づける制度で、投票に行かなかった場合には、なんらかの罰則を設けるケースもあります。

選挙を完全義務化にすることで、現状の低投票率を打開し投票率の底上げが見込めます。

実は、投票率の低下の問題は、いくつかの先進国で共通の問題になっているのです。

民主主義が盛んであるアメリカ合衆国でも、投票率は50~60%前後で推移しています。

その一方で、「義務投票制」を採用している国では毎回70%以上の高い投票率を維持しています。

世界の30数カ国が導入していて、日本でも一部の政治家や有識者から導入の是非をめぐってたびたび議論が巻き起こります。

例えば、義務投票制を導入しているモデル国としては、オーストラリアが例に出される場合が多いです。

オーストラリアでは投票に行かないと原則として20豪ドルが科され、さらにその支払いも拒んで裁判になると50豪ドルが請求されます。

ですから、選挙での投票率は毎回90%以上になってるのです。

その他の、厳しい罰則の無い義務投票制を導入している国では、投票率70%程度で推移しているので、オーストラリアの投票率の高さが際立っていることがわかるでしょう。

義務投票制を採用して、投票率が上がれば、一般の有権者の自主的判断による票が選挙結果に強い影響を与えることになります。

組織票などの固定票よりも浮動票の力が強くなるので、候補者は組織力にだけ頼っているわけにはいかず、明確な政策を提示して、一般的な支持を得なければなりません。

それに、今まで投票に行かなかった人達も、強制とはいえ政治に参加することになるので、おのずと選挙結果やその後の政治にも関心が出てきます。

よって、政治家も当選後の動向を国民から注目されることとなり、いい加減な政策は実行出来なくなります。

 

義務投票制度を導入する場合のメリット

さらに、義務投票制を導入した場合のメリットを考えてみましょう。

  1. 高い投票率を達成することができ、多数者による意思決定という民主主義の原則に沿って政治を行うことができること
  2. 高い投票率で当選した政治家や、成立した政府には高い民主的な正統性が確保されること
  3. 強制されることによって、普段は政治に興味・関心の無い人も投票に行かなければならなくなり、必然的に政治への興味・関心が高まること
  4. 投票率の増加によって組織票の重要性が低下し、企業や団体と政治家・政党との繋がりが薄くなること

 

それに加え、選挙における投票が、もともと国民の権利であるばかりではなく義務(公務)でもあると考えるならば、義務投票制によって国民がこの義務を確実に果たすことができるともいえます。

これらのメリットの中でも特に重要なのは3番です。

義務投票制により、政治に無関心な人であっても投票はしなければならないことになるので、選挙の際には、ある程度の関心と知識とを持たざるを得なくなります。

有権者としての資質や自覚の向上が期待でき、それに現在の選挙制度の下では、多くは支持する政党を持つようになるはずです。

そうなれば、非常に極端な主張や偏った主張が支持を集めるといった可能性は低くなります。

最初に言ったように、投票率が低いことにより多くの国民の意思とは関係なく組織力・集票力だけで当落が決まってしまうということは非常に大きな問題であると思われます。

そして、選挙権があるという事があまりにも当たり前で、有権者自身がその意義を軽く考えすぎていること、何気なしに棄権をしたつもりが、棄権をすることで結果的に逆の意思表示をしてしまっているともいえ、ある意味棄権者が当選者を決めているといったいびつな現状になっています。

それによって、組織票を持っている団体・組織に都合の良い政策がいいように行われてしまう。

このような、既得権益に有利な日本の政治の現状を打開するため、義務投票制を採用することは、とても有効な手段であると考えられます。

 

義務投票制度を導入した場合のデメリット

一見すると、良いこと尽くめの義務投票制ですが、もちろんデメリットもあります。

では、反対に義務投票制を導入した場合のデメリットについても考えてみましょう。

  1. 「投票の自由」には「投票しない自由」をも含むものであり、投票を法律上の義務として強制する行為は、憲法の保障する権利の侵害であること
  2. 政治的に無関心な人を投票所へ強制的に行かせたところで、その多くは政治に関心や知識を持つことはなく白票などの無効票が多くなり、大して意味を持たないこと
  3. 政治に無関心な有権者が何も考えずに投票することが「政治的な意思表示」であるということはできないこと
  4. 投票しなかった者に対する調査や罰則の適用には莫大な経費がかかり、人員も必要とされるため選挙のコストが増すこと

 

まず、単純な問題として、義務投票制を導入すると莫大な経費がかかる、ということが言えます。

投票しなかった人に罰則を科すとなれば、投票しなかった人、一人一人に対して罰則の手続きなどをしなければなりません。

その手間や、そのための費用は膨大なものになります。

さらに言えば、全ての有権者が選挙に投票するようことになると、立候補者がその歓心を買おうとして「人気投票」的になる可能性が高くなります。

そこで、政治家は当選するために「政策」を練るよりも「名を売る」ことに奔走し、肝心の政策がおろそかになってしまいます。

実際に、北朝鮮などのように民主主義を装うために義務選挙制を導入しているという国もあり、投票率が高いからと言って必ず民主主義的とは言えません。

そのように民意を隠れ蓑にするような場合は、投票率が高ければその国民的人気を背景にしてファシズムが台頭してきたとき、それに正統性を与えることになってしまうという危険をはらんでいます。

ただ、この中で一番問題となるのは、憲法の保障する権利を侵害するのではないかという点です。

 

義務投票制度が果たして憲法上認められるのか

「選挙権は権利ではないのか、なぜ投票しないと罰則を科されるのか」と義務投票制に疑問に思う方もいるでしょう。

また、さらに言えば「投票を強制する事は、投票しない自由を侵害し、思想良心の自由に反するのではないか」と疑問を抱くかもしれません。

そもそも、選挙権は被選挙権・国民投票権とともに憲法15条にいう「参政権」のひとつで、主権者としての国民が政治に参加することを保障する権利です。

国民主権を基本原理とするわが国の憲法においては、参政権は民主主義を実現するための必要不可欠の権利といえるでしょう。

そして、憲法の学説上、選挙権の行使は単なる権利であるだけでなく「公務」(義務)でもあるという考え方が有力です。

つまり、選挙権の行使は国民が国民代表を選択するための権利ではありますが、一方で、国政を担う代表を選択するという点で「公務」としての性格も有するとするとも考えられるわけです。

このように考えると、純粋な権利よりもその公務としての性質から、選挙権に対する制約がある程度許されることになります。

たとえば、選挙犯罪人の選挙権を停止して選挙権を制限することが正当化されるわけです。

したがって、投票することを義務として強制することは必ずしも違憲ではないということになります。

しかし、民主主義における選挙の基本原則として、「普通選挙」、「平等選挙」、「自由選挙」、「秘密選挙」があります。

これらそれぞれが、自由で公正な選挙権の行使を保障する重要な原則です。

投票を強制し罰則を設けると自由意志による民主的な選挙では無くなります。

「自由選挙」には棄権する自由も想定されるからです。

ですので、他の人権と同じく、選挙権にも「投票する自由」に対応する「投票しない自由」「投票を強制されない自由」があると考えられています。

したがって、義務投票制はその自由選挙の原則との関係で問題があるといえます。

投票するかどうかはやはり個人の自覚に待つべきもので、罰則などで強制することは違法である疑いが強いと考えられます。

 

現状ではデメリットが大きい義務投票制

わが国では、20歳になると当たり前に選挙権が与えられます。

その時、自分が選挙に行けることを意識する人も少なくありません。

ただ、現実問題として選挙の投票に行かず、いわば政治に白紙委任を託してしまっている人の方が多いというのが実態です。

毎回選挙が開催されるたびに投票率の低さが問題となり、特定少数の人間の意志決定で選挙結果が左右される「組織票」の影響が大きいものとなっています。

したがって、罰則については賛否が別れるでしょうが、「投票に行くことを法律で義務化する義務投票制を導入するべきだ」という議論が出てくるのも、もっともなことです。

ですが、選挙権を義務化すべきかを議論をする場合に注意したいのは、投票率の向上は公正な民主主義を実現する上での手段であって、目的ではないということです。

投票率を上げる真の狙いは「組織票」の選挙に与える影響を弱めるという所にあることを忘れてはいけないのです。

そう考えると、現状では、義務投票制を導入することは、デメリットの方が大きいと思われます。

 

義務投票制にする前に、投票率向上のためにするべきことはもっとある!

特に、義務投票制によって罰則などを設けて投票の強制をすることは、違憲の疑いがあると考えられること最大のデメリットです。

であるならば、義務投票制を導入するよりも、有権者が普段から政治的関心を持って生活すること、そのための知識を身につけさせること、情報を察知し正しく取捨選択できるようになること、などなど、個々人の意識向上とその為の教育が、日本の政治を良くすることでは無いかと思います。

それに、ただ投票率をあげたいということであれば、投票しやすい環境づくりをすればいいのです。

投票が手軽にできようになれば、投票率はおのずと上がると思われます。

近所のコンビニ、スーパー、ファミリーレストランなど、人が自然と集まるところに投票所があればどれだけ便利か容易に想像が付きます。

そういった、すぐにできるところから選挙制度というものを改善していくのが、投票率の向上には最も効果的であると思われます。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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