2016.03.02 歴史に学ぶシリーズ

中国共産党が抱える大いなる内憂「官僚汚職」という問題

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もはや汚職は文化なのか!?繰り返される中国の「官僚汚職」の歴史

誇張なしに中国ではありとあらゆる階層に汚職がはびこっている。

それこそ政府の最高幹部から地方の小役人、さらには教育現場や企業、商店や個人レベルにまで不正が横行しており、現在の中国はまさに世界有数の汚職国家なのである。

しかし、これは今に始まったことではない。

中国はその長い歴史の中で、何度も同じ過ちを繰り返しているのだ。

 

中国において新しい王朝が作られると、建国当初は官僚体制も比較的うまく機能し、さらにそこに聖君が現れれば国は栄え、周辺諸国をも併合するほどの強大な帝国となる。

漢、唐、明、清などがその例である。

 

しかし、国が巨大になればなるほど中央集権は難しくなり、時間の経過とともに無能な王が出現し始めると、官僚たちは宮廷内での政争に明け暮れるようになり、地方にまで中央の統制が利かなくなる。

中央の目が届かなくなると、地方官僚たちは農民を搾取し私腹を肥やすようになり、このような時代が続くと農民たちの不満が爆発し、各地で農民の反乱が勃発。

反乱の連鎖が国全体に広がり、暴動が抑えきれないところにまで大きくなって、次第に国力が衰退していく。

そこにカリスマ的なリーダーシップを持った英雄が出現し、国を滅亡させて新たな帝国を作る、というのが中国が何千年も繰り返してきた歴史なのだ。

 

翻って現在の中国はどうか?

皇帝がいないため王朝ではないが、蒋介石率いる中華民国を破り、中華人民共和国を建国した毛沢東は、かつての秦の始皇帝、漢の高祖、唐の太宗、明の太祖らに並ぶ天命が下った存在としてとらえられており、中華人民共和国の建国は現代における「易姓革命」だったのだ。

 

しかし、歴史は繰り返される。

現在の中国においても農民は極めて貧しい状態に置かれており、官僚たちの汚職問題は報道されるだけでも枚挙にいとまがない。

2012年に中国共産党の最高指導者の座に就いた習近平は「トラ(大物)もハエ(小物)も叩け」というスローガンのもと、一大汚職撲滅キャンペーンを繰り広げ、大物官僚のみならず膨大な数の地方官僚を摘発。

 

習近平のライバルで重慶市のトップだった薄煕来は3億2000万円の不正蓄財の罪で無期懲役。

薄煕来

薄煕来

軍のナンバー2だった徐才厚・前中央軍事委員会副主席は170億円の収賄容疑で党籍はく奪。

徐才厚

徐才厚

そして目下最大の「トラ」といえば、共産党の序列9位という最高幹部の一人だった周永康である。

Washington, DC, July 27, 2006 -- Admiral Allen speaks with Minister Zhou Yongkang, State Councilor; Minister of Public Safety and commissioner of National Narcotics Control Commission; People's Republic of China, on the roof of the Hay-Adams Hotel, Washington,D.C. while they waited for the arrival of Secretary Chertoff. Barry Bahler/DHS

周永康

摘発を受けた周とその家族が没収された財産の総額は、1兆5000億に上るという。

石油利権を一手に握っていたこともあり、発展途上国であれば一国の国家予算にも匹敵するほどの巨額の財産を一人の官僚が不正に蓄財していた事実は世界中に衝撃を与えた。

 

習近平政権が「常務委員経験者は摘発されない」という不文律を破ってまで摘発を強行した背景には、政府による「汚職撲滅」という強い決意をアピールしなければ、国民による不満の高まりが国家基盤そのものが揺るがしかねないとの懸念があったとされる。

そしてこの汚職撲滅の実行部隊として白羽の矢が立ったのが、中央規律検査委員会の下部組織にあたる中央巡視隊である。

「最強の特務機関」との呼び声も高い“東廠”の現代版ともいうべき、この中央巡視隊は10年以上前に設立されたものの、その後は休眠状態にあった。

しかし、習近平はこの組織をふたたび表舞台へ引き戻すことで、党規違反の厳格な取り締まりを行ったのだ。

“東廠”とは、明の時代に置かれた宦官がその長を務める特務機関のことで、秘密警察組織である錦衣衛と並び、皇帝直属の組織として不正・謀反などを内偵するのを主な任務としていた。

 

ところが、この汚職撲滅キャンペーンは思わぬ形で中国経済に打撃を与える新たな問題をもたらした。

国民の不満を鎮めるために始められた汚職撲滅キャンペーンだが、同時に進められた「贅沢禁止令」とともに引き締めが急激かつ強すぎたため、利権を奪われた側からの反抗を受ける結果となった。

それが面従腹背に長けた官僚たちによる「不作為問題」である。

「不作為」とは、やるべきことをやらない、つまりサボタージュのこと。

汚職がありとあらゆる層にまで蔓延している中国においては、取り締まりを激化すればするほど各層でサボタージュが引き起こされ、中央政府の推し進める政策はことごとく停滞することとなるのだ。

 

「賄賂を受け取らない。贅沢もしない。その代り仕事もしない。」

 

まるで80年代の中国に逆戻りしたかのようなやる気のない官僚気質が広がることは、中国経済をより一層失速させる要因となりかねないため、中国共産党首脳部にとっては看過できない問題となっている。

 

国民の不満解消のため「汚職撲滅」を行った結果、新たに発生した「不作為」という問題。

この相反する問題を抱える中国は、まさに「前門の虎、後門の狼」というジレンマに陥っており、身動きが取れなくなっているのだ。

 

そんな中国にさらなる追い打ちをかけている「農民工」の問題とは?

 

→次ページに続く

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