2015.12.12 領土問題

世界の覇権を狙う中国の「100年マラソン」戦略 ~「南シナ海で起きていることは東シナ海・尖閣諸島でも必ず起きる」~

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​世界の覇権をめぐる「アメリカ対中国」という新たな時代が到来?!

2015年10月27日、アメリカ軍は南シナ海の南沙諸島に駆逐艦「ラッセン」を派遣し、中国が埋め立てた人工島周辺でパトロール活動を始めました。

近年、中国が岩礁を埋め立てて建設している人工島を領海の起点とは認めず、その周辺12海里以内に入り、南シナ海の「航行の自由」を実力で示す目的です。

南シナ海では、中国政府が独自の領有権(九段線)を持ち出し、その海域内の島々の領有権を含む85%以上もの面積の領有権を主張、周辺国との紛争も頻発しています。

中国は、ここ数年、国際法を無視し強引に岩礁を埋め立て、3000メートル級の滑走路の建設していることが確認されています。

今回の派遣は、シーレーンとして世界貿易の大動脈となっている南シナ海を、中国が着々と支配を進めていることへのけん制のためと言われています。

世界では、今、その覇権をめぐり、アメリカ対中国という新たな時代を迎えようとしてるのかもしれません。

 

中国の「100年マラソン」戦略とは

このような情勢の中、注目を集めているのが、マイケル・ピルズベリー氏の著書、「China2049〜秘密裏に遂行される世界派遣100年戦略」です。

原題は『The Hundred Year Marathon』(「100年マラソン」)というもので、アメリカでは2015年2月に出版されました。

著者のマイケル・ピルズベリー氏はアメリカ政府の中国専門家で、現在ハドソン・インスティチュートというシンクタンクに所属しています。

ピルズベリー氏は、ニクソン政権からカーター、レーガン、現オバマ政権までの40年以上にわたり、国防総省や国務省などで中国の軍事力などの分析に携わり、中国の専門家としてアメリカ政府の対中政策の中枢に身をおいてきました。

もともとは親中派として有名でしたが、中国の100年戦略を知り立場を転換、数々の証拠や証言に基づいて中国の野望に警鐘を鳴らしています。

では、中国の「100年マラソン」戦略とは一体何を意味しているのでしょう。

 

秘密裏にアメリカに代わる覇権国家を目指す中国

本の中で、中国は1949年の建国からちょうど100年にあたる2049年を目標に、経済・政治・軍事等あらゆる分野でアメリカを凌駕し、世界の覇権を確立する野望があるといいます。

その野望とは、国力を強めてアメリカの覇権を奪い、中国主導の国際秩序を築くことです。

つまり、経済的にも軍事的にもアメリカを超え、第二次大戦後アメリカが中心になって築き上げてきた国際秩序のためのシステムを、中国が主導する政治・経済システムに入れ替えることこそがその目的なのです。

その長期戦略を『100年のマラソン』として進めているというのです。

その目的のために、今まで中国は野心を表には出さずアメリカを油断させ、その油断に乗じて発展途上国であることを強調して、アメリカから経済的・技術的支援を引き出すことに専念し、実力を養ってきました。

中国のそうした戦略により、過去40年間、アメリカの歴代の政権がだまされ続けてきたと、本書には記されています。

アメリカが中国への支援を続けてきた理由として、「発展途上国である中国を支援することで、覇権国家を目指さず、民主的で平和な中国になっていくだろう」という、アメリカ側の見解の甘さあったことを指摘しています。

さらに、やがては中国もアメリカのような自由市場経済・民主主義国家になるであろうという幻想を守るために、中国はスパイや工作員を使って宣伝工作や各種の諜報活動を行ってきたといいます。

確かに、ここ数十年の間、アメリカは中国への支援を続け、世界第二位の経済大国にまで成長した中国の台頭に貢献してきました。

そして、それは長年にわたり中国へのODAを送り続けてきた日本にも言えることなのです。

 

中国が南シナ海に建造するコンクリート製「不沈空母」は野心のあらわれ!?

過去の中国の王朝の歴史と同様に、膨張を目指す中華帝国は現在も辺境へと支配地域を拡大しています。

中国にとって陸においての辺境はチベット・ウイグル地方などであり、海の辺境は東シナ海・南シナ海となるでしょう。

中国の野望は、南シナ海・東シナ海での海洋覇権拡大にもあらわれています。

中国はすでに、南シナ海で7つの岩礁を埋め立て、3000メートル級の滑走路を建設しています。

軍用機が楽に離着陸できる「不沈空母」が、南シナ海の真ん中に出現することになるのです。

 

南シナ海における海洋覇権の野望

南シナ海では、1970年以降、アメリカ軍の撤退による「力の空白」を埋めるかように南シナ海で実効支配の範囲を拡大し、フィリピンやベトナムなどの周辺諸国と衝突を繰り返してきました。

中国は海域のほぼ全域にも及ぶ、「九段線」と呼ばれる境界線を一方的に設定し、それに基づいて海域の支配を進めようとしています。

九段線

緑の破線が九段線(Wikipedia)

九段線による領有権主張に対して、中国は「歴史的な権利」だと主張しますが、正確な緯度・経度をすら明示しておらず、その国際法上の効力に何の根拠もないことは言うまでもないところでしょう。

上に述べたように、現在、中国は、その南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)にある七つの岩礁を埋め立てて人工島を作り、そこに滑走路などの軍事施設を建設しています。

こうした人工島造成は単に中国は横暴だという話で済まない問題と言えます。

中国が埋め立てを行っている岩礁は、国連海洋法条約でいう「低潮高地」と呼ばれるもので満潮時には水没するものです。

国際法上、埋め立てても島になったり領海に変更を及ぼしたりすることはありません。

したがって、その周辺海域を「領海である」とする中国の主張には無理があり、さらに、岩礁を埋め立てて人工島をつくる行為は環境破壊を禁じた国連海洋法条約を無視したものなのです。

つまり、領有権主張に根拠がないというだけでなく、いま現在行っている「埋め立て」も明白な国際法違反です。

フィリピンはASEANや国際司法の場で、その横暴さを訴えていますが、中国は協議を行うつもりなどなく、そうした訴え完全に無視している状況です。

それは、軍事力を背景にした、中国による一方的な国際法秩序の破壊だといえます。

したがって、この問題は、単に中国の不法行為によってフィリピンの権利が侵害されているというに止まらず、国際法秩序を順守する世界中の国々にとっても許してはならない不法行為なのです。

 

海洋覇権の野望は東シナ海・尖閣諸島にも

2015年7月、政府は東シナ海のガス田開発をめぐり、中国が東シナ海の日中中間線の中国側海域新たな海洋プラットホームを建設しているの公開しました。

2013年以降、中国が新設したガス田掘削用プラットホームは12基にも上り、今までに確認されたものも含めると、すでに16基のプラットホームが建設されていることになります。

中国側は、現在プラットホームを作っているのは、日中中間線の中国側の排他的経済水域(EEZ)であり、何の問題もないとしています。

しかし、東シナ海においてはEEZ及び大陸棚はいまだ境界が未画定で、日本は一方的な開発行為を行う前に、まず「日中中間線を基にした境界画定」を行うべきであるとの立場をとっています。

東シナ海での中国の採掘

Wikipedia

いまだ、東シナ海において日中の境界が未確定なままであるのは、日中の主張に大きく隔たりがあることが起因しています。

日本としては、国際法に基づき日中の中間線を主張しているが、中国は大陸棚の先端である沖縄トラフまで自分たちの領域であると主張しています。

これは、「第一列島線」という中国の軍事戦略上の対米防衛目標ラインにそったもので、東シナ海のほぼ全域が中国の領海だというです。

中国は第一列島戦の区域内の海域を「海洋領土」と呼称しており、先に述べた南シナ海全域もその海洋領土に含まれています。

第一列島線

左が第一列島線(Wikipedia)

では、東シナ海での中国の一方的なプラットホーム建設を放置すればどうなるのでしょうか。

次の段階として考えられるのは、中間線の日本側海域にも一方的にプラットホームが作られることになるでしょう。

また、東シナ海には中国が領有権を狙っている尖閣諸島が存在します。

尖閣諸島は5つの島と、いくつかの岩礁などで構成されている島々で、中国は自らの歴史的領土だと主張しています。

その尖閣諸島も、南沙諸島と同様に、実力によって一方的に支配した後、岩礁を埋め立て軍事拠点化を進めることを目論んでいることでしょう。

アメリカの影響力を排除して覇権を握ることを目指す「100年の長期戦略」どおりだとすれば、最終的には、東シナ海全域を我が物とすることを目指しているのでしょう。

 

野望実現のため拡大政策を続ける中国に対抗するには

中国の「100年マラソン」戦略は「韜光養晦(とうこうようかい)」という言葉にあらわれています。

「国力が整わないうちは国際社会で目立つことをせず、じっくりと力を蓄えておく」という意味です。

中国は、古代・春秋戦国時代の戦略戦術、特に『孫子』に学んでいます。

自らの野望を明らかにすれば、アメリカの警戒にされ戦略が潰されてしまうので、それを回避するため「韜光養晦」をしてきたのです。

1990年代には、この考え方に基づく国際協調の外交が続いてきました。

すなわち、中国は現在は遅れた後進国であるが、やがては米国のような自由市場経済、民主主義国家になるという幻想を戦略的にアメリカに抱かせてきたのです。

アメリカ、そして日本も、中国がやがては平和に発展してくれることを願って支援を続けてきました。

そういった支援によって、2008年には北京五輪を成功させ、リーマン・ショック後、先進国の経済停滞が深刻化する中、中国経済は相対的には順調に成長を遂げてきました。

さらに、2010年に はGDPで日本を抜き、世界第二位の経済大国になりました。

大国としての自信をつけた中国はここ数年、その野望をあらわにし、野望の実現のため、周辺地域・海域へのさらなる拡大政策を推し進めています。

現在、東アジアが中国によって脅かされている状況の原因は、中国の野望を見抜けなかったことが根底にあるとピルズベリー氏の著書でも訴えています。

今回、アメリカが駆逐艦を派遣したことは、ピルズベリー氏の警鐘が、アメリカ国内の対中国戦略の変化に影響を与えたものだともいえるでしょう。

 

中国の行動こそが現在の国際法秩序に反している

今後、日本やアメリカが、戦後70年の間に培ってきた世界の秩序や繁栄を守ろうと思うのであれば、急速に大国化しつつある中国に対抗する準備を早急に進める必要があります。

中国に対しては、こと領土問題に限っては、対立する国として認識して、ドライな政策や対応を打ち立てる必要があるでしょう。

中国が軍事的にその野望をあらわにすればするほど、国際秩序の中で異質な存在であり、世界のルールを守ろうとしない国として認知されることが大事なのです。

フィリピンやベトナムといった国々との協力も必要であり、同時に、中国こそが国際法秩序に反する国だとの共通認識を拡げる、国際的な情報戦も重要となってくるでしょう。

アメリカは、経済が発展すれば中国は民主化するだろうと安易に考えてたようですが、それが誤りだと言うことに気が付き始めたようです。

当然、日本も同様に、中国に対する考え方や戦略を考え直す必要があるかもしれません。

 

※ 希望日本研究所 第8研究室

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