2016.01.21 格差社会

ベーシックインカムとは?ベーシックインカム制度導入のメリット・デメリットを3つの視点から考える

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前例無きベーシックインカムとは? その制度の具体的内容、導入における生活の変化、実現の可能性を考える

ベーシックインカムとは、「最低限所得保障」「基本所得保障」「国民配当」などと呼ばれる制度の一種で、政府が全国民に対し、最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を、条件無く定期支給するというものです。

最近、このベーシックインカムという言葉をよく聞くようになりました。

フィンランドで導入が検討されているという報道がなされてから、俄然テレビやニュースなどでも話題になっています。

またスイスでの2016年6月にベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われる予定です。

 

このような検討がなされているのは、社会保障、年金のあり方、貧困など、様々な不公平感が社会問題となっていることも要因のひとつでしょう。

日本の社会保障費は少なく見積もっても毎年1兆円は増えています。さらに4人に一人が65歳以上の高齢化社会となり、10年後には団塊の世代の人たちが75歳以上の後期高齢者となります。

日本における年金、社会保障の費用はさらに増え続けることは避けられません。

Pension_handbook_(Japan)

 

一方、生活保護を受けている人は過去最大の216万人。今年の新成人が120万人に対し倍近い数字です。

こういった状況の中からベーシックインカム制度への議論が湧いてきました。

しかしながらこのベーシックインカムとは一体どのような制度で、どのようなメリットが期待され、どのようなデメリットが見込まれるのでしょうか?

天然資源の輸出による外貨収入を配分し、類似した制度を導入している国は少数あるものの、先進国ではまだ恒常的に制度化している例は無く、まだまだ謎の多い制度であることは否めません。

そこで今回はこの制度を知るために、以下の3つの視点からベーシックインカムを考えてみました。

・そもそもベーシックインカムとはどのような制度なのか?
・ベーシックインカムを導入することで私たちの生活はどう変化するのか?
国や役所の視点に立って見るベーシックインカムと、その実現の可能性は?

それでは早速、項目ごとに見ていきましょう。

 

ベーシックインカムとは?その1:
そもそもベーシックインカムとはどのような制度なのか?

これまで、公平で適切な社会保障を効率よく行うために、様々な制度が作られ実施されてきました。
しかし、誰に、どの程度の支援が必要なのかを適切に判断し、支給を行うことは大変難しく、これまで実施されてきた制度そのものも、日本が成長を続けることが前提として作られており、現状の厳しい状況に全く適合していないのが現実です。

・生活保護制度があるのに餓死する人がいる
・年金や生活保護を不正受給している人もいる
・本当に困窮しているのに役所の窓口で生活保護を断られてしまう人もいる
・家を売りたくないため、生活保護が受けられず貧困生活を続ける人がいる
・生活支援費なのにパチンコに使ってしまう人もいる

このような事例が、インターネット上で話題となったり、メディアに大きく報道されるようになり、社会問題化しています。

ベーシックインカムの考え方は、これらの問題を一挙に解決する策の一つとも言われています。

例えば、

全国民に対し、最低限の生活を送るのに必要な現金(例10万円/月)を無条件に国が支給する

つまり、年金や生活保護といった、今までの社会保障をベーシックインカムに集約することで、これまでの仕組みは廃棄し、手続きや管理も簡素化する。

そのような手法で、上記のような問題を解決してしまおうという考え方が、ベーシックインカムという制度なのです。

考え方としては18世紀末から議論されてきていますが、ある程度経済が成長している国家であれば、このような仕組みは必要なく、実際には採用されて来ませんでした。

しかし、先ほど述べた通り、貧困などの社会問題が大きく取り上げられる時代となり、年金や生活保護などの社会保障が、本当に必要な人に行き渡らず、多くの不正受給が発覚する等の背景から、これらの問題に対応する仕組みとして注目されているわけです。

bank-note-209104_640

ベーシックインカムとは?その2:
その導入することで私たちの生活はどう変化するのか?

表面的に見れば実に効率の良い仕組みにも見えるベーシックインカムですが、実際にこの制度が導入されることにより、私たちの生活にどのような変化をもたらすのでしょうか?

 

ベーシックインカムは自己責任を問われる世界

ベーシックインカムは、すべての人に平等に現金を配る仕組みなので、社会主義的な政策だと思われがちです。

しかし実際の、ベーシックインカムの制度は、

最低限は保障してるのだから、それ以外は自助努力で乗り切ることを前提としており、その先については、行政はタッチしないという非常にドライな政策

という一面もあります。

支給された現金の運用を間違えると、道を失うことにもなりかねない、自己責任を求められる制度なのです。

しかしながら、個の責任を大きくすることにより、「小さな政府」を目指すためには大変優れた仕組みとも言えるわけです。

 

ベーシックインカムで最低限度の生活が保障されると働かない人が増えるのか?

ベーシックインカムの制度を導入すると、最低限の生活が保障されるため、働かない人が増えるとも言われています。

この議論にはさまざまな意見が存在するのですが、当然生活を豊かにするために仕事を続ける人も多く存在するでしょう。

となると、

・働かない人
・ベーシックインカム以上に働く人

に社会が分断され、両者の対立が社会問題になる可能性も推察されます。

また、想定以上に働かない人の割合が増えてしまい、労働が失われると、経済競争力がなくなるという懸念もあります。

そうなればこの制度そのものの崩壊も否定できません。

このように多くの懸念が存在するのも、ベーシックインカムという制度の特徴と言えるでしょう。

現在、ベーシックインカムの導入が検討されているスイスでの実際のアンケートによると、導入によって仕事を辞めると答えた人は全体の8%程度しかいなかったそうです。

 

ベーシックインカム導入で国から富裕層が流出してしまう可能性も

短絡的に見ればベーシックインカムの制度には大きな財源が必要となります。

そのため、税率が高くなり、高負担を嫌うことで、富裕層が海外に流出してしまう可能性が指摘されています。

しかし、

・旧来の社会保障制度を統合することでの行政コストの削減
・ベーシックインカム制度の導入によるコスト増

の正確なコスト比較がなされているわけでは無く、これについても結論は出せない状況にあると言って良いでしょう。

 

ベーシックインカムで働き方が変わる

最低限の生活が保障されていれば、生活を維持できるための仕事に固執する必要はなくなります。一部収入の助けになる別の仕事もしながらボランティアに励む人や、自分の職能を生かしていくつもの職場で働く人が増えることが予想されます。

今の日本は正規雇用者と非正規雇用者の格差が大きく、また正規雇用が既得権化していて、仕事を代えたり働き方を変えることが難しい硬直した状況になっているため、このような仕組みの導入が有効かもしれません。

少なくとも、同一労働同一賃金という市場原理はきちんと働くようになります。

また、ブラック企業と言われるような搾取的な仕事はなくなるでしょう。

working-1024382_640

ベーシックインカムとは?その3:
国や役所の視点に立って見るベーシックインカムと、その実現の可能性は?

国や役所の視点に立つと、ベーシックインカムの導入は、どのような意味を持つのでしょうか?

この点についても一緒に考えてみましょう。

 

ベーシックインカムが少子化対策となる可能性

全国民に対し、最低限の生活を送るのに必要な現金を無条件に支給するのがベーシックインカムです。

当然その支給はすべての子供も対象となります。

つまり、子供増やすことで世帯の収入を増やせるため、少子化対策になるという意見もあります。

仮にベーシックインカムの支給額が一人当たり10万円なら、両親と子供二人で40万円。

子供を産むことで生活が楽になるという事例も出てくるでしょう。

その一方で、フランスの少子化対策における指摘のように、「生活するために子どもを産む」という新たな問題が生じる可能性もあります。

 

ベーシックインカム制度で社会保障制度が簡素化され大幅なコスト減が期待できる

上記でも少し触れていますが、旧来の社会保障制度を統合することでの行政コストの削減は期待できるでしょう。

今の日本の社会保障制度は非常に複雑かつ縦割り行政による管理がなされています。

生活保護の支給判断なども、各自治体の窓口に任されており、適正に支給されていない可能性も否めません。

社会保障をベーシックインカムに一本化することができれば、細分化されたルールなども必要なくなり、支給の手続きなども大幅に簡素化されます。

今日の日本のように、行政コストが高く、効率性の悪さが問題となっている社会では、このように分かりやすい制度の導入により、想像以上の行政コストの削減ができるかもしれません。

しかし、国民にとっては望ましい行政の効率化も、そこで働く人々にとっては失業や人員削減の憂き目に遭う可能性もある為、大きな抵抗が予想されます。

また国の機関も、自分たちの予算や裁量権が無くなることに対し激しい抵抗が予想されます。

実際に、ベーシックインカム制度を導入しようとすれば最大の障害は『官』となることは間違いないでしょう。

 

ベーシックインカムは実現可能な政策なのか?

ある試算では、

『全国民に8万円/月支給の場合、約120兆円の予算必要となる、しかし、年金や生活保護の予算、行政の効率化を見込むことで約半分程度までなら、その捻出は可能である』

とも言われています。

仮にそれ以下の一人当たり5万円/月と考えても、家族4人なら月額20万円、年収240万円。

ギリギリの生活であれば働かない生活もイメージできる範囲です。

そして、そのぐらいの予算であれば、財政的にも可能なのかもしれません。

政府が支援する最低限のラインをどこに持ってくるかが、政治的な解決に結びついて行くことでしょう。

実際の導入が検討されているフィンランドでは1カ月800ユーロ(約11万円)、スイスではの1カ月2500スイスフラン(約30万円)の支給となっています。

pb019245-500x375

まとめ 〜ベーシックインカム制度は日本になじむのか?〜

今回は、

・ベーシックインカムとは?そもそもベーシックインカムとはどのような制度なのか?
・ベーシックインカムを導入することで私たちの生活はどう変化するのか?
国や役所の視点に立って見るベーシックインカムと、その実現の可能性は?

という3つの視点からベーシックインカムを考えてみました。

ベーシックインカムとは、全国民に対し、最低限の生活を送るのに必要な現金を無条件に国が支給する制度であり、最低限の保障がなされるものの、自己責任が問われる非常にドライな政策であり、導入においては財源や労働の減少という懸念に限らず『官』の抵抗という障害など、さまざまな問題が予想されそうです。

今、日本に必要なことは、高度成長期に作られた不効率で、時代に合わない社会制度を変革し、効率的かつ現実に機能する制度に変えていくことです。

 

どんな制度でも万能ということはありません。

だからこそ、現状を打破し、古い制度を代えていく為には、このベーシックインカム制度を選択肢のひとつとして議論すべき時が来ているのかもしれません。

 

(希望日本研究所 第一研究室)

格差社会関連記事

格差社会関連記事をすべて見る