2016.03.21 文化芸術振興

聖火台問題で揺れる新国立競技場!そもそもオリンピックの聖火台が存在する意味とは?

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聖火台問題で再び揺れる2020年東京オリンピック

2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなるのが、現在建設中の新国立競技場。

昨年(2015年)、建設費用があまりに巨額であることが世論の反発を招き、建設計画の見直しが決まりました。

その後、建設案は再選となり審査の結果、木材を積極的に活用した「A案」が採用されることとなりました。

様々な紆余曲折があり、ようやく決定される運びとなった新国立案ですが、再び、多くの人を驚かすニュースが飛び込んできました。

なんと、オリンピックの象徴である聖火台を、競技場の上部などに設置することができない可能性があることが判明したのです。

たしかにイメージ図を見ると、聖火台がないことに気づきますが、イメージ図ということで、あえて細部までは描いていないのだろうと思っていました。

まさか、聖火台の設置場所が考慮されていなかったとは、思いもよりませんでした。

さらに、設置するとしても、スタンドは木材が多用される構造のため、消防法上、問題となる懸念があるとのことです。

通常、夏季オリンピックにおいては、聖火台は競技場内にあり、”全観客から見えるように”スタンドの上部に設置されます。

そして、聖火の点火方法は、毎回、開会式の目玉の演出となっているのです。

政府はこの問題に対する検討チームを設けて、聖火台設置する際、競技場のデザイン自体は基本的に変更しない方針を確認したそうですが、実際に、競技期間中聖火台をどこに設置するのか、また、開会式で聖火をどこで点火するのか、今後の協議の結果に期待されるところです。

これまでの大会とはまた違った意味で、注目が集まった聖火。

そこで、今回は、その、聖火を競技場に灯す理由や、聖火をリレーする意味などについて、あらためて詳しくみてみたいと思います。

 

オリンピックの象徴といえば「聖火」

オリンピックといえば、開催国独自の華々しい開会式が毎回話題となりますが、やはり一番の見所というと聖火台に火が灯される瞬間です。

かつては、最終ランナーが階段などで聖火台の場所まで駆け上がり、トーチから聖火台に直接火を灯すのが一般的な「点火」のシーンでしたが、近年は、アーチェリーの矢を使ったり、ワイヤーでランナーをつるして空中で点火したりなど、様々な演出方法を用いるようになってきています。

ほとんどの場合、最終ランナーや点火の「演出」は、実際の点火までは厳重に秘密にされ、多くの場合、その開催国の有名スポーツ選手が務めています。

このように、聖火台に火を灯すことは、とても栄誉なことだと考えられているのです。

では、なぜそこまで「聖火」が崇められているのでしょう、そもそも、「聖火」にはどんな意味があるのでしょうか。

聖火のルーツは古代ギリシャ

聖火の起源は、古代ギリシア時代にまで遡ります。

ギリシア神話によると、プロメテウスが主神ゼウスの元から「火」を盗んで、人類が幸せになると信じて、その「火」を人類に与えたと伝えられています。

したがって、古代ギリシア人にとっては「火」そのものが「神聖なもの」なのです。

そして、古代オリンピック(オリンピアの祭典)の開催中は、神を称えるためにゼウスとゼウスの妻ヘラの神殿に火を灯していたそうです。

近代オリンピックにおける聖火は、1928年のアムステルダムオリンピックで再び導入されて以来、近代オリンピックのシンボルであり続けています。

その火は、かつて、ヘラの神殿が建てられていたオリンポス山で採火されています。

同様に、オリンピック大会開催期間中、メインの競技場でその火は灯され続けます。

聖火リレー始まったのは80年前、1936年の「ベルリンオリンピック」

では、なぜ、その聖火を直接会場に運んで点火せずに、リレーすることになったのでしょうか。

実は、現在の聖火リレーは1936年にドイツのベルリンで開催された、「ベルリンオリンピック」で初めて導入されました。

ベルリン大会組織委員会のカール・ディームが発案者で、紀元前のアテネで行われていたリレーを模すことによって、古代と現代とをオリンピックの聖火で結ぶという思いが込められていたそうです。

Bundesarchiv_Bild_146-1976-116-08A,_Olympische_Spiele,_Fackelläufer

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3000人以上の聖火ランナーが、ギリシャの古代オリンピック開催地であるオリンピアからベルリンまでのルートを、1人1kmずつ走ってその火を運びました。

その成功から、聖火リレーもまた、近代オリンピックの一部となったのです。

当時のドイツは、ナチス政権による独裁体制が始まりつつあり、聖火リレーは、ドイツ国民、特に若い層の人たちを気持ちを掌握するためのプロパガンダとして利用したいという、ヒトラーの思惑にピッタリなものでした。

また、余談ではありますが、聖火リレーのコースは、オリンピアを出発して、ブルガリア、ユーゴスラビア、ハンガリー、オーストリア、チェコスロバキアを経由し、ドイツ国内へ入るというルートを辿りました。

ドイツ政府は、聖火リレーのルート調査のために、ルート途中の各国の主要街道・道路等を綿密に調査したのですが、これは、近い将来侵攻する予定の国々を聖火リレーのルートに選び、きたるべき侵攻に備えるためだともいわれています。

 

聖火リレーの歴史と込められた意味

聖火リレーには、歴史的な意味、教育的な意味、芸術的な意味、儀式(宗教)的な意味の4つを含んでいます。

聖火は、発祥の地オリンポス山で太陽を利用して採火され、オリンピック開催地まで届けられ、その後、聖火リレーによってオリンピック開催都市まで運ばれます。【歴史】

聖火の輸送には様々な人々や国々の協力が必要とされ、また、聖火ランナーには、スポーツ選手や有名人だけでなく一般人も参加し協力して運びます。【教育】

聖火は、華々しい開会式が開催される中、大会のメイン会場となる競技場に設置された聖火台に点火されます。【芸術】

聖火台に灯された聖火は、そのオリンピックの開催期間中ともされ続け、閉会式の最後に消されることになります。【儀式】

聖火は宇宙も通っていた?!

聖火リレーとは、本来的には聖火をオリンポス山で採火し、それを聖火ランナーが会場まで届けるというものです。

ですが、回を重ねるにつれ、聖火リレーも様々な演出が行われるようになりました。

過去にあった面白い聖火リレーの演出には、以下のようなものがあります。

大会名 開催年 内容
ロンドン 1948 初めて船が使用される
ヘルシンキ 1952 初めて飛行機が使用される
メキシコシティ 1968 聖火が大西洋を渡る事になったが、その移動航路はコロンブスのアメリカ大陸行き航路をそのまま辿った
シドニー 2000 グレートバリアリーフの海中をダイバーによって移動、初めての海中聖火リレーとなった
アテネ 2004 過去のオリンピック開催都市を巡る、78日間にわたる初の世界規模の聖火リレーが行われた

 

また、他にも、パラシュートやカヌー、ラクダ、コンコルドなども使われました。

中でも特に風変わりなものとしては、衛星を使ったものです。

1976年のモントリオールオリンピックの時、聖火そのものを電子パルスに変換する試みがありました。

この電子パルスを、アテネから暗号化した信号にして人工衛星を経由してカナダまで送り届け、その信号がレイザービームを発生させレーザー光線で再点火が行われました。

言ってみれば、聖火は宇宙空間を移動して運ばれたのです。

 

最後に

1928年に始まり、以後、80年ほどかけて歴史の中を駆け抜けて来た「聖火」と「聖火リレー」。

もともとは、どちらも、古代と現代とをオリンピックの聖火で結ぶという思いから始められたものです。

今回、エンブレムや聖火台など、残念ながら様々な問題が生じてしまいました。

ですが、それらを解決して、聖火や聖火リレーが人々の目をひきつけるものとなれば、古代と現在だけでなく、世界中の人々を結ぶシンボルになるのかもしれません。

2020年の東京オリンピックでは、どのような聖火リレーが行われ、どのように開会式で聖火が灯されるのか、今から楽しみですね。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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