2016.02.09 規制緩和

甘利大臣問題のUR都市機構が「今」の時代にいらない5つの理由

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UR都市機構とはどんな組織?本当に必要

今話題の独立行政法人 UR都市再生機構。
甘利大臣の辞職の原因の一端を担っている政府系の組織です。

一般にはあまりなじみのない組織ですが、秘書が受け取ったとされる口利き料はこの組織から建設会社に支払われた移転補償、2億3千万円の一部と報道されています。

 

またこの件で今の国会でも野党から情報公開を求められ、「完全墨塗り」の資料を提出できるような強気の組織でもあります。

 

ではUR都市機構とはどんな会社なのか、どんな仕事をしていているのか。
また、天下り機関とも言われるUR都市再生機構は今の社会で本当に必要なのかについてわかりやすく説明していきます。

480px-Yokohama_Island_Tower

UR都市機構(旧住宅・都市基盤整備公団、都市基盤整備公団)が担った歴史的役割

高度成長で不足した住宅を政策的に供給した住宅・都市整備公団(現UR都市機構)

1981年、都市部の集合住宅・宅地の供給、市街地の再開発を国主導で行うため住宅都市整備公団が設立されました。
これが今のUR都市再生機構のもととなる組織です。

 

経済成長が続く日本で、不足している住宅を政策的に供給するため、ニュータウンの大規模開発なども手掛け、日本の都市化の歴史の中で大きな役割をはたしました。

多摩ニュータウン、筑波研究学園都市、恵比寿ガーデンプレイス、みなとみらい21などなど今の日本の都市部の名だたる大規模開発を手掛けてきた、日本の高度成長にはなくてはならない存在でした。

多摩ニュータウンを走る京王線と小田急線150624

 

家あまりの社会状況を受け都市基盤整備公団へ

その後、住宅市場は成熟化して、世帯数より住宅数が上回る家あまり状況(1968)が続き、設立当初に求められていた役割は民間で十分果たせるようになりました。

国の機関であることもあるため、廃止という選択はなく新たな役割を担うようになります。

 

まずは住宅の数を増やすことに専心してきた住都公団ですが、住宅地・街の質が求められる時代になったことを受けて1999年、都市基盤都市基盤整備公団に名前も改めることになります。

その名のとおり、既にできている市街地や住宅地に幹線道路などの都市基盤を整備したり、土地を有効に使うための再開発事業も行うことになりました。

 

都市再生の担い手としてUR都市機構へ

盛んに開発が行われましたがバブル崩壊後、1990年代後半は失われた10年とも言われる低迷期に入ります。
その解消のため、小泉政権の目玉政策として、都心部の再生事業(都市再生)が行われます。
民間の開発力を活用して国の経済を盛り立てようとする政策です。

東京駅周辺の再開発や虎の門のマッカーサー道路の整備なども都市再生の一環です。

Tokyo_Station_2007-0429-2

 

基本は民間主導の再開発の促進ですが、その調整役として2004年都市基盤整備公団と地域振興整備公団の一部が統合され、現在のUR都市機構(都市再生機構)が設立されることになります。

 

現在のUR都市機構の役割は、都市再生のプロデューサー、76万戸の賃貸住宅の維持管理が主な業務をなっています。

Kan'ni-Dori_at_Shimbashi_Tokyo

 

UR都市機構(旧都市基盤整備公団・都市基盤整備公団 )の役割の変化と重要性の変化

設立当時は日本になくてはならない組織

住宅・都市整備公団時代、非常に大きな住宅需要に対応することは、当時の民間企業にはあまりにも荷が重い事業でした。
また短期間に政策を実現するためには、営利を求める民間企業には限界がありました。
そのため民間ではできない大規模な事業を担うことのできる重要な組織でもありました。

またその後の、市街地整備も公共が主導的に行うことが求められる事業でした。

 

しかし今や、組織を維持するため仕事を探してあげなければならない巨大組織に

しかし、その後のUR都市機構の役割は不明確です。
事業の調整役はいるにはこしたことはないのですが、六本木ヒルズなどの開発を見れば、官の主導が無くても民間だけでも出来ることをしています。

 

どちらかと言えば、大きな組織を維持するために仕事を作らなければならないという事情が大きかったのではないでしょうか。

 

実際その後、民主党政権になった際には、事業仕分けの対象ともなっています。

第三者委員会の報告書では、「分かりにくい組織」、「財政の脆弱性」、「不十分なガバナンス」などが大きな課題として指摘されています。

 

UR都市機構が「今」の日本にいらない5つの理由

日本が成長していた時には無くてはならない機関でした。

しかし、民業圧迫の観点からも、いまの時代には、天下り先の確保ということ以外にはほとんどその必要性が感じられない状況です。

ここではなぜ今UR都市機構が必要ないのか説明して行きます。

 

1.UR都市機構が担っている住宅事業は既に国の仕事ではない。

これから、日本の人口はどんどん減少していきます。
2030年には8000万人台になるとも言われており、空き家の処理が社会問題になっています。

今後都市の更新やメンテナンスは必要になってきますが、供給の必要はなさそうです。このよう市場が縮小していく状況下での大規模な賃貸事業はむしろ民業圧迫になります。

日本最大の賃貸事業者が準国営という状況が、今後の日本にふさわしい形態とは思えません。

 

また、URならではと言われた、礼金ゼロ、更新料ゼロというメリットがありました。

しかし家が余っている今、民間でもこれらは当たり前になりつつあり、メリットは無くなってきています。
保証人制度に関しても、保証協会制度が充実してきています。

 

2.膨大な有利子負債。問題を先送りしても状況はどんどん悪くなる。

11兆9000億円の膨大な有利子負債。

UR都市機構は財務状況も公開しています。

平成26年末の有利子負債は11兆9000億円です。
国から低い金で借入(財政投融資)できるのですが、それでも利子の支払に1800億円を出しています。

一番の収入である賃貸住宅業務の収入が6200億円、その三分の一が利子の支払いで消えています。

 

需要が減少する社会での膨大な住宅・土地資産

一方で、賃貸住宅・土地などの資産は13.8兆円あります。

UR都市機構に移行する際に、充分な土地評価を行ったといわれていますが、人口減少に伴い都心部以外の土地はどんどん値下がりしていきます。

 

残念ながら、UR都市機構の持っている賃貸住宅の多くは郊外のニュータウンです。

また所有地は、北海道から九州までに散在しており、工場用地などの用途のものが多く、今後値上がりが期待できるようなものはなさそうです。

また、既に造成や埋め立てに相当な費用がかかっているものも多くあります。

 

今後、2060年には8600万人にまで人口が減少する中、住宅土地需要が減少することは明らかです。

そして需要が減少する中では、資産価値は毎年減少していきます。

それが、郊外の用地ならなおさらです。

 

膨大な借金をしていて、その担保になっている資産の価値は今後どんどん下がっていくことが予想されるという状況なのです。

 

金利が上昇したらどうなる?

UR都市機構への貸し付けは、財政投融資と言われる低利・長期の資金です。

期間は30年と長期でも常に借り換えは必要となります。

その時金利が上がっていた場合はどうなるのでしょう?

借金の金額が大きいだけに、その負担は相当なものです。

その時、その借金は結局税金で支払われることになります。

 

3.「大きくてつぶせない」時代ではない

UR都市機構の今までの事業は、国からの借金で行ってきたのでその債務はなんと11.9兆円、毎年の利子の支払いは1800億円となっていることについては先ほど書きました。

そして、含み損の可能性の高い土地を日本中に持っています。

 

UR都市機構の改革・解体整理の議論は、今までも何度もされてきていますが、結局は「あまりに巨額の負債が顕在化してしまうのでつぶせない」といことで今まで生き延びています。

民間では、「大きくてつぶせない」という理屈はもう成り立ちません。
山一証券でも東芝でも時代に合わない、きちんと経営できていない企業は、どんどん新陳代謝していかなければ、いつまでたっても日本には新しい産業は起こってきません。

ましてUR都市機構は、実質的に国からの借金(税金)で賄われている組織ならばなおさら健全な経営を行う必要があります。

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4.どう見ても天下り組織に見える

まずはUR都市機構のホームページで公表されている役員一覧です。

国の機関の出身者、出向が多いのは明らかです。

役員出向の方はまたもとの役所に戻るということです。

役職 氏名 前職
理事長 上西郁夫 東北電力株式会社監査役
副理事長 花岡洋文 国土交通省国土政策局長<役員出向>
理事長代理 石渡 廣一 独立行政法人都市再生機構東日本都市再生本部長
理事 天河 宏文 国土交通省都市局まちづくり推進課長<役員出向>
理事 小倉 清明 黒崎播磨株式会社顧問
理事 野島 透 財務省九州財務局長<役員出向>
理事 德永 幸久 国土交通省国土政策局地方振興課長<役員出向>
理事 伊藤 治 独立行政法人都市再生機構本社住宅経営部長
理事 瀬良 智機 国土交通省住宅局安心居住推進課長<役員出向>
理事 西村 志郎 独立行政法人都市再生機構本社ニュータウン業務部長
監事 鹿野 治雄 三井住友トラスト・ビジネスサービス株式会社取締役副社長
監事 小林 昭次 独立行政法人都市再生機構埼玉地域支社長
監事 麻田 千穗子 内閣府大臣官房審議官<役員出向>

 

また平成26年の公開されている役員報酬は、理事長約2700万円、退職公務員は1000万円~1500万円、役員出向でも500万~1000万円程度。
理事長の退職金は任期3年で3600万円、理事は任期2年で2000万円以上です。

社会的に給料に見合った仕事をしていれば全く問題はありません。

しかし、今のUR都市機構は、都市機構のあり方に関する調査委員会という第三者委員会で「組織目的がわかりにくい」と指摘されている組織であることは見逃すことができません。

 

また、住宅・都市整備公団時代は、多くの職員が区画整理の実務をこなし、地権者の元に足しげく通っていましたが、現状実務経験のある職員がどんどん退職してしまったと聞いています。

ちなみに、現場の職員は職務熱心かとは思いますが、以前URを訪れた際、業務時間にも関わらず窓際の部長席に座っている人が全員新聞を読んでいるので驚いた記憶があります。

 

5.被害が大きくてつぶせないだけでなく官僚がつぶしたくない組織のために無理に仕事を作っているのでは?

UR都市機構は大きな経営リスクを抱えた組織です。
しかし、準国営企業なので今まで存続してきました。
その大半は国民の税金が融資されています。

また、どう見ても天下り機関のようにしか見えない組織です。
それでも今の日本にとってなくてはならない仕事をしているなら、それはそれで許容範囲かもしれません。

しかし、今の状況は「大きくてつぶせない」「官側につぶしたくないインセンティブが働く」機関です。
そのために、組織存続のために新たな役割を用意し、仕事をしてもらっているようにしか見えません。

仕事をするために組織があるのは当然ですが、組織を維持するために仕事を作るのは本末転倒ではないでしょうか?

 

改革解体は税金での補填等大きな痛みを伴いますが、民間ではこのような際は早期に損切りを行い、本当に必要な事業に絞り組織をスリム化し再出発するのが常識です。

今のまま組織を維持し続けることは、膨大な経費を使い続けるだけです。

 

まとめ

国会議員と口利きのニュースが連日報道されましたが、この事件を理解するためには原資となるお金を払ったUR都市機構について知っていると違った角度から見ることができます。

ここでは、
・議員の斡旋は大きな問題ですが、斡旋の温床となるような社会システムが日本に残っていること
・あっせんの温床となる社会システムは天下りの温床にもなっており国の税金が使われていること
・必要がなくなった組織を温存するために仕事を作るのは大きな無駄であり、政治主導の行政改革を推し進める必要があること
についてまとめました。

(希望日本研究所 第一研究室)

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