2016.01.18 アベノミクス

いまさら聞けない経済の話「円高、円安はどうやってきまる?為替相場を理解しよう」【解説】

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実は私たちの暮らしと密接に関わる「為替相場」

つい数年前までは、「円高・円安」、「為替レート」などといった為替の話題は、一部の金融機関の関係者くらいにしか馴染みのないものでした。

しかし、最近では、外貨預金やFX取引などで資産運用している方も増えているとのことで、為替への注目は高まっています。

それに加え、その為替の動きが株式市場や、さらには景気にまで大きな影響を与えているということもあり、為替についてもっと理解を深めたいという人も増えているようです。

実は、為替相場は日本の経済、つまるところ私たちの暮らしとも密接に関わっているものなのです。

為替レートに関しては、新聞やテレビのニュースの中で、「1ドル○○円」「1ユーロ〇〇円」などと、毎日のように目にしているかと思います。

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ただ、私たちが日々の生活の中で、そういった為替レートの動きを実感するのは、海外旅行に行くときなどのごくわずかな場面に限られています。

そこで、今回は為替の基礎知識として、為替レートがどんな仕組みで決まるのか、相場がどんな要因で動いているのかなどを解説していきます。

 

普段、何気なく耳にする「為替」とはいったい何?

それでは、まず「為替」とはいったいなんなのでしょうか。

普段何気なく耳にする為替という言葉ですが、実はよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。

為替とは、手形や小切手などの”現金以外の方法”によって、金銭を決済する方法を総称したものです。

例えば、ある人が遠く離れた町にある商店から商品を購入し、その代金を支払うという場合、直接現金を相手に送っても良いのですが、もし、その金額があまりに大きい場合は、現金を直接届けることは盗難などのリスクが伴います。

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そこで、銀行などに代金を支払って手形(支払いを依頼した証書)を発行してもらい、その手形を受取った商店が指定の銀行に持って行き、代金を受取るということが行われています。

このように、為替は、売買代金の受払いや資金の移動を現物のお金を輸送することなく行う手段で、現金で直接送付する際のリスクを避けて、遠隔地への送金を行うために用いられています。

こうした、為替の歴史は古く、日本では室町時代に始まったといわれています。

遠い場所に沢山のお金を運ぶ際、途中の森や山奥で山賊などに襲われたり、お金を紛失したりするリスクを避けるために作られたしくみが「為替」なのです。

そして、時代は変わり、インターネットが発達した現在では支払いや送金のため、銀行振込や口座からの引落しなどが簡単にできるようになり、相手に直接現金を送ったり渡したりという機会はほとんどなくなりました。

そのような、銀行振込や口座振替も、実は「為替」取引の一種なのです。

国内で行う決済は「国内為替」と呼び、外国と行う決済は「外国為替」と呼んでいます。

 

お金の価値を決める「為替相場」

国や地域によって使われている通貨の種類は異なっています。

例えば、日本では「円(¥)」、アメリカでは「ドル($)」が使われ、ヨーロッパでは多くの国が「ユーロ(€)」という共通の通貨を使っています。

これらの通貨は、その限られた国や地域の中でしか使えませんので、国や地域を越えてお金をやりとりするときは、通貨の交換をしなければならないのです。

わかりやすく、身近な例で考えてみましょう。

あなたが、外国の企業から物を買ったとします。

この場合、当然あなたは外国へお金を送らなければなりませんし、さらに、その際には外国通貨で支払わなければなりません。

そこで、あなたがお金(円)を銀行へ持って行くと、銀行があなたに代わって、外国通貨を買ってお金を相手方に送ってくれます。

ただ、違う国の通貨の交換比率(レート)は日々、変動しています。

このレートを「外国為替相場」と呼んでいます。

「1ドルいくら」というドルの「値段」が日々変動しているのです。

このとき、同じ10万円を持って行っても、円安のときより円高のときの方がドルはたくさん手に入ることになります。

実際には存在しない「外国為替市場」

通常、上記のようなケースの場合、あなたはお金(円)を持って銀行へ行き、国際通貨であるドルを買って銀行に頼んで外国の企業に送金を依頼することになるでしょう。

その時、「1ドル○○円」というドルの交換レート(値段)に応じて両替(売買)することになります。

これがドル相場であり、また、外国為替相場なのです。

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ドルやユーロなどの通貨は、主として銀行で売買されます。

これを「外国為替市場」と言い、1ドルや1ユーロが何円という相場は外国為替市場で取引されているものです。

新聞・ニュースなどでは「東京市場」「ニューヨーク市場」などと言っていますが、株式市場のように専用の取引所があるわけではありません。

「市場」と言うからには、ドルやユーロなどの通貨を売買する専用の建物や施設があると思われるかもしれませんが、実際、そういうものはないのです。

通貨の売買を行っているたくさんの銀行が集まって、市場を形成し取引しているのです。

また、ほとんどの国では外国通貨を扱う金融機関が、電話やネットワークを通じて取引をしています。

こういったものをすべてひっくるめて「市場」と呼んでいるのです。

例えば、ニューヨーク・ロンドン・東京などには、世界中の様々な銀行が集まって日々莫大な通貨の売買をしています。

これらを世界の3大外国為替市場とも呼んでいます。

円の価値が決まるのが「円相場」

一般に「円相場」という場合、「1ドル○○円」という円とドルの交換比率を指しています。

当然、外国の他の通貨に関しても、対ドルを基準にしての交換レートとなっています。

これは、ドルが世界で最も広く使われる国際的な「基軸通貨」だからです。

したがって、日本がアメリカ以外の国と貿易をするときも、ドルを使って取引することが一般的となっています。

相場は、ニュースなどの報道では、例えば「1ドル=100円50銭」(100銭=1円)と1ドルの値段を円で表すのが通常です。

仮に、1ドル=100円だった相場が、1ドル=110円になったとしましょう。

この場合、100円で売られていた1ドルが110円に値上がりしたわけです。

これを「ドル高」といいます、また、裏返すと円は安くなったことになりますので「円安」ともいいます。

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とはいえ、私たちが銀行に行っても、ニュースなどで報じられるレートのまま両替してもらえるわけではありません。

ニュースなどで目にする相場は、「インターバンク相場」といって、銀行などの金融機関同士が通貨を売り買いする時の値段だからです。

わたしたち個人が銀行でドルを買う場合には、そのレートに手数料などを上乗せされるので、いくらか割高になります。

通常、店に並んでいる商品でも、業者が売買する卸売価格に比べ、わたしたちが店で買う時の小売価格は高くなります。

通貨の場合も同じで、ニュースで報じられる相場は、その「卸売価格」にあたるものなのです。

 

なぜ「為替相場」が動くのか?その仕組みを解説

通貨の値段が日々変動するという、この不思議な現象はなぜ起きるのでしょうか。

通常の商品、例えば野菜や肉などの値段は、需要と供給によって決まっています。

つまり、「買いたい人」と「売りたい人」の駆け引きによって決まります。

その商品を買いたいと思う人が増えれば価格は上がり、買いたいという需要を上回る量の商品が供給されれば下落します。

実は、為替相場が変動する仕組みもこれと同じなのです。

ドルの値段も同様に、ドルを買いたい人と、ドルを売りたい人の駆け引きで決まるのです。

ドルの需要が増えれば「ドル高」に、ドルの需要が減れば「ドル安」になるのです。

(※ 逆から見れば、円の需要が減るのが「円安(ドル高)」で、逆に、円の需要が増えるのが「円高(ドル安)」ということになります。)

では、どのような時に通貨の需給は変化するのでしょうか。

真っ先に思い浮かぶのは、外国との間で輸出入を行う貿易のときだと思います。

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例えば、アメリカの企業から物を買ったとすると、その支払いにはドルを必要とします。

つまり、輸入業者はドルを欲しがる(需要する)ことになります。

逆に、日本からアメリカへ商品を輸出したとします。

その場合、日本の輸出企業はアメリカに商品を売った代金を円で受け取ることになり、そのため、アメリカの企業はドルを円に両替します。

もし、日本の企業がドルで代金を受け取った場合、輸出した日本の企業の側でそれを円に両替しなければならず、その場合も円の需要が増えることになります。

ほかにも、海外旅行の料金や外国の大学に留学する際の授業料など、ドルを必要とする場面が出てきます。

さらに、政府がさまざまな形で外国を資金援助する時にも、ドルが必要になります。

このように、輸入業者、個人、政府といった様々な人々の間で、ドルや円など通貨の需要が生じます。

そうした外国為替市場での需要と供給のバランスによって、外国為替相場は日々変動しているのです。

 

為替相場を動かす「経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)」

為替相場は政治の動きから自然現象に及ぶまで、さまざまな要因を反映して変化します。

ただ、その中で最も大きな影響を与えるのは、やはり経済の動きでしょう。

つまり、為替相場を動かしているのは実際の通貨の需要と供給バランスだけでなく、さまざまな経済の基礎的条件(「ファンダメンタルズ」)が影響しているのです。

では、それらはいったいどういうものか見てみましょう。

①金利の影響

実は、金利というのは、景気を反映するものなのです。

一般的に、景気がいいときは金利が高く、逆に、金利が低いときは景気が悪いというようにできているのです。

ここしばらく、日本の金利はほぼゼロの状態が続いていますが、それは、まさに日本の景気が悪いことを示しているからです。

また、お金は金利が高い国に流れていくものです。

現在、日本ではほぼゼロ金利で、預金をしてもほとんど利息は付かないといった状況です。

例えば、銀行にお金を定期預金として預けても、金利は1年で1%未満、つまり、100万円を銀行に定期預金したとしても、1年に1万円も利息がつかない計算になります。

これに対し、外国の通貨で預金をした場合、もっと高い金利が付く場合もあります。

このように、日本の金利がほぼゼロといった状況ならば、ユーロやドルなど金利の高い国の通貨で預金をしたいと思う人が増えるでしょうし、実際増えているようです。

円からドルやユーロに両替するということは、ユーロやドルを買っているのと同じことです。

通貨の値段は、物の値段と同様に需要が増せば増すほど上がっていくというのは、すでに説明しました。

つまり、ドルやユーロの値段(為替レート)が高くなる(円安)ことになります。

そうして、円で預金するより外貨で預金する方が得だと考える人が増えていけば、その分、円が売られてその外貨の値段が上がり続けることになるのです。

②通貨の供給量

各国の中央銀行は、経済政策として、国内に出回る通貨の量を調節しています。

安倍政権の経済政策「アベノミクス」でも、3本の矢の1つに「金融緩和」として上げられています。

金融緩和とは、簡単に言えば、お札をたくさん刷って世の中にお金を回りやすくすることです。

実際、日本の中央銀行である日銀は、物価を上昇させて景気を刺激するため、通貨の供給量を増やそうとしています。

当然、こうした金融緩和は円安の要因になります。

逆に、景気の過熱やインフレを抑制するために、中央銀行が金利を上げて、通貨の供給を抑えて需要を抑制することを「金融引き締め」といいます。

好景気のアメリカでは、中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が、現在まさに金利を上げて、この引き締め策を行っているところです。

③物価との関係

現在の円相場が割高なのか割安なのかは、日本・アメリカの二国間の物価の水準から、ある程度推定できます。

例えば、コカ・コーラのような世界中で売られており手に入れやすい商品が、日本では100円、アメリカで1ドルで売られているとします。

日本では100円で、アメリカでは1ドルで同じコカ・コーラが買えるので、1ドル=100円が実際の「通貨の実力」だといえます。

もし、その時の円相場が1ドル=150円だったとするなら、実際の「通貨の実力」と比べ、円は安くなりすぎていると考えられるのです。

 

最後に  ~「為替相場」を読み解くことで、日々の経済ニュースが面白くなる~

普段ニュースをみていると、「アメリカで金利引き上げ」「日銀がマイナス金利を導入」などのキーワードが目に飛び込んできます。

そういった経済の話題は、「自分には関係ない」とか、「用語がわかりづらくて面白くない」、などと思って読み飛ばしている方も多いかと思います。

ただ、今回見てきたように、金利や景気は為替に影響し、わたしたちの外貨預金などの資産にまで影響することがお分かりいただけたでしょう。

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それが理解できた今なら、あなたも、それらのニュースを今度からはじっくりと読んでみたい、そう思うのではないでしょうか?

どのような経済事象が起きているのかは、新聞などのニュースを見れば大体分かります。

日々報道される経済ニュースが、為替相場にどのような影響を与えているのか、あるいは、為替の動きによって日本経済はどういう影響を受けるのか。

そういったことを考えながら、新聞・テレビなどを見てみると、日々のニュースも面白いものになるかもしれません。

 

※希望日本研究所 第8研究室

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