2015.12.31 文化芸術振興

21世紀の新しい高齢社会と文化芸術について

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文化芸術と高齢社会のすごいコラボレーション

文化芸術の力で、日本の高齢社会の課題解決に向けての取り組むは、今後開発されていかなければなりません。

古代から長い歴史の中で、日本の文化芸術はシルクロードをへて世界中で注目されてきました。

その日本の文化芸術の力を、社会や国民のために十分に生かさなければいけません。

それにはまず、わたし達自身が日本の文化芸術を保護し育てていきましょう!

日本人のアイデンティティである文化芸術は、地域や国だけでなく日本人一人一人が意識して、次世代に必ず受け継いでいかなければなりませんから。

 

「睡蓮 」クロード・モネ作 1906年 シカゴ美術館

「睡蓮 」クロード・モネ作1906 シカゴ美術館

日本の文化芸術をこよなく愛し、芸術家として数々の名画を残したフランス人のクロード・モネは1926年86歳で生涯を閉じる死の直前まで、「睡蓮」の大壁画に筆を入れ製作し続けたそうです。

晩年のモネは、ほとんどの来客を断りましたが、日本人の来客は歓迎していました。

若い頃からの日本文化芸術へ傾倒し、モネの作品には構図、モチーフなど日本美術の影響が見られます。

日本の文化芸術は世界に大きな影響を与え続けています。

 

 

 

19世紀には歌川広重の浮世絵をゴッホが模写をしています。

歌川広重の浮世絵(左)と、ゴッホによる模写(右) 1887年

歌川広重の浮世絵(左)と、ゴッホによる模写(右) 1887年

そして、肖像画の背景に浮世絵を描いています。(下)

ゴッホ『タンギー爺さん』(1887 – 1888年) 後ろに浮世絵が描かれている

ゴッホ『タンギー爺さん』(1887 – 1888年) 後ろに浮世絵が描かれている

ピエール=オーギュスト・ルノワールは「うちわを持つ少女」を描いています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール『うちわを持つ少女』 1881年

ピエール=オーギュスト・ルノワール『うちわを持つ少女』 1881年

線で構成されている日本の浮世絵は、空間と輪郭線がくっきりと分かれ、2次元的で立体感はほとんどありません。

日本の芸術文化は19世紀のジャポニズム(日本趣味)をつくりだし、こうした特徴はスタイルをつくり、アール・ヌーボーに影響を与えました。

浮世絵の色彩構成も含め現代アートにおける抽象表現の誕生にも大きく貢献しました。

浮世絵の特徴の直線と曲線による表現方法は、その後、世界中の絵画やポスター、グラフィックで当たり前のように見られます。

19世紀のジャポニスムによって、家具、衣料や宝石に到るまであらゆる工芸品のグラフィックデザインに、日本的な要素が取り入れられるようになりました。

ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの絵画『La Princesse du Pay de la Porcelaine』 1863 – 1864年 Peacock Room, designed by Thomas Jeckyll (1873-76), murals by James McNeill Whistler (1876–77), Freer Gallery, Washington, D.C.

ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの絵画『La Princesse du Pay de la Porcelaine』 1863 – 1864年 Peacock Room, designed by Thomas Jeckyll (1873-76), murals by James McNeill Whistler (1876–77), Freer Gallery, Washington, D.C.

 

少子高齢化社会の問題点を文化芸術で解決!

2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、国や民間でのあらゆる人が日本の芸術文化に親しめる環境づくりが始まっています。

日本の文化芸術機関の社会的責任、役割や可能性を再考する動きも広まっています。

こうした中で、少子高齢社会に向けた文化芸術の取り組みへの関心が生まれています。

人は誰でも皆年を取り、それに伴い身体が不自由になり、記憶や認知力が弱まっていきます。

高齢者の多い社会で、どうやったら課題を解決できるのか?!

日本は「平均寿命、高齢者数、高齢化の進行」という3点において、世界一の高齢化社会です。

2020年までに人口の約30%が65歳以上になると予想されています。

(総務省統計局 平成25年9月発表資料)

少子高齢化社会とは、15歳以下の若い世代人口の割合が減少し、65歳以上の老年人口の割合が高い社会ですが、「高齢社会」の分類は一般的には、高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)よって定義されます。

その内訳は、高齢化率7−14%は高齢化社会、14−21%で高齢社会、21%以上で超高齢社会となっています。

日本では、すでに8年前に超高齢社会に突入しました。

  • 1970年調査(7.1%)で高齢化社会
  • 1955年調査(14.5%)で高齢社会
  • 2007年(21.5%)に超高齢社会

2014年の日本の総人口は1億2708万3千人。

年齢別割合は

  • 0~14歳人口は 1623万3千人
  • 15~64歳人口は 7785万人
  • 65歳以上人口は 3300万人

総人口は年々減少しているのに、前年度と比べ、65歳以上の人口が110万2千人増加しています。(総務省統計局 平成27年3月発表資料)

高齢社会では、医療費の増加、生産人口の減少、 介護者不足、老人の孤立等様々な課題が山積みです。

ただし、

長寿が悪いのではない!

長寿で幸せな人生をおくれれば素晴しいです。

またこれから年を取っても希望を持ち続けられる社会ならば、なおいいです。

これは理想ではありません、実現できることです。

高齢社会の山積みの課題を1つ1つ、文化芸術の力で解決していく。

 

この動きは欧米でも、国や地方自治体に限らず民間主導でいろいろな動きが生まれてきています。

そして成功し、さらに進歩させているのがイギリスです。

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エリザベス2世(英国)

 

高齢社会への文化芸術活動、英国3つの事例

英国も日本と同様、年々進行していく少子高齢化が深刻な問題になっています。

少子高齢化問題に対しての政策として、英国の伝統的な福祉国家モデルを弱め、パートナーシップモデルの方向に進めています。

そして、近年英国では、文化芸術団体による高齢社会の抱える課題に対する様々な取り組みが行われています。

特徴的な点は、英国の文化芸術機関の課題に対する活動の効果測定も第3機関により行われているところです。

大学・研究機関が効果測定し、次の活動や研究に役立てられています。

さらに医療・福祉機関との連携も行われています。

こうした英国の文化芸術団体の高齢社会の問題解決に向けた活動は大学・研究機関、医療・福祉機関とのコラボレーションで実証を繰り返しながら発展し、その活動を助成機関が支援しています。

日本は、英国のように高齢者との文化芸術機関とのダイナミックな連携システムがまだできていません。

効果を考えると、連携システムは急ぎつくられるべきです。

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BIG BEN

 

 

英国の事例1:アーツ・フォー・ヘルス・コーンウォール・アンド・アイル・オブ・シリー (Arts for Health Cornwall and Isles of Scilly)

2001年設立。

英国有数の芸術・保健機関として「クリエイティビティ」を駆使し、 健康と福祉の向上に貢献しています。

アーティストやボランティアと協力して、コーンウォー ルとシリー諸島の人々に芸術を届けるプロジェクトを行ったり、高齢者や認知症の人々の 健康と福祉を、創造力を通して向上させました。

病院や介護用住宅、個人宅に至 るまで、数多くの刺激的なプロジェクトを通じて、高齢者との活動を進化・ 発展させ続けています。

2009年、高齢者介護が行われている場所に芸術を結びつけた活動が評価され「ガーディアン公共サービス・アワード」を受賞しました。

芸術を通して、クリエイティブなプロジェクトを企画し健康と福祉の向上をはかっています。

 

2010年に「グラクソ・スミスクライン/キングズ・ファンド・インパクト・アワード」を受賞。

「リーダーシップを有するダイナミックな機関であり、特に要介護高齢者、認知症患者、ホームレスの人々との活動は革新的である」と選考委員に評されました。

 

2013年、革新的で熟慮されたアプローチが評価され「アーツ・アンド・ヘルス・サウスウェスト・アワード」を受賞しました。

この活動は2011年から2012年までの1年間「年齢と大望を祝福すること」をテーマとし、コーンウォール全域の高齢者をあらゆる分野の創造的活動に参加させました。

主な内容として

  • ビジュアルアート
  • 文芸ワークショップ
  • 在宅介護を受ける人とのマンツーマンの活動
  • 50歳以上の人のためのダンス・カンパニー

1年間の集大成はペンザンスのエクスチェンジ・ギャラリーで2日間にわたって開催されたイベントで、コーンウォール在住の 高齢者の才能を披露しました。

 

英国の事例2:ナショナル・ミュージアムズ・リバプール (National Museums Liverpool)

ナショナル・ミュージアムズ・リバプールはノースウエスト最大の芸術文化機関で、以下の8つの文化芸術施設で構成されています。

国際奴隷博物館、レディ・リーヴァー美術館、マージーサイド海洋博物館、リバプール博物館、サドリー・ハウス、ボーダー・フオース・ナショナル・ミュージアム、ウォーカー・アート・ギャラリー、ワールド・ミュージアム

これらの文化施設の収蔵コレクションは、印象派から自然史の標本、タイタニッ ク号の遺留品まで、ヨーロッパの中でも非常に重要で多様性に富んだものと言われています。

来館者は毎年世界中から270万人以上で、市民から資金を得ている機関として社会的に公正であることを目指し、英国内でロンドン以外に拠点を置く唯一のナショナル美術館です。

2012年、「ハウス・オブ・メモリーズ」という自身の豊富な所蔵コレクションを活用したトレーニングプログラムがスタートしました。

文化芸術、医療・介護機関と介護者がコミュニティとして協力し、認知症への理解やコミュニケーションの仕方を学ぶ英国でも初めての試みです。

この革新的プログラムは、認知症を患う人々とその介護者や家族を支援することを目指し、認知症に対する正しい理解と思いやり、介護において尊厳、敬意の必要性とその価値への理解を深め健康と福祉の向上を促します。

「ハウス・オブ・メモリーズ」の主な3つのアクティビティ

  1. トレーニング・デー (The Training Day):演劇を通して認知症と診断された人々と家族の困難を学ぶ。
  2. スーツケース・オブ・メモリーズ (Suitcase of Memories):記憶、思い出、写真等を利用し、五感を刺激しながら会話を促す
  3. マイ・ハウス・オブ・メモリーズ (My House of Memories):世界初の試み、認知症を患う人々とのデジタル恊働制作。 iPodやその他の端末を利用し、英国全域に関する記憶記憶と関連のあるコンテンツにアクセス可能にし、日々の思い出や行事について語り合う。 アプリをパーソナライズし自分だけのデジタル・メモリー・ツリーにアイテム保存できます。

老化による認知症の人口が増加する中、認知症を理解しコミュニケーションの仕方をクリエイティブなやり方で学ぶ活動の可能性は非常に大きいです。

 

英国の事例3:ウエスト・ヨークシャー・プレイハウス (West Yorkshire Playhouse)

この文化施設は、高齢者が創造性を最大限発揮できる場を提供している英国最大規模を誇る劇場です。

芸術的表現、クリエイティブなコミュニケーションを通して高齢者や認知症の人々へのサポートし、その取り組みは国際的に高く評価されています。

ウエスト・ヨークシャー・プレイハウスは、コミュニティ と教育の専門家からなる芸術開発チームをつくり、さまざまな年齢層、経歴の人が「芸術に触れる機会」を創出し、劇場は「学びの場」としてもユニークに発展を続けています。

難民や亡命者と活動をしたり、特殊教育の一環で学習障害のある人のための幅広いプログラムも提供しています。

また、一般の劇場作品を認知症の人々向けに「翻案する手法」も模索している。

ヘイディズ (Heydays) は55歳以上対象にしたウィークリーで行われるクリエイティブ・プログラムで25年間続いています。

またスタッフ向けトレーニングを実施し、高齢者・認知症の人々のストーリーを積極的に共有していくことで、認知症フレンドリーな劇場として絶え間ない進化を続けています。

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Yorkshire

 

 高齢社会と文化芸術、恐れずにコラボを!

高齢者や認知症の人への理解は、劇場やクリエイティブな活動によって深まるということがイギリスで証明されています。

日本でも文化芸術の持つ可能性を活用し、高齢者との新しい関係づくりへの期待が高まってきています。

文化芸術による日本の高齢化社会の課題解決に向けての取り組みは、今後もっと開発されていかなければなりません。

また新たな独自の日本人の文化にあった活動も試していき、その効果に基づきプロジェクトを日本でも企画していくべきです。

世界最大の超高齢社会を向かえてしまった日本に大切なのは、文化芸術の持つ可能性を正しく理解し、積極的に活動していかなければなりません。

真の創造活動には失敗はないのです。

恐れずかたちにし、やり直し発展させていくべきです。

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Leonardo da Vinci

 

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