2016.01.10 アベノミクス

借金すると利息がもらえる?! 日銀が導入した「マイナス金利」とはいったい何?

8
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日銀が「マイナス金利」導入を決定!「マイナス金利」ってなんだ?!

今年(2016年)1月の日銀政策決定会合で、日銀の当座預金金利に、日本では初めてとなる「マイナス金利」の導入が決定されました。

テレビやネットでニュース速報になるくらいのサプライズで、市場もこの方向での金融緩和は予想しておらず、外国為替相場も大きく反応するほどでした。

決定会合後に発表された公表文によると、この「マイナス金利」は金融緩和策の一環で、今後は「量」・「質」・「金利」の3つの次元で手段を駆使して金融緩和を進めていくそうです。

さて、この「マイナス金利」ですが、そもそもマイナス金利って何?と感じている方も多いと思います。

金利とは、簡単に言えば、お金を借りるときにいくら利息を払うかとか、お金を預けた時にいくら利息をもらえるかを計算するものです。

その金利がマイナスになることで、私たちの生活にどんな影響があるでしょうか。

経済や金融に関する用語は専門的で難しいものが多いですが、今回は、なるべく身近な言葉で、日銀が導入した「マイナス金利」について解説してみたいと思います。

 

そもそも金利がマイナスってどういうこと? お金を借りるとお金がもらえる?

一般的に、わたしたちが銀行にお金を預けると、元本に対していくらかの利子がつきます。

現在、日銀はゼロ金利政策をとっていて、ほぼ金利がゼロに近い状態ですが、それでもマイナスではないので、元本が少しずつ増えていくことになります。

ところが、金利がマイナスになると、預金している分の利息を、わたしたちが銀行へ払わなければならなくなります。

この状態が、「マイナス金利」といわれる状態です。

逆に、お金を貸し出した場合、貸したお金に対して利子がつき、返す際には一定の利息を払うことになります。

しかし、「マイナス金利」の場合には、お金をもらってお金を借りるという奇妙な状況になります。

とはいえ、今回導入を決定した「マイナス金利」は、日本銀行と銀行などの各金融機関における金利の話であって、わたしたちが普段利用している銀行預金の利子がただちにマイナスになるというわけではありません

 

「マイナス金利」が適用になる対象は?

実は、わたしたちが銀行に預金するように、各金融機関は中央銀行である日本銀行に口座を持っており、そこにお金を預けています。

これは、準備預金制度という仕組みで、法律によって定められています。

なぜ、こうした制度がとられているのかというと、一つには各金融機関の間の決済(資金移動)をスムーズに行うためです。

日銀に依頼すれば、実際に現金を動かすことなく、帳簿を書き換えるだけで資金移動が完了するからです。

また、万が一、金融機関の資金がショートした際には日銀が資金を貸し出すので、決済ができず信用収縮などの金融危機が起こってしまう事態を避けることができます。

このような、各金融機関が日銀に持っている口座のことを中央銀行当座預金といいます。

今回導入された「マイナス金利」は、現在口座に預けている分にはこれまで通り金利は付きますが、これから新規で預ける分についてはマイナスの金利(−0.1%)が適用されるということです。

 

「マイナス金利」で日本経済はどうなる?

それでは、結局のところ、どういう影響が出るのでしょう?

まず、金融機関としては日銀の口座にお金を預けていると、利子がつくどころか利息を支払わなくてはならなくなってしまいます。

それならば、日銀口座で資金を眠らせておくよりも、企業へ貸し出して金利を得たり、他の金融資産に投資に廻そう、という動きになるわけです。

本当に必要としている人に、経済の血流ともいうべきお金が回らないと、経済はいつまでたっても回復しません。

要するに、市場にお金を出回らせることによって、企業の設備投資や賃上げなどの後押しをし、または、金融投資を活性化して景気を刺激しようということなのです。

最終的に、アベノミクス3本の矢の一本である「物価上昇率2%」という目標に近づけていきたい、という意向が日銀にはあるわけです。

 

「マイナス金利」がわたしたちの生活に与える影響は?

マイナス金利になったのが日銀と金融機関との間だけとはいえ、今後は少なからず、わたしたちと金融機関との間の金利にも影響してきます。

もちろん、すぐに金利がマイナスになるということにはなりませんが、これまでより引き下げられ、将来的にマイナスになることも可能性としてはあるかもしれません。

それでは、具体的にはどういったことが考えられるでしょうか。

①銀行預金

今でも、銀行の預金金利はほぼゼロに近い状態ですが、今後はそれ以上に利子は付かなくなります。

それだけでなく、口座維持手数料として「マイナス金利分」をとられるようになるかもしれません。

現在も、預金額が少なかったり取引高が少ないと口座維持を名目として手数料をとられるケースがありますが、今後は残高に対して何パーセントといった形で手数料をとられるようになる可能性があります。

②住宅ローン

自宅を住宅ローンなどを借りて購入している人は、支払う利息が減るでしょう。

それによって、住宅ローンを組みやすくなり、住宅ローンを組んで自宅を購入しようとする人が増え、不動産市場が活性化されることが考えられます。

③企業収益などへの影響

まず、基本的に銀行の経営は今より苦しくなるでしょう。

金利が低くなり、金利収入が減少することもそうですが、金利が減少することで一般の預入れも減少してしまうのであれば当然のことです。

それとは逆に、不動産業界にとっては良い影響を与えるでしょう。

住宅ローンの金利が下がるのであれば、住宅ローンを組みやすくなり、不動産の販売が活発になります。

さらに、金利を引き下げることは、基本的に円安につながります。

円を持っていても金利がつかないのだから、たくさん持っている人は、とにかく円で持っていても仕方がないと考え他の通貨に両替したり売ったりします。

そうすることによって、円安になるわけです。

円安になれば、海外からの観光客が増え、そのため、観光業界や旅行業界には良い影響をもたらすでしょう。

 

なぜいま日銀は「マイナス金利」を導入するのか? ゼロ金利政策からの前進か

大小さまざまな影響を与えることが分かったうえで、なぜ、日銀の黒田総裁は「マイナス金利」を導入することを決めたのでしょうか。

そもそも、金融政策というのは、金利を動かすことが一般的な方法です。

しかし、日本の金融政策は、リーマンショック以降ずっと「ゼロ金利政策」を導入してきており、金利はもうこれ以上動かしようがないと考えられていました。

金利を操作することができないので、「量的金融緩和」と「質的金融緩和」で景気刺激策を行ってきたのです。

  • 「量的緩和」 日銀が金融機関から国債を買い取り、銀行が自由に使えるお金を増やして市場に出回らせようとする政策のこと
  • 「質的緩和」 日銀が金融機関から買い取る資産の対象を広げ、超長期国債や投資信託などの金融商品も買い入れる政策のこと

 

これらの金融緩和策は、最終的には市場にお金を出回らせることが目的のものです。

しかし、これらの緩和策だけでは実際の効果に限界がありました。

黒田総裁は、これまでの定例の日銀の会合でも、必要ならば金融緩和策を追加で行うと明言してはいましたが、「緩和をすると言っても、一体何をするの?」という疑念がありました。

そこで、今回、黒田総裁が満を持して出してきたものが「マイナス金利」なのです。

これによって、金融政策は「量」・「質」・「金利」の3次元で行うこととなり、非常に幅を持たせることができるようになりました。

 

今後、さらなる「マイナス金利」はあるのか?

今回、「マイナス金利」というゼロ金利の壁を突破した日銀ですが、今後、どのような金融政策を打ち出してくるのでしょう。

一旦、マイナスに突入した金利が、さらに引き下げられることがあるのでしょうか。

一般的に、供給の過剰は価格に下げ圧力がかかります。

2%の物価上昇を目標に、日銀が毎年80兆円のマネタリーベース(日銀など国の中央銀行が発行する紙幣、貨幣、預金の合計)を増やす政策をとっていることは、通貨の供給過剰を引き起こしています。

つまり、日銀としては通貨の価値を下げたいわけです。

円の価値を下げ続ける政策をとり続け、さらに、金利がどんどん下がる圧力を加えていたのです。

ところが、金利については、通貨の供給量が過剰な状態でも、プラス0.1%とかの金利をつけて人為的に下げ止められていたのです。

したがって、今回のマイナス金利は必然のものであったといえます。

株や為替、金利もそうですが、市場原理で動く数字は、上がれば下がり、逆に下がったものは上がるものです。

相場での上げ下げが、その軸になっているとすれば、金利に関しても当然、上がるところまで上がり、下がるところまで下がるということが考えられます。

黒田総裁も、講演において「必要な場合には、さらに金利を引き下げる」と発言しており、さらにそのマイナス幅が広がる可能性も当然ありえます。

 

「マイナス金利」でこの先どうなるのか?

さて、この様な「マイナス金利」が続くと、今後、日本の経済はどうなっていくのでしょうか。

通常、低金利状態が長く続くと通貨の価値は下がり、物価はどんどん上昇していきます。

いわゆる、「インフレ」と呼ばれる状態です。

つまり、お金より物の価値が上昇してしまい、それが極端になると、新興国などで目にするパンを1つ買うのに札束を積み上げる様な「ハイパーインフレ」状態になってしまいます。

しかし、日本では、もう10年以上もこういった低金利・ゼロ金利政策が続いていますが、物価が上がるどころか逆に「デフレ」状態に陥っています。

そこで、日銀は物価上昇率2%の目標をなんとしてでも達成しようと、マイナス金利政策に踏み切ったのです。

ただ、これがやり過ぎだった場合、急激な物価上昇に見舞われ、その抑制のため、急激な金利引き上げという形で締め付けがなされることでしょう。

 

まとめ ~「マイナス金利」政策のメリット・デメリット

最後に、わたしたちの生活の中で「マイナス金利」のメリット・デメリットをまとめてみます。

メリットとしては、住宅ローンなど、長期でお金を借りる時の金利が非常に低くなるので、住宅購入等を考えている方には非常にプラスになります。

実際、マイナス金利政策が発表されたことを受けて、さっそく大手の銀行が住宅ローンの引き下げを発表しました。

現在も、多くの銀行が住宅ローンの引き下げを検討しているようです。

デメリットとしては、当然、預金するときの金利が低くなることです。

銀行自体、国債買い取りで日銀から大量の資金を供給され運用に困っている状態で、一般市民からの預金を募らなくてもお金がだぶついている状態なのです。

現在の預金金利でさえ微々たるものであったのですから、今後はタンス預金とほぼ変わらない様な状態になるでしょう。

現実には、銀行に預金をして利息を取られるという事態にはならないと思いますので、「マイナス金利」自体は、わたしたち一般市民からしてみると、超々低金利状態という認識をしておけば良いかと思います。

何はともあれ、この「マイナス金利」が、今後、円安、株高、そして経済活動の活発化につながってほしいものです。

 

※希望日本研究所 第8研究室

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アベノミクス関連記事

アベノミクス関連記事をすべて見る