2015.12.20 選挙

投票率向上のため望まれる「ネット投票」だが、その実現を不可能にしている「3つの理由」とは?

7
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

投票率向上のため望まれる「ネット投票」、だが、実現までの道は遠く険しい!

2014年12月に行われた衆議院選挙は、小選挙区での投票率が52.66%と戦後最低を記録したという問題を残しました。

とりわけ、若い世代の投票率の低さが指摘されています。
投票率の低下

そこで、若者世代の低い投票率を改善するため選挙における「ネット投票」(オンライン投票)を望む声が多くあがっています。

近年、ネット上での選挙活動が一部解禁され、候補者はSNSや動画サイトなどを通じて自らをアピールすることができるようになりました。

そして、若者を中心に候補者のSNS上の発言の注目度が上がり、ネットの選挙速報・当落の予想特集、政治家による討論番組などは盛り上がっていたりもします。

スマホやパソコンのSNSなどで受け取った情報を吟味し、そのままオンライン上で投票が実現できれば、手間も少なく投票率は上昇するとも言われています。

そのほかにも、開票時間の大幅な短縮や人件費の削減、疑問票や無効票が出ない、障碍のある方のアシストも簡単にできる、さらには、選挙を運営・管理する側の効率化にも貢献するなど、様々なメリットがありそうです。

しかし、選挙のネット投票を実現するには重大な問題点があり、現状では不可能といってよいほど、その実現は極めて困難です。

その理由としては主に以下の3つが挙げられます。

 

① 個人の認証やクラッキングなど、セキュリティの問題

まず懸念されるのは、セキュリティの問題です。

選挙は単に「票を入れる」というだけなので、自宅のパソコンや外出先からスマホで投票できたら便利と考えるかもしれません。

しかし、選挙は確定申告の電子申請や、ネットでのアンケート投票のように専用サイトにアクセスして簡単に処理できると考えるのは早計です。

実際にネット投票を行うには、有権者一人一人にアカウントとパスワードを発行して、専用のサイトにアクセスしてもらい投票をするといった流れになるでしょう。

その際、ネット上のサーバーから誰が誰に投票したかというデータを抜き取られたり、あるいは、投票そのものを操作できるとしたらどうなるでしょう。

たとえ、強固なセキュリティを組んだとしても、侵入さえできてしまえば日本の政治を操ることも可能だとしたら、世界中から狙われるでしょう。

また、選挙そのものの妨害のため、システム破壊(クラッキング)などの標的にされる恐れもあります。

そういった悪意のある侵入者によってデジタル記録を改ざんされる危険性は大いにあり得ることです。

 

② 不正行為の監視が困難

公正な選挙が行われるためには、投票は厳格に行われなければなりません。

有権者が他人からの干渉を受けずに公正な投票を行うには選挙を管理する機関が不可欠です。

実際、投票所に行くと選挙管理委員会から派遣された受付係が名簿をチェックして、発券機から投票用紙を手渡したり、投票状況を監視しています。

これらは不正な投票を防ぐ上で重要な役割を果たしています。

現在の選挙においては、公正な投票をするために、こうした公的な機関の人々によって常に厳しく管理されています。

しかし、ネット投票によって自宅での投票ということであれば、家族の誰かが勝手にまとめて投票できてしまう可能性が出てきます。

また、職場やネットカフェ等で投票する場合、他の人に投票用のパスワードを盗み見られて特定の候補者に投票される恐れすらあるのです。

ネットゲームで横行しているアカウント販売やアイテムの不正取引のような手口をまねて、オークションサイトだけでなく裏サイトや闇市場での現金取引が行われれば、票をお金で買うことができてしまうとうことも考えられます。

さらに、昨今のオンラインバンキングの口座情報を盗み出す手口と同様に、パスワードを狙ったフィッシング詐欺やウイルスによる不正プログラムへの感染も考えられます。

それらによって、コンピューターの遠隔操作でもされようものなら、なおさら危険です。

このように、これまでにインターネット上で起きている事件などを考えれば、安全性の上でも困難な面が数多く浮かび上がってきます。

 

③ かけるコストに対してメリットが見合わない

国会議員の多くは年配の方であるためインターネットのことがよくわからず、さらにいえば、それら平均年齢55歳前後といわれる国会議員の中でも、とくに力をもっている政治家は、ほぼ60歳を越えている世代の人たちです。

そのため、有権者がネット投票を望んでも、ブログもTwitterもYouTubeも触れたことがなくわけがわからないというのでは、その推進にあまり積極的ではないというのも頷けます。

また、有権者の側も同様で、スマホの普及率が50%を超えたと言われてますが、年配の方にとってはまだまだ身近なものではないことは確かです。

そうなると、仮に選挙がネット投票に切り替わったとして、若い世代の投票率が上がっても、年配の方の投票率が逆に下がってしまう可能性もあります。

したがって、ネット投票が始まっても、従来の紙の投票を完全に止めるわけにもいかないので、二重にコストがかかることになってしまいます。

 

現状ではネット投票のデメリットが大きい

たしかに、有権者にとってはパソコンやスマホで投票ができれば便利と思う人も多いでしょう。

しかし、その便利さの一方で不正行為が行われる危険性も増加します。

選挙のネット投票に必要な条件としては、投票に使う端末から確実に有権者一人一人を識別し、かつ不正がないよう監視する技術で、それがなければ実現は難しいでしょう。

技術の進歩が進めば、いずれネット投票が導入されることもあるでしょう。

しかし、メリットよりもデメリットが大きい現時点では急いで導入する必要は無いといわざるを得ません。

 

最も困難なのは「秘密投票」の維持

とはいえ、一番の課題は「投票の秘密」の確保です。

公職選挙法第46条第4項には「投票用紙には、選挙人の氏名を記載してはならない」と記されています。

これは「秘密投票主義」と呼ばれ、公正な選挙のためにはとても重要なものです。

もし、投票の秘密が守られなければ、たやすく、権力やお金の力で投票結果が左右されてしまいます。

現在の選挙での投票方式なら、投票用紙に名前を書く際、それを見ている人間はいません。

したがって、たとえ職場や上司から「○○候補に投票するように」と言われたとしても、だれがだれに投票したのかはわからないので、自分の意志で自由に投票することが可能になっています。

しかし、スマホ・携帯からネット投票可能になったとき、投票の秘密を守るためにはどうすればいいのでしょう。

非常に難しい問題だと思われます。

 

 投票所に足を運んで選挙に参加しよう

民主主義の土台を築いているのは「選挙の信頼性」です。その選挙においては公正・公平な投票制度の確保が最も大切なことなのです。

今回は選挙におけるネットがなかなか実現できない理由をあげてみましたが、やはり自ら投票所に足を運び選挙に参加することこそが大切であることには変わりません。

とはいえ、選挙の投票率向上のためには、有権者の利便性を向上させることが最も有効な方策であることはたしかです。

したがって、今後も様々な角度から、実際に有権者が投票所に足を運ぶ機会を増やすような施策を考えていく必要があります。

 

※希望日本研究所 第8研究室

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

選挙関連記事

選挙関連記事をすべて見る