2015.11.20 テロ

【解説】テロリズムに備える!フランスの緊急事態のための憲法改正とは何か?日本憲法の改正はどうする?

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

災害などへの備えで日本憲法の改正はあるか?フランスはテロへの緊急事態で憲法改正へ

パリを襲った同時多発テロで130人もの尊い命が一瞬にして奪われてしまいました。

フランスのオランド大統領は「わが国は戦争状態にある」として、非常事態宣言を発令しました。

テロは言語道断、許しがたいことです。

さらにオランド大統領は、憲法改正をして、フランス憲法に緊急事態条項を加える意向を述べました。

緊急事態とは何か?

緊急事態とは、今回のテロのような大きな危機に対処するため、政府の権限を平時より強化し権限を集め危機を乗り切る、そのため平時に当然、認められている国民の権利や自由を一時的に制限しようというものです。

フランスでは具体的に、国内のテロ対策を強化するため、危険人物を国外に追放したり、過激な思想を持つモスク(イスラム礼拝施設)の閉鎖を命じたりすることなどを考えています。

 

 

同時多発テロに対し非常事態宣言、そして改正を決意

もともとフランスには、憲法に規定はないものの、憲法より下に位置する非常事態法があり、この法律に基づき今回も非常事態宣言を発令しました。

  • 裁判所の捜索令状なしでの家宅捜索
  • 報道規制
  • 人や車の往来の制限
  • 集会開催や夜間外出の禁止
  • カフェやレストランの閉店

などを行っています。

平時の国民の自由より、テロへの対応という緊急事態が優先されています。

しかし1955年に公布されたこの法律は古く、現代のテロ攻撃に対応できないと判断したのです。

憲法改正の理由として、オランド大統領は、実行犯の中に監視対象者がいたにもかかわらず、国境を自由に行き来していたことなどを問題視しています。

このため改正憲法の緊急事態には、テロリストの流入を防ぎ、テロの芽を事前に摘むことを目的に

  • 過激思想を持つモスク(イスラム礼拝施設)の閉鎖
  • 危険とみなした外国人を速やかに国外追放するための手続きの簡素化
  • 国境警備に当たる職員やテロ対策に当たる警察官の増員
  • 過激思想の持ち主の監視強化

などを入れたいとしています。

フランス憲法改正には、上下各院での過半数の賛成に加え、両院合同会議での5分の3以上の賛成か、国民投票での過半数の賛成が必要になります。

大きなハードルですが、今回の悲惨なテロ事件を背景に、オランド大統領は実行したいと決意を固めているもようです。

paris-843229_640

 

 

日本の改正はとんでもない、しかし先進国は常識

日本で憲法改正と聞けば、とんでもない、と思われる方も多いかと思います。

しかしフランスは戦後27回改正をしています。

そして先進国での改正は常識です。

今回のような大きな危機や、社会情勢の変化などに合わせて、柔軟に改正をしてきているのです。

ちなみに世界の先進国の戦後の改正回数は

  • アメリカ     6回
  • ドイツ     59回
  • フランス    27回
  • カナダ     19回
  • イタリア    16回
  • オーストラリア  3回

となります。

war-952967_640

 

 

安倍首相が緊急事態は憲法改正の最大テーマと明言

さてフランスのオランド大統領は緊急事態をテーマとした憲法改正について発言しましたが、同じ先進国であるフランスの改正が、日本にまったく関係ないか、といえばそうとも言い切れません。

安倍首相が11月の参院予算委員会で、日本の改正では緊急事態が最重要テーマであることを明言しているのです。

政権政党である自民党は2012年(平成24年)4月に憲法改正案をつくっています。

この案に緊急事態が入っています。

自民党の憲法改正推進本部は、案の中で、25項目を重要な項目を挙げていますが、緊急事態は、改正の「一丁目一番地」、要は最重要課題だとしているのです。

先にも説明したとおり、緊急事態とは、大きな危機に対処するため、政府の権限を平時より強化し危機を乗り切る、そのため平時に当然、認められている国民の権利や自由を一時的に制限しようというものです。

日本の大きな危機とはなんでしょうか?

今回のテロや外国からの武力攻撃も、もちろん想定されますが、日本には大規模な自然災害があります。

 

 

憲法に緊急事態なく東日本大震災で大失態と批判

日本で2011年、東日本大震災が発生しました。

この東日本大震災では、民主党の菅直人政権は失態を重ね、特に、災害対策基本法にある緊急事態の布告をしなかった、といわれます。

このため医療品やガソリンなどの必需品が速やかに被害者に渡らなかった、と批判を受けているのです。

日本国憲法に緊急事態はないのですが、こと災害に関して、日本には

  • 災害対策基本法
  • 大規模地震対策特別措置法
  • 原子力災害対策特別措置法
  • 首都直下地震対策特別措置法
  • 南海トラフ地震対策特別措置法

といった、いかにもいかめしい言葉からなる災害対策の法律があります。

どれも災害時の対策・対応を細かく示しているものです。

このうち災害対策基本法では

「非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合」

には、災害対策として緊急事態を布告できることになっています。

フランスの非常事態法に基づく非常事態宣言と同じですね。

東日本大震災

 

菅直人政権は緊急事態を布告せず

日本でも緊急事態の布告で、国民の権利などを一時、制限できるのです。

ところが菅直人政権は「災害緊急事態」を布告しなかった。

国会での質疑応答で、その理由を「国民の権利義務を大きく規制する非常に強い措置であり、適切な判断が必要であった」からとしています。

要は憲法にないため、軽々には判断できなかった、というわけです。

しかしこのため必要であった「物資の統制(制限)」を行えず、震災直後に、ガソリンが不足し、被災者や生活必需物資を輸送できず、助かる命も助からなかった、といわれています。

とんでもないことです。

 

 

大災害が迫る日本は緊急事態を設けるべき!?

こうした失敗を繰り返さないためにも、改正して緊急事態をきちんと規定すべきだ、というわけです。

そして日本は大きな自然災害が迫っている、といわれます。

9世紀に、東日本大震災と同じクラスの大地震(貞観地震)が東北エリアを襲いました。

  • 864年  富士山が大噴火
  • 869年  貞観地震(じょうがんじしん、東北)
  • 878年  相模・武蔵地震(関東南部)
  • 887年  仁和地震(にんなじしん、南海・東南海)

現代は、大地震や噴火が多発した9世紀と非常に似ている、これからも大災害が起こり得るというのです。

1280px-Search_and_rescue_at_Unosumai,_Kamaishi,_-17_Mar._2011_a

 

 

国民が緊急事態をしっかり考える必要あり

こうした十分想定できる大災害に対応して、憲法改正し緊急事態を加える必要があると安倍首相、政権政党の自民党は考えているのです。

駒澤大学名誉教授の西修さんは、1990年から2012年までに憲法を制定、改正した世界100カ国の憲法すべてに緊急事態があった、と指摘しています。

今回、フランスの憲法では、テロ対策の緊急事態のできないことがわかったわけですが、日本国憲法には緊急事態の内容がまったくない、それが最大の不備だ、と西修さんは、いうのです。

今回のフランスでの憲法改正、そして日本がもし改正する場合でも、国民投票などの大きなハードルがあります。

日本で国民投票をやらなければならない時が来るかどうかはわかりませんが、まずは緊急事態という考え方があり、改正により、その対応が求められている。

安倍首相、政権与党の自民党は、その改正を求めているのです。

国民の命を守るため、今回のフランスのテロのような危機に対応した緊急事態は必要です。

しかし一時的にせよ、国民の権利などが制限されることも間違いない。

こうしたことを含め、国民がしっかり考える必要があります。

テロによる被害を受けたフランスの方々のご冥福をお祈り申し上げると同時に、オランド大統領が発言した憲法改正への意向を契機に、私たちも真剣に考えることが求められているのです。

 

【日本国憲法改正の動きについて知りたい方はこちらから】

⇒ 安保法決定直後、いまだからこそ知りたい9条改正などの理由5つのポイント

 

「ACTION なう!」実行委員会

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テロ関連記事

テロ関連記事をすべて見る