2015.05.07 選挙

18歳選挙権に必要な主権者教育。子どもたちの「当事者性」を育むには?

7
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本のモデル!?イギリスで導入されたシティズンシップ教育とは

前回、主権者教育を授業として展開する参考事例として、近年注目を集めているのがイギリスを中心に発展してきた「シティズンシップ教育」というお話しをしました。

シティズンシップとは、教育学者の小玉重夫氏によると「ある一つの政治体制を構成する構成員であること」と定義され、日本では「公民的資質(公民性)」と考えられています。

イギリス②

 

ブレア政権時に「シティズンシップ教育独立委員会」の議長を務めた政治学者のクリックがまとめた報告書によると、シティズンシップ教育では、「生徒たちは、教室の中だけでなく教室を出て、また先生たちと議論するだけでなく、生徒同士お互いに議論し合って、自信を身に付け、社会的および道徳的に責任のある行為」を学びます。

その根底には、「市民の自治と参加による権利と責任」という理念があり、投票行動を含め主権者として政治や社会に参画していく意識と知識、責任感などを体得するための新しい学校教育の考え方とされています。

すなわち、シティズンシップ教育とは「主権者として社会の中での権利と公共を担う義務および責任を意識させる教育」であり、まさに、18歳選挙権で議論になっている「主権者教育」そのものと言えるでしょう。

 

神奈川県は2010年度から「シティズンシップ教育」を導入!

このシティズンシップ教育は日本でも広がりつつあり、その先進事例として挙げられるのが神奈川県です。神奈川県では、2010年度から県内の全県立高校で県独自の「シティズンシップ教育」を導入しています。

教室②

具体的な内容としては、「政治参加教育」「司法参加教育」「消費者教育」「道徳教育」を併せた4本柱です。

この中で「司法参加教育」については、2009年度から開始された「裁判員制度」に合わせて設定されたもので、類似の事例は他の自治体でも見受けられますが、神奈川県のシティズンシップ教育で特筆するべき取り組みは「政治参加教育」です。

「政治参加教育」に関しては、他の3つに先駆けて2010年度から全県立高校で導入され、2010年7月と2013年7月の参議院議員選挙において、生徒が実際の政党マニフェストの比較検討などを行う「模擬投票」が実施されました。

この「模擬投票」は、参議院で3年に1度改選が行われる関係で、県立高校に通う高校生が在校中に一度体験できるもので、画期的な試みです。

 

主権者教育は模擬投票だけで「当事者性」を育めるのか?

神奈川県が実施したシティズンシップ教育、事実上の「主権者教育」では、特に「模擬投票」は生徒にとって概ね好評で、子どもたちが政治に関心を持つ一つの契機になっていることは間違いないでしょう。しかし、同時に、看過できない課題が2つあります。

模擬投票③

第一に、模擬投票以外の具体的な取り組みが見えづらいこと、とりわけ「日常的な政治参加」をどのように推進すれば良いのか、学校現場では試行錯誤が続いているということです。

すなわち、参院選における模擬投票は3年に1度しかできず、その他の選挙での模擬投票を検討しても、例えば衆議院議員選挙は4年間の任期の中でいつ実施されるか予測がつかず、統一地方選挙は年度始めの4月に行われるため、学校側が十分な準備ができない関係で、いずれも実施が難しいという現状があります。

そのため、神奈川県での模擬投票は現段階では参院選でしか適用できず、それも3年に1度以外は実施できない「一過性」という問題がある点です。

第二の課題は、「模擬投票」では、子どもたちは選挙に一票を投じているようなシュミレーション的な体験をすることはできても、社会の様々な問題を「他人事」ではなく「自分事」として引き受けるという「当事者性」を育む実体験をするには十分ではない、という点です。

では、こうした2点を克服するには一体どうすればよいのでしょうか?

次回は海外の事例も紹介しながら、主権者教育のあり方を考えていきたいと思います。

 

※「ACTIONなう!」実行委員会

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

選挙関連記事

選挙関連記事をすべて見る