2015.03.19 鉄道

ホームドアの設置がなかなか進まない「3つの理由」

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ホームドア設置がなぜ進まないのか?

ホームドアは利用者の安全確保や交通バリアフリーの推進に貢献し、人身事故(転落事故)が減ることによって定時運行や省力化にも役立ちます。

現在、国土交通省でもホームドア等の普及を促進させようと、様々な施策を行っています。

しかしながら、ホームドアが設置された駅の数は思ったようには増えていないという現実があります。

 

ホームドアの導入を阻む3つの理由

その理由としては、

  1. 車両のドア位置が異なること
  2. 車両を正確に停車させることが必要であること
  3. ホーム自体の改造が必要であるなどホームドアへの制約が厳しいこと

があります。

(1)について、鉄道では、一両の長さやドアの数・広さ・位置などが異なる多種多様な車両が運行されています。

乗り降りの位置が固定されている既存のホームドアでは、さまざまなドア位置への対応が不可能です。

現在、東京の各路線は他社の路線と相互直通運転するために様々なドア車が運用・運行されていて、ドアの位置が完全には合わないようになっています。

現状でホームドアを設置するならば、相互直通運転という利用者にとても便利なサービスを中止しないといけなくなってしまいます。

■ドア数の違い(京急羽田空港駅)

また(2)について、ホームドアを設置した場合には、列車をホームドアの前に正確に停止させる必要があります。

オーバーラン等をなくすため、運転士にとっては通常の約3倍の精度を要求されるともいわれていて、かなり高い停止精度が必要とされます。

■停止位置の修正(東京メトロ副都心線・オーバーラン)

(3)についても、ホームドアを設置するためには、それを支える構造物がホーム側に必要です。

新設駅のホームならば最初からホームドアの設置を考えて建設することができますが、既存駅のホームでは当然そのような追加までは余裕をみていない場合がほとんどです。

このような場合は、設置スペース等を確保したり、土台を補強したりする工事が行われることになりますが、ホームや駅舎を工事するとなると運行に支障をきたし、利用者に不便がかかるので、鉄道会社としてもなるべく敬遠したい理由となっています。

■ホームドア設置工事の様子(小田急新宿線)

このように、それぞれの理由の背後には、現在まで長い時間をかけて様々な利便性を上げるためのサービスを発達させてきた、日本の鉄道サービスの本質に関わる問題が存在しているのです。

 

ホームドアの設置にはとてもお金がかかる

さらに重要な点として、ホームドアの導入における問題に共通することは、とてもお金がかかるということです。

はじめから車両が統一されていて、定位置停止装置もあり、比較的関連工事が少なかった東京メトロ丸ノ内線でも、約100億円(28駅)かかったと言われています。

それに対して、11両編成中2両を入替え、定位置停止装置を新たに付け、土台や基礎の古いホームも多数残るJR山手線では、約500億円(29駅)ものお金がかかると見込まれています。

これらホームドアの整備費用は、日本の鉄道では公共交通といえども独立採算が原則なので、鉄道各社が経営努力の中でなんとかしていかなければならないのです。

それに加え、ホームドアを設置すれば収入が増えるというわけではないというのも確かなのです。

 

ホームドアの設置の費用は誰が負担すべきなのか

そこで、鉄道各社ともホームドアの整備に伴って、ワンマン運転を導入し人件費を削減することで整備コストを回収するなど、様々な自主的な努力によってなんとかここまで整備を進めてきたというのが実情です。

最近、ようやく補助金の適用が可能になったものの、総事業費の一部に過ぎず鉄道事業者の負担がゼロになるわけではなく、また、財政の厳しい地方自治体では腰も重い状況です。

また、ホームドアを設置する場合の税金の投入や運賃値上げによる利用者の負担増については「負担してまで整備する必要は無い」と感じる人もいるでしょう。

これらはどうやって人身事故を防ぐかという「鉄道の安全」に対する社会全体としての枠組みの問題でもあり、今後これまで以上のペースで多くの駅にホームドアの整備を進めていくためには、あらためて誰がその費用を負担していくかという議論と社会的な合意形成を急ぐ必要があります。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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