2016.01.30 アベノミクス

アベノミクスが第2ステージに移った今だからこそ、あらためて新旧「3本の矢」を考察してみよう【解説】

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2016年、アベノミクス「新3本の矢」の本格始動

2015年10月に内閣改造を行い発足した、第三次安倍内閣。

安倍首相は「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、「一億総活躍社会」の実現を目的とする、アベノミクスの新しい「3本の矢」を発表しました。

今後は、経済最優先で政権の運営に当たることを、力強く示しています。

新アベノミクスは、まず「1億総活躍社会」の実現を目標として、

  1. 強い経済(名目GDP600兆円)
  2. 夢をつむぐ子育て支援(出生率1.8)
  3. 安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)

 

これらの3つの方針を「新3本の矢」と定義しました。

今年2016年は、この安倍政権の経済政策が本格的に始動することになります。

安倍内閣が掲げた新三本の矢の評判は、その実現可能性などをめぐって、積極・消極さまざまに分かれています。

多くの方にとって、子育て支援と高齢者介護という第2、第3の矢がいったい経済成長とどうつながるのか、唐突な印象を受けた方も多いのではないでしょうか。

また、「一億総活躍社会」の実現ということが、「①名目GDP600兆円、②出生率1.8、③介護離職ゼロ」という新しい3つの矢の目標をどう束ねていくのか、今ひとつピンとこないところです。

それに加えて、以前の「3本の矢」はどうなってしまうのかという意見も見受けられます。

もちろん、安倍政権としては、以前の3本の矢は継続したその上で、新しい3本の矢が実現できるのだということを表現している、そう考えていいでしょう。

そこで、今回は、アベノミクスの本質ともいえる旧3本の矢について解説していきます。

「アベノミクス」と「3本の矢」、これらの言葉を聞きはじめてからずいぶんと時間が経過しました。

ただ、実際にそれらが何を意味しているのか、ご存知でしょうか?

今回、安倍政権の経済政策のポイント「3本の矢」を再確認することで、アベノミクスとはなんなのかというところがお分かりいただけるかと思います。

 

インフレを目指す「アベノミクス」の経済政策

バブル経済崩壊による経済不況が1980年代後半から日本を襲い、同時に急激な「円高」にも見舞われました。

それらによって、日本は「デフレ」という経済状態に突入したのです。

以降、日本では、いわゆる「失われた20年」という、経済が停滞した時代が続いています。

物の値段が継続的に下がることを「デフレ」といいます。

一見すると、物の値段が下がるため聞こえはいいかもしれませんが、ただ、物の値段が下がると、それを売る会社の利益が減ってしまいます。

マイナス金利で株価下落

つまり、わたしたちにとっては給料が減ったり、リストラにあったり、といったことに繋がりかねないのです。

そうした、経済成長の足を引っ張っている「デフレ」状態から脱却し、日本経済を成長に繋げていく経済政策が「アベノミクス」なのです。

簡単に言えば、「アベノミクス」では「インフレ」(物の値段が継続的に上がる状態)を起こそうとしているわけです。

デフレの何がいけないのか

デフレというのは、上に記したように、継続的に年月が進むにつれ物の価格が下がっていくということです。

そうすると、例えば、今現在、パソコンが20万円で売っていても、「来年には10万円で買えるかも」と思う人がでてきます。

それが続けば、「今は買うのをやめておこう」ということとなり、消費が行われずに景気が悪くなってしまうのです。

だからこそ、インフレ状態にして「今パソコンが20万円で売っているけれど、来年には30万円になっているかもしれない」、そう人々に思わせることによって、「今買わなきゃ」と思う人を増やすことが重要となります。

そのようにして、消費がどんどん行われ、それに伴い景気がよくなる、というのが政府の考えなのです。

 

アベノミクスの「3本の矢」

安倍政権の経済政策は3本の「矢」に例えられています。

昔からある教訓で、矢を折るとき「1本の矢では簡単に折れてしまうが、3本の矢を束ねればどんなに力を入れても折れることはない」という、結束の重要性を説いたものがあります。

アベノミクスでは、デフレからの脱却を図るための3つの柱となる戦略を3本の矢と称し、それらをまとめることで、折れることなく、力強く経済政策を実現していくことを表現しています。

その3本の矢に称された戦略の、実際の内容は次の3つです。

  1. 大胆な金融緩和
  2. 機動的な財政政策
  3. 民間投資を喚起する成長戦略

アベノミクスの第1の矢:”大胆な金融緩和”

上で、アベノミクスの本質はインフレを起こそうとしていることだ、と書きました。

では、どうやってインフレを起こすのか、ということになります。

結局のところ、わたしたち国民のもとににお金がいっぱい入ってくれば、インフレになります。

例えば、もし、あなたが今の10倍のお金が、毎月の収入として入ってくるとしたら、10万円もするような高価な靴でも、「買ってみようかな」という気持ちになるでしょう。

売れ行きが良ければ、企業は「もうちょっと値段を高くしても売れるかも」と考え、その10万円の靴を20万円に値上げして売り始めることになるはずです。

このように、次第次第に物の値段が上がっていくことで、インフレになっていきます。

したがって、インフレにするためには、まず社会にどんどんお金を回さなければならないということです。

そのための金融政策が、第1の矢である「金融緩和」です。

社会にお金を回すのが「金融緩和」

日本銀行が実施する政策を「金融政策」と言うのですが、これは次のような仕組みで実施されます。

一般の銀行は必ず、日本銀行に「当座預金口座」を持っており、この口座にお金をいれることでお金が社会に流れていく、そういう仕組みになっています。

現在の日本のように、デフレの時には、日本銀行はその当座預金口座に「お金」を入れます。

日銀

そうすると、そのお金が一般の銀行を通じて企業・団体・市民といった人々に流れていき、企業や個人にお金を貸すことによって、社会全体にお金をまわり景気が回復する、というシステムです。

また、逆にインフレの時は、日本銀行は市中に出回っている過剰な通貨を回収しようとします。

それによって、通貨が不足するという状況が作り出され、加熱した景気が一旦冷やされることによって、物価の上昇が抑えられることになります。

安倍政権は2%の物価の上昇目標を掲げ、その目標が達成されるまで、無制限の金融緩和をするように日銀に働きかけました。

国が本気でお金を流すことによって、わたしたち国民が「本当にインフレになるかもしれない」と考え、「今のうちに投資や消費をしたほうが得だ」というような気持ちの変化も期待できます。

つまり、物価を上昇させ、企業の収入を増やすことによって従業員の賃金を増やし、それによって消費支出をも増大させて、経済を活性化しようというのです。

ただ、現実にはそう上手くことが進みません。

なぜなら、企業としては投資をしたとしても、すぐに、利益としてお金を回収できるわけではないからです。

したがって、企業がお金を継続的に得られるようになるまで、”別の方法”でもお金を社会に流す必要があるわけです。

 

アベノミクスの第2の矢:”機動的な財政出動”

ここで、経済の仕組みを考えてみます。

経済は供給と需要で成り立っています。

簡単に言えば、供給とは与えること、つまり「物を売る」ということで、そして、需要とは消費すること、つまり「物を買う」ことです。

『供給>需要』という状態になれば、経済はデフレの状態になり、その逆に『供給<需要』という状態になれば、経済はインフレの状態になります。

今、日本経済は『供給>需要』というデフレ状態ですので、まずは需要を増やさせなければなりません。

そこで、需要の内訳を詳しく見てみると、一般の消費、民間の投資、そして政府支出の3つから成り立っていると言われます。

現在、これらの3つのうち、一般の消費は景気の低迷で賃金が上がらないため、なかなか増加しません。

また、企業も景気が悪いのでそうそう設備投資(工場を作ったりすること)などはしません、つまり、民間の投資も増加しないということになります。

であるならば、需要を増大させるためには、政府支出を増やすことが必要となってきます。

「財政出動」で景気回復を支援

話を戻して、では、お金を回すための”別の方法”とはなんなのかというと、上で挙げたような政府支出、つまりは公共事業です。

公共事業というのは、国が道路を作ったり、公共施設を作ったりすることです。

例えば、公共施設を建設するためには、建材やセメントを作る企業、実際に土木工事を行う企業、などなど、様々な企業が関わるため経済的な影響が大きいと言われています。

さらに、先の東日本大震災もあって、防災や復興のための公共事業も必要とされています。

そういった、国のインフラ事業に財政資金を投入し、雇用者を増やして、景気を回復させることを目指す方針が、第2の矢である「財政出動」なのです。

もちろん、国の財政は無限ではないので、いつまでも、大規模な公共事業を行うための財政出動を続けられるわけではありません。

だから、企業が自力でお金を稼げるようになって、従業員にお金を回してもらわなければなりません。

そこででてくるのが、第3の矢なのです。

 

第3の矢:”民間投資を喚起する成長戦略”

そして、最後の矢が「成長戦略」です。

どうやって、これから日本の企業がお金を稼いでいくのか、という戦略のことです。

規制緩和をしたり、イノベーションを起こしやすくしたり、ベンチャー企業を支援したり、さらには、国内の大学に海外の人材を呼び込んだりなど、様々な戦略を立てています。

具体的には、以下の4つが主要なポイントです。

  1. 企業の投資を促し、民間活力を最大限に引き出す
  2. 女性、若者、高齢者等の人材の活用の強化
  3. 世界共通の課題に取り組む中での新たな市場の創出
  4. 日本企業の対外進出や対内直接投資の拡大を通じた世界経済との統合の推進

 

いわば、社会の活力ともいうべき、新しい企業や市場がどんどん出てくることを推進する政策であると言えます。

ただ、日本では既得権益による規制が厳しく、そういった新しい企業や市場がなかなか生まれにくい土壌となっていました。

規制緩和等によって、そうした土壌を変えていき、企業や個人がその実力を発揮できる社会を目指すことが成長戦略の目的なのです。

この成長戦略がうまくいって、企業が持続的にお金を稼げるようになれば、賃金の上昇、雇用の増加ということとなり、景気が回復することになります。

 

まとめ

これまで見てきて、「旧3本の矢」と「アベノミクス」とはなんなのかがお分かりいただけたかと思います。

そこで、あらためて新しいアベノミクスと3本の矢を見てみましょう。

  1. 強い経済(名目GDP600兆円)
  2. 夢をつむぐ子育て支援(出生率1.8)
  3. 安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)

 

唐突な印象を受けた「一億総活躍社会」の実現ですが、これまで成長戦略として挙げられていたことから、さらに発展させていったものだということが分かるかと思います。

そもそも、私たち国民がより豊かで安心した生活を送れるようにするため、経済成長が必要なのです。

多くの人が、結婚して子供も欲しいが、仕事も頑張りたいと考えています、ですが、多くの障害に阻まれています。

また、将来、自分や家族の介護が必要となったらどうしようか、そうした不安を抱いている人も少なくなくありません。

それらのことから、収入が増えても、欲しいものが買えず、必要なものが手に入らない、というのでは経済成長しても意味が無いのです。

これまでの成果を、多くの国民にとって望んでいるもの・不安を解消するものに向けていくことは、当然のことであると言えます。

安倍政権は、今までデフレからの脱却に全力を注いできました。

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それが、一定の成果を成し遂げた今、第2ステージとして、少し経済政策の視野を広げる余地が生まれてきたのです。

「新3本の矢」はデフレ状態の脱却といった緊急事態への対処から、さらに中長期的な視野を持った政策への転換がなされたものだと言えるでしょう。

はたして、この3つの政策目標が本当に実現可能かどうかは、ひとえに政府の今後の政策にかかっています。

アベノミクスはまだまだ道半ばです、今後どのようにアベノミクスが機能していくのか、安倍政権の経済政策に注目していきましょう。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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